タバコ吸う程度のこと
すぱぁ~
「ふぃー……」
世間では、禁煙が推奨されている。
確かに黙々じゃなく、もくもくした煙が舞って、臭いもある。それに加えて健康被害だなんだと、言われているわけだ。科学的証明だのなんだのと……。
余計なお世話だ。
「お客様、申し訳ございませんが。昨日からこのお店も禁煙になったんですが」
このイライラはきっとタバコによるものだとしてもだ。
「え?ホント?きっついなぁー、喫煙者に……」
山寺光一のリアクションは知らなかったんです。という、無知の恥ではなく。ワザとらしさある声であった。タバコの一本、二本。グチグチ言うなと言いたいものだ。
喫煙者だって人間だ。人権使わせろ、コラァ。と、タバコを吸いたい。タバコを持っている手が震えているのは、消したくないという抵抗だった。
ジュッ
「…………」
ここでふと思う。
タバコが他者にも影響の出る害であるのを認めたとして、タバコによって消されるストレス。これをどこで補うのだというのか?女か?酒か?競馬か?パチンコか?スマホ依存か?
人というのは、結局何かしらに頼るもんだ。
タバコが無くなったら別の何かを欲して、消し去る。僧みたいに無欲な生き物を人間って言うか?
「生ビールと大盛定食セットでーす」
「お、サンキュー」
その中で一番健康被害が酷くて、他者にも迷惑だからという理由でなぜ、喫煙者ばかり叩かれなきゃいけない。分からん。特に若いのがやらないのが分からない。エネルギーがねぇなぁ。
ゴクゴクゴクゴク
「ぷはぁ、生サイコー。たまらん」
がつがつがつ
「餃子、飯、サラダ」
酒に白い飯、餃子、スープ。うめぇうめぇ。
タバコを吸うと味覚が鈍ると言われているが、胃袋が訴訟レベルで腹空いたと喚けば、そんなの分からない。むしろ、このレベルまで腹を空かせられないのがいけないだろう。断食しろって言ってんじゃねぇーぞ。自分のエネルギーを使うって事だ。燃焼しまくれって事だ。肉体が軋んだくらいの状態で、飯食うのがめっちゃ上手いんだ。規則正しく腹にガンガン入るから、栄養が身体全身巡って、スカーッと体が戻る。んで、睡魔が現れて爆睡できる。
タバコぐれぇで、一々体を壊すと思ってしねぇなんて、軟弱者の発想だぜ。
「ごっそさん。会計頼む」
健康は大切だ。それは分かる。
だが。常に健康に気を付けてねぇと、健康になれないのか?今の人間は?
それはタバコでも酒でも、その他の依存症のせいじゃないだろ。今の人間が弱いのが証拠だ。
「………あ、財布忘れた。車の中にあるから、取りに行っていい?」
「偉そうにしていて、それは無様ですよね」
「五月蠅いなぁ。これくらい見逃す気くらい回せ」
「カードとか作ったらどうですか?通勤用のカードでもここはお支払いできるんで。財布とカードの使い分けする方がいますし」
「考えておくわ」
車の中にちゃんと財布はあったが、そこでタバコを吸ってからお支払いをする光一であった。