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episode:6

7月も中旬となり外からは蝉の鳴き声が賑やかなくらい聞こえていた。



“キーンコーンカーンコーン”


「では、今日の授業はここまで。」


蝉の鳴き声とチャイムの音が重なり、午前の授業は終了したのであった。



「梨々花ちゃ~ん!お昼食べに行こうよ!!」


梨々花は授業が終わるなり麗に引っ張られて教室から出ていくのであった。


「ちょっと…そんなに引っ張らなくてもどこかに逃げるわけじゃあるまいし…。」



麗は梨々花を引っ張るなり特別室3と書かれている教室へと足を運んでいた。


「ここは私たち以外誰もいないからね~!」


「静かなことはいいことだけど…。」


「今日は梨々花ちゃんに渡すものがあるんだった!!」


はいっ!これ!


そういって渡されたのは、何冊かの漫画であった。


「これこないだ買った漫画なんだけど、キュンキュンとするからぜひ見て!」


「どうせ恋愛漫画でしょ…いらないわよ!!」


「いいから!!!絶対に読んで!!そして感想文も書いてきて!」


麗があまりにも必死に渡してくるため仕方なく受けっとたのであった。


「今回だけは読んでみるけど、今後は持ってこないでよ…。」


麗はガッツポーズをするなり上機嫌でお弁当を食べ始めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「そういえば、梨々花ちゃんって漫画読んだことあるの?」


「…そういえばないわね。」


「見たことないなとは思ってたけど…一度もないの?!」


驚いた様子の麗に梨々花はため息が出た。


「別に漫画なんて読まなくても、生きてこれたもの。」


「生きては来れるけど…漫画は世界を救うから!すてきだから!」


特に少女漫画は!!と目をキラキラさせながら食いついていた。


「漫画ね…。」

今まで現実以外に興味が無かった梨々花にとっては、今まで必要のないものであった。


「…梨々花ちゃん…、漫画の読み方わかる?」


「馬鹿にしないでよ!それくらい見ればわかるわよ!!」


その後も麗の漫画トークは続いたが、興味の無い梨々花にとっては

話の内容は全く覚えていないものであった。


(麗は漫画を見る前にもう少し教科書を開いたほうがいいのに。)


熱意ある話を永遠と繰り返す親友を、心配そうに見つめる梨々花の姿がそこにはあった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



お昼休みも無事に(?)終わり、いつもと変わらない午後の授業が始まる。


横を見ると、開始10分で夢の中へと行ってしまった麗の姿があった。


(さっきまであんなに熱弁していたのに…。授業になったとたん…はぁ。)


麗は梨々花の心配とは関係なくスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。


外からは朝と変わらずうるさいくらいにセミが鳴いていた。


その後授業は黙々と終わっていったが麗が目を覚ますことはなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「梨々花ちゃ~ん!どうしよう!!」


放課後になり麗は涙目で梨々花すがっていた。


「こんな顔じゃ歩けないよ~~!!」


麗の顔を見た梨々花は思わず笑いが止まらなくなった。


「うっうっ麗…あんたなんて顔してるのよ!!プッ」


今日の女子高校生は、顔についた後を笑うほど平和であった。


「あっ!今日も本屋さんによって帰ろうかと思うんだけど、梨々花ちゃんも行こうよ!」


「あ~今日はね…ほらっ帰って借りた漫画を読まないと!」


だから先に帰るわ!そういって教室を出ていき、目をキラキラさせた麗だけが残っていた。



(本屋に行くといいことないもの…またあの兄妹にあっても困るもの、うん。今日は帰ったほうがいい気がするわ。)



梨々花はなにかを察してまっすぐ帰ったのであった。

しかし、神様とは意地悪なもので


「おねぇちゃ~ん!!」


信号待ちをしている梨々花にそのかわいい女の子、佐々木さちかは声をかけたのだった。



「でたわね…佐々木ブラザーズ。」


「ぶらざーず?」


「いいのよ、さちかちゃん。こっちの話よ。」



(何のためにまっすぐ帰ろうと思ったのか、わからないわね…。神様が実在するなら許さないわよ。)



グイグイと近づいてくるさちかに梨々花は距離を取りつつ、信号が変わるのを今か今かと待っていた。


「おねぇちゃん、どこに行くの?」


「おうちに帰るの。私すごく忙しいのよ。こう見えても。」


「おい、さちかいきなり走っていなくなるな!」


少し遅れてやってきた幸太郎を睨み付けて、しっかり妹の手を握ってくれる?と微笑んだ。


「おねぇちゃんも今から帰りなんだって!一緒に帰れるね!」


なにも2人の空気を察していないさちかは嬉しそうに梨々花の手を握る。


「えっ、ちゃっと。学校も近いし…さすがに…」


どうにかしなさいよ!っと心で思いつつ、すっかりさちかのペースに流されてしまった梨々花はどうすることもできなかった。



「私は、近くに車を呼んであるから…。ちょっと聞いてる?」


「じゃあ、そこまで一緒に帰れるね。」


佐々木ブラザーズは駅に向かって歩くらしく、梨々花も方角も一緒であったため、仕方なくそこまでは行くことにした。


「ちょっと、佐々木君。さちかちゃん、ちょっと強引すぎない?」


ヒソヒソと幸太郎に訴える。


「誰かさんも変わらないだろ…」


今までの事を思い出し、梨々花は顔を真っ赤にしたのであった。


「なっ…。しょっ将来が楽しみね!!」



学校から駅までは10分程度であり、すぐに駅近くへと到着した。


駅近くには真っ黒なセダンタイプの高級車が停まっており、主人の帰りを待っているのであった。


運転席に乗っていた桐は3人の姿を見つけると、外へ出て会釈をした。



「おにーちゃん!すごいよ!車おっきいね!かっこいいね!」


全く車に普段は興味のないさちかでも驚いてはしゃいでいた。


「梨々花様、お帰りなさいませ。」


桐は深く頭を下げた後、佐々木ブラザーズにもニコッと微笑んだ。


「こっこんにちは。」


さすがの幸太郎も驚き、ぺこっと会釈を返す。


「梨々花様がいつもお世話になっています。わたくしは使用人の桐と申します。」


「ちょっと!お世話しているのは私なんだから!そんなこと言わなくていいの!」


桐は相変わらずの梨々花にため息もつき


「いつもきつい言い方をされていませんか?」


と2人とのかかわりに対して心配していた。


「桐さんこんにちは!さちかね、梨々花ちゃん大好きだよ~!お友達なの!」


ギュっとさちかは梨々花に抱き着くと、嬉しそうにニコニコしていた。


「ご友人様でしたか!梨々花様に麗様たち以外のご友人がいたとは…。」


普段から身の回りの事をしている桐は嬉しくなりウルウルしていた。



「もう、いいから!さっさと帰るわよ!」


「お二人は電車ですか?」


「隣の街なので、電車で帰ります。」


幸太郎はそう答えるとさちかの手を握った。


「よかったら、わたくしが家まで送ります。どうぞ車へ。」


「いやっ、そんなことは頼めません!」


「梨々花様のご友人様でしから、もちろんでございます。」


「でも…「いいんじゃない。別に車ならすぐだし、桐もそういっているのだし。」


さちかも乗っていいの?!そういってさちかは嬉しそうに後部座席へと座った。


(おい、さちか!)

幸太郎は変な汗をかきつつ、最終的にはさちかと後部座席へと座った。



車の後部座席には、幸太郎・さちか・梨々花の順で座り、出発のエンジン音が鳴った。


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