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8 王都ゾンネンブルーメでの、別行動。

 侯爵の邸宅に、イルザとナックは通されていた。ディートリンデの両親がことのほか彼らに感謝し、数日の滞在ならばと部屋を与えてくれたのだ。王都ゾンネンブルーメの見物をして、カミーレの地に帰る。二人はそのつもりでいた……はずだった。


「はあ……ディートリンデさまは可愛いなあ」


 頬に軽くキスを受けてふにゃふにゃになってしまったナックが豪奢(ごうしゃ)な窓から外を見てぽつりと(つぶや)いている。そんなナックの様子に、イルザは無言だった。内心は穏やかではない。ナックの首根っこを捕まえて、とっととカミーレの地に帰りたい気分だ。が、ナックの心を一番理解しているのもイルザだった。


 ディートリンデは、ナックの心に童話のお姫さまのような存在として鎮座してしまったのだ。憧れの最たるものだ。イルザとは真逆の、誰もが守ってあげたくなるような存在。それがナックにとってのディートリンデだ。無論、それがどれほどの身分違いで叶わぬ想いか理解せぬナックではない。今もナックにとって、そしてカミーレの地にとっての最善はイルザとの結婚だ。


「少しゾンネンブルーメをひとりで見てくる。ナック、お前はちょっと頭を冷やせ」

「……分かった」


 ナックはしおらしく(うなず)いた。二人は一番心を通い合わせた身だ。ナックが元に戻るまで数日はかかると、イルザは考えた。二人でこのままゾンネンブルーメ見物に行っても、ナックはふにゃふにゃのままだろう。それは、イルザにとっても面白くないことだ。彼女は即断した。とすれば、ここで別行動を取った方が良いと。


「夕方には戻る」

「……行ってらっしゃい」


 ナックの見送りを受けて、イルザはひらひらと片手を振って侯爵の邸宅を出た。

 


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