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6 王子との出会い、そしてイルザの計略。

 馬車は王都に着いた。王国内で最大規模の商業都市でもある王都ゾンネンブルーメは、門をくぐった途端に賑やかな声があちこちから響いてきた。メインの大通りをカタカタと馬車で通り抜ける。左右に様々な店が並ぶ大通りでは、吟遊詩人が道ばたで楽器の演奏をしており、軽快な調べが馬車の中まで聞こえてくる。店に並べられた食べ物や香辛料の(にお)いも漂ってきて、グウ、とナックのお(なか)が鳴った。


「おいしそうだなあ。珍しいものがいっぱいあるね、イルザ姉ちゃん」

「そうだな。問題が解決したら、街の見物でもしよう、ナック」

「うん!」


 話しているうちに、馬車は街の中央にある大きな邸宅に着いた。同じく街の中央にある王家の城に近い、優雅な構えのその建物は、名だたる貴族が君臨するにふさわしいどっしりとした印象を受けた。侯爵の邸宅だ。門番に通してもらうと、建物の奥からひとりの男が駆け寄ってきた。


「リンデ!」

「ハルトさま! おいで下さったのですか!?」

「話を聞いて心配していたんだ!」


 馬車から降りたディートリンデを、第一王子フォルクハルトはそっと抱きしめた。長身に引き締まった体つき。短いが艶のある黒髪に、こげ茶色の双眸(そうぼう)は、国の王子として相応しい貫禄を備えていた。


「お初にお目にかかります、フォルクハルト殿下」

「ハジメマシテ」


 イルザとナックも馬車から降りて、あわてて(ひざまず)いた。


「カミーレ辺境伯の娘にエルフ族の長の子息か、この(たび)は良い働きをしてくれた。リンデを守ってくれたこと、感謝する」

「もったいないお言葉です」

「ディートリンデさまがご無事で何よりデシタ」

「しかし、一体誰がこんなことを仕組むというのか……」


 フォルクハルトが悩んだ表情で呟いた。


「そのことなのですが、殿下。私に一計があるのですが、聞いていただけますか……?」


 イルザがフォルクハルトの目をまっすぐに見て(ささや)いた。

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