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4 結婚式の延期と、旅立ち。

 カミーレの城に着くと、イルザは事の次第を父に伝えた。城の者たちは、予期せぬ高貴な客に上を下への大混乱になった。森のエルフの長であるナックの父も呼ばれた。侯爵令嬢がお忍びでこの地に静養に来ていたこと、そして普段おとなしいはずのアイネマウズに彼女の馬車が襲われたことをイルザたちは話した。状況を聞いたイルザの父はナックの父とも話しあった後に、言葉を切り出した。


「話は分かった。イルザ。お前たちには侯爵令嬢ディートリンデさまの護衛をしてもらいたい。事情が事情だ。帰路をお一人で行かせる訳にはいくまい」

「まあ! 良いのですか。わたくしは歓迎いたしますけれども……」


 ディートリンデは口元に手を当てた。 


「良くないよ! 僕らの結婚式はどうなるのさ!」


 ナックが頬を膨らませて抗議する。


「しかし、(はか)らずもディートリンデさまの事情を知ってしまったのだ。このまま放りっぱなしで、私たちだけが幸せになりました、では済まなくなってしまったしな」


 イルザがナックを(なだ)める。


「あのアイネマウズの襲撃も、誰かが仕組んだものである可能性が高い。この辺境にディートリンデさまが来ることを知っている人間が仕掛けたとなると、王都で信頼できる人間に護衛を頼むのも大変だろうしな。ナック、これは私たちの試練だ」

「イルザ姉ちゃんはいいの!?」

「良くはない。だが、結婚前に王都を見物するのも悪くないと思うぞ?」

「……そっか。イルザ姉ちゃんがいいなら、僕もいいよ。エルフの気は長いからね、僕も王都は見てみたい!」


 ナックが一転、はしゃぐ。辺境の地から出たことも無い二人だ。初めての王都へ行くとなり、胸が高鳴(たかな)っているのは事実だった。


「決まりだな」


 ポン、とイルザはナックの頭を撫でた。


「心強いです、イルザ、ナック、ありがとうございます」

「えへへ。これからよろしくね!」


 ナックが手を差し出す。そして、あっと声をあげて引っ込めた。


「ごめん! 貴族の方にする挨拶じゃなかったよね!?」

「構いませんわ」


 ディートリンデは少し頬を赤らめて、ナックの手を取った。


「短い間かもしれませんが、わたくしの騎士さまとなってくださいませ」

「うん、頑張るよ、ディートリンデさま!」


 しばらく握っていた手を放し、ディートリンデはイルザにも手を向けた。イルザは儀礼に(のっと)り、片膝(かたひざ)をついて両手でディートリンデの手を取った。


「この私、貴方様の盾となりましょう」

「よろしくお願いします、イルザ」


 こうして、イルザとナックは侯爵令嬢とともに王都へと旅立つことになったのだった。

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