24 イルザとナックの、結婚式。
ナックはイルザとの式を急ぎたがった。しかし、実際にはすこし時間がかかることとなった。
先アードラー王に知略で打ち勝った二人とエルフたちの名声は、ゾンネンブルーメにも諸国にも広がっていて、その二人の結婚式にぜひとも参加したいという者たちが我も我もと声をあげたのだ。
エルフたちは、活躍が皆に知られたことを喜び、森に人々を受け入れた。
静かだったカミーレの森は、一転、ゾンネンブルーメにも勝るほどの人の賑わいとなった。
そうして、大勢の人々の祝福のもとに、いよいよ二人の結婚式が行われることとなった。
式には、フォルクハルトとディートリンデの参加はもちろんのこと、ハーズからエレオノーラも駆けつけた。
現アードラー王となったダミアンは、戦後処理が忙しく、直に参加は出来なかったが、彼は「風の伝言」で二人の祝福を告げた。
王都の、フォルクハルトの父親である王からも、ハーズ王からも祝意が届いた。
式が厳かに始まる。
カミーレの森の、エルフの里にある、森で一番の古木。樹木の大霊が宿るその大木を中心に、里に宴会場が作られている。そこに、イルザとナックは現れた。
エルフの服飾士がこしらえた、彼ら独特の紋様が描かれた花嫁衣裳に、イルザは身を包んでいた。
ナックも、エルフ一族の長の息子にふさわしい、きらびやかな上等の花婿の衣装だ。
二人が宴会場の中心に進むと、大きな拍手と歓声が響いた。
「……やっとだね」と、ナックがそっとイルザに囁く。
「ああ。本当にやっとだ」と、イルザも笑った。
「とっても綺麗だよ、イルザ姉ちゃん」
「ナックもな」
二人は微笑みを交わす。
皆を代表して、国の第一王子であるフォルクハルトが二人の前で祝福の言葉を述べた。
「我が国を救った二人に幸いあれ! 乾杯!」
「乾杯!」
皆に配られた木製のカップが、高く掲げられた。
宴会が始まり、酒もちょうど良く回ったころに、フォルクハルトとディートリンデが二人の前にやって来た。
フォルクハルトの腕に、ディートリンデの手が絡んでいる。
「本当におめでとう、イルザ、ナックも。……次は私たちの番だな」
フォルクハルトが二人に、にこやかに笑う。
「忌憚なく物が言える友人として、二人とも、これからも長く付き合ってほしい」
「もちろんです、フォルクハルトさま」とイルザが笑い返した。
「ディートリンデさまの保養のときには、必ずフォルクハルトさまも来てよね! 待ってるよ」とナック。
「ええ……お二人のように、わたくしたちも幸せになります」
ディートリンデが柔らかく微笑んだ。
宴会は、歌えや踊れの陽気な調べがいつまでも続いた。
大団円だった。




