23 ディートリンデの回復、ナックへの思い。
エルフたちの献身的な看護が、数日夜通しで行われた。
その甲斐あってディートリンデは目覚めた。辺りを見ると、ナックがその手を握りながら、うつらうつらと半分寝かかっていた。
「まあ……ナック!」
ディートリンデの声に、ナックは、はっと我に帰る。
「ディートリンデさま! 気が付いたんだね。良かった……!」
「ずっとそばにいてくださったのですね」とディートリンデが尋ねる。
「うん。すぐにみんなに知らせるよ!」
「お待ちください……ナック」
「どうしたの? ディートリンデさま?」
ディートリンデは、回復したばかりの弱々しい力で、ナックの胸にトンと頭を預けた。
「ナック、わたくしは貴方が好きです」
「えっ」
「何度も命を救ってくださった、わたくしの騎士さま……」
ディートリンデの言葉に、ナックは顔が真っ赤になった。
「うん。そう言ってくださると、僕はとっても嬉しいよ、ディートリンデさま」
「わたくしは怖いのです。ハルトさまの妻、後の妃という重責が、この病多き身に果たせるか分からなくて」
「……大丈夫だよ、ディートリンデさま」
ナックはそっとディートリンデの背に手を回し、トントンと優しく叩いた。
「僕もディートリンデさまが好きだよ。でも、だからこそ僕はディートリンデさまの騎士のままでいたいんだ」
「ナック……?」
「ディートリンデさまにふさわしい御方はフォルクハルトさまだよ。僕じゃない」
すこし辛そうな顔をしてナックはディートリンデから身を引く。
「僕らエルフは、これからも全力でディートリンデさまに尽くすよ。薬草もいっぱいゾンネンブルーメに持って行くし、調子が悪い時にはいつでもカミーレの森に来たらいいもの」
「……」
「生涯、騎士となることを誓います、ディートリンデさま。あっ、僕らエルフは寿命が長いからね。フォルクハルトさまとディートリンデさまの、お子さまやお孫さままで面倒が見れるかも」
「まあ……!」
ディートリンデはナックの言葉に、思わず笑い声をあげた。
「分かりました、ナック。本当にありがとうございます……!」
「いいよいいよ。さて! カミーレの地に戻ってきたことだし、急いで僕とイルザ姉ちゃんの結婚式を挙げなくちゃ! うかうかしていると、何の邪魔がまた入るか分からないからね!」
ナックは皆にディートリンデの回復を告げるため、寝台の側から立ち上がった。




