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21 勝利の宣言と、ディートリンデの知らせ。

 王の死とダミアン決起の知らせは、いち早く城内に伝わった。


 アードラーの兵たちは皆、ダミアンの命に従った。


 城壁の消火を済ませ、エルフたちに誘われて周囲の森へと展開していた進軍を()め、代わりに王の身内を捕らえて城下町の広場に連行した。


 そのなかには、あのカサンドラもいた。


 ダミアンは広場で城下の者たちに自らが新たなアードラー王となることを宣言し、連行した王の一族を(みな)平民に落とし、アードラーから追放することを告げた。


「……そのような屈辱ッ!」


 カサンドラが激しく怒る。


「ここで刑死するか、平民として余生を送るか。どちらが良い、カサンドラ?」


 新たなアードラーの主となったダミアンは、冷たくカサンドラに尋ねた。


「くっ……!」


 今まで見せていた高飛車な余裕も無く、カサンドラは地に膝を落とした。


 ダミアンの横に立っていたイルザとフォルクハルトは、兵に促されて歩くカサンドラを見送った。


「殿下……よくもあたくしの叔父上(おじうえ)さまを!」

「それはこちらのセリフだ、カサンドラ! 命は見逃すが、私の婚約者を殺したお前を、生涯許すことは無いからな!」


 フォルクハルトは怒りに燃えた瞳を、去りゆくカサンドラに向けていた。


 王の一族の追放が終わると、城下町は、新たな王の誕生を祝福する声と、戦争ではなく知略で先王を討ち取ったダミアン、そしてイルザとフォルクハルトへの称賛の声が、どっと沸いた。


 ダミアンは、城下の言論の自由を約束した。


 王政への不満をすこし言っただけで捕らえられ、刑死することも少なくなかった過去から解き放たれ、街の者たちは、喜びを口々に言い合った。


「イルザ姉ちゃん……!」


 人混みの中をかき分けて、ナックが走ってくる。


 戦闘終了となり、アードラーの兵と和解したナックたちエルフが森から戻ってきたのだ。


「ナック! 本当に良くやってくれた!」

「大活躍だな、ナック!」


 フォルクハルトとイルザがナックを褒めた。


「フォルクハルトさまも、ご無事で何よりでした。それよりも、大変なんです!」とナックが青ざめた。


「どうした……?」


「アードラー王の死を『風の伝言』で僕らの国とハーズ国に伝えました。それで、展開していたアードラー兵は撤収することになったようなんですが……」


「もしや……ハーズのリンデに何かあったのか!?」とフォルクハルトが察した。


「そうです! 牢での日々が、病弱なディートリンデさまにはお辛かったようで……今、御病気が悪化しているとの知らせが」


「すぐにゾンネンブルーメに帰るぞ!」とフォルクハルト。


「……いえ。ナック、ディートリンデさまを我々の領地カミーレへ、急ぎお連れしよう」


 イルザの言葉に、ナックはうなずいた。


「僕らエルフの里にディートリンデさまを! 御病気を癒す環境と、薬草があるからね!」


 即座にハーズの伝令へと、ナックは「風の伝言」を飛ばした。


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