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2 危機一髪だったのは、侯爵令嬢。

 大きな(アイネマウズ)だった。人の身長はあるかという大柄な体のアイネマウズが数匹、馬車を取り囲んでいる。馬車の扉には紋章が付いており、貴族の所有であることが分かった。


「こんなところに貴族の馬車が……!?」


 駆けつけたイルザは紋章を見て怪訝(けげん)な顔つきになった。


「イルザ姉ちゃん、あのアイネマウズもおかしいよ! 臆病な性格だから、普段は人を襲うはずがないもの」

「だが、あの馬車を助けずにいるわけにもいかないだろう。ナックは火矢(ひや)を」

「分かった!」


 阿吽(あうん)の呼吸で二人は散開した。ナックが先端に火を灯した矢を、アイネマウズの近くに放つ。


 きぃぃぃ!


 アイネマウズは悲鳴を挙げた。獣は火が苦手なのだ。馬車に取り付くアイネマウズが少なくなったところで、イルザは残りの2匹を次々と(さや)入りの剣で殴り飛ばした。


「せやああ!」


 ぎいいい!


 殴られたアイネマウズたちはあっという間に退散した。


「ありがとう、君たち。助かったよ!」


 御者台に乗っていた男が礼を言う。


「いえ、この地を預かる者の一族として当然のことをしたまでです。中の御方はご無事ですか?」


 イルザが馬車の中を(うかが)うと、扉が開き、一人の少女が出てきた。よく手入れされた紫銀(しぎん)色の長い髪。瞳は紫陽花(あじさい)にも似た薄い紫色で、肌の色はどことなく覇気のない青白さがあった。


「危ういところを、ありがとうございました。わたくしはディートリンデ。王都の侯爵の娘です」

「侯爵さま!? これはご無礼を」


 イルザが頭をうやうやしく下げる。


「イルザ姉ちゃん。 この人、そんなに偉いの?」

「王都の侯爵令嬢ディートリンデさまって言ったら、もうすぐ国の第一王子と結婚するって話だと、最近聞いたぞ」

「ふええ! そんなに凄いんだ。コンニチハ、僕は森のエルフの長の息子、ナックでございマス」

「私はこの地の辺境伯カミーレの娘、イルザでございます」

「そんなに(かしこ)まらないでください、あなた方はわたくしたちの命の恩人ですもの」


 馬車からふわりと地面に降り立ったディートリンデは、絵本から出てきたようなお姫さまそのものといった雰囲気を持っていた。

 しかし、二人に微笑もうとした瞬間、ディートリンデは()き込んだ。

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