19 アードラーの協力者、ダミアン。
アードラーの城の最奥にある、使われていない部屋にイルザとフォルクハルトは潜んでいた。
協力者の手によって、城の見取り図を得て牢から出た二人は、食料も調達してもらい、決起の時を待っていた。
イルザの協力者と顔を合わせることになったフォルクハルトは、その正体に驚いた。
王の腹心の配下と思っていた、アードラーの猛将と呼ばれるダミアン公だったのだ。
天然のくせ毛の金髪。体格もどっしりとしており、射貫くような青色の瞳をしている。
将として数々の実績を持つダミアン公を、フォルクハルトも知らぬわけがなかった。
「……イルザにはすこしばかり借りがあるのですよ、フォルクハルト殿下」
ダミアン公は屈託なく笑った。
「昔、無名だったころ、放浪していたダミアン殿に、エルフたちから『風の伝言』を教えるよう取り計らったことがあるのです」とイルザは告げた。
「そうか……。しかし、君のような名将が協力してくれるとは、よほどアードラー王は国内でも嫌われているようだな」
フォルクハルトは思案した表情を浮かべた。
「戦争を一番嫌うのは、俺のように、実際に戦いに出る者です。今回はハーズや殿下の国とは、戦わずに済みましたが、アードラー王があれではいつ苦しい戦いを強いられて敗退し、その責を負わされて死刑となるか分かったものではありません。おまけに手柄はアードラー王の身内ばかりが持って行く。不満も溜まるというものですよ」
「……クーデターを起こすというのか。こちらとしてはありがたいことだ。礼を言う」とフォルクハルト。
「その代り、こちらにも協力してほしい。俺は配下の者とクーデターを起こしますが、そのときに次期アードラー王として俺を認めてもらいたい」
「ふむ」
「暴君に屈し続けるよりは、国民も俺に従うことでしょう。そうして、殿下の国と改めて親善を計りましょう」
「……了解した! よろしく頼む、ダミアン」
フォルクハルトは礼儀にのっとり、右の拳を差し出した。
ダミアンも同じように拳を出し、二人がガツリと拳をぶつけ合う。
「……さあ、ナックたちの準備も整ったようです。反攻を始めましょう」
イルザがそっと、作戦開始の時を知らせた。




