18 ナックたちの反攻、始まる。
「分かったよ、イルザ姉ちゃん!」
王都ゾンネンブルーメに向かっていたナックは事の次第を知った。数日をとにかく急ぎ、ゾンネンブルーメに到着する。
再び「風の伝言」を使い、ナックはフォルクハルトとイルザの準備が整ったことを確認した。
そして彼が王都に入ると、街はアードラーの兵士たちで溢れかえっていた。
街の者に話を聞けば、突如アードラーの兵が王都を襲い、フォルクハルトとディートリンデを人質に、王権を譲るよう迫ったと言う。
「王さまはお優しい方だからねえ。ご貴族さまのお屋敷に蟄居させられたらしいよ」
街の者は痛ましげな表情を浮かべていた。
「アードラーはひどいね! ハーズ国も、あの国に支配されることになったらしいよ」
そっとナックが街の者に言う。
「本当かい……?」
「それとね、朗報がひとつあるんだ。アードラーで捕らわれの身となったフォルクハルトさまだけど、逃げだしたんだって」
「そうなのかい……!?」
「ハーズ国か、ここゾンネンブルーメに逃げてくるらしいよ」
「そうかい! 王子さまが戻られたら、アードラーに一泡吹かせてやらなくちゃね」
「それより、いいアイディアがあるよ!」
「何だい?」
「街のひとたちみんなで、フォルクハルトさまがここにいる、あそこにいるってガセネタをアードラーの奴らに流すんだ。本当のフォルクハルトさまが見つからないためにね」
「そりゃ面白い! ゾンネンブルーメに住んでいるのは、王さまや王子さまには世話になっている者がほとんどだ。力になるよ!」
「ありがとう!」
この話は、たちまちのうち、街に広がった。
アードラーの兵たちは、街の者たちが、フォルクハルトさまはあそこにいる、いいやあっちだと言われるたびに兵を差し向け、徒労に終わることとなった。
(あとは、アードラーで僕の一族と合流しなくちゃ!)
ナックは「風の伝言」で本当のことをエルフの長である父に告げ、エルフの一団を即座に送りだしてもらった。
ナックもエルフたちも、素早く移動した。
そしてついにアードラーを囲む森にひっそりと待機し、イルザの「風の伝言」を待つばかりとなったのだった。




