16 アードラー王との、交渉決裂。
フォルクハルト達がアードラーに到着すると、ものものしい甲冑に身を包んだアードラーの騎士たちに取り囲まれた。
イルザもフォルクハルトも腕を後ろ手に縛られ、引っ立てられる形でアードラー王と対峙した。
豊かなあごひげを蓄えた、鋭い目をした恰幅の良い男。それがアードラー王だった。
「余の可愛い姪に、ひどい仕打ちをしたそうだな。これは報いと知れ!」
アードラー王が怒りの矛先をイルザとフォルクハルトにむける。
「カサンドラは、配下の者に命じて人を殺していました。いくら貴方の姪とはいえ、それが判明したからには、罪人として扱ったまでです」
フォルクハルトが答える。
「それがどうした! 我がアードラーとの友好を続けたければ、フォルクハルトよ、お前の妃として迎えるがふさわしかろう!」
アードラー王がすっと手を上げる。
部屋の奥からカサンドラが現れた。
「……形勢逆転ですわね、フォルクハルト殿下」
「カサンドラ!」
「最後に聞きますわ。殿下。あたくしを妃に迎えてくださります?」
「断る! 人殺しをしてまでのし上がろうとする野心溢れた者と結婚などするはずもないだろう!」
「アードラーでは、そのくらい当然ですわ。殿下への愛と受け止めてくださって良ろしいですのに」
カサンドラが扇で口元を隠しながら笑い声をあげた。
「愚かな奴よ! 我が姪を受け入れれば、貴様の国も安泰であったというのに」
アードラー王が呆れた表情を浮かべる。
「アードラーの傀儡となるつもりはない!」とフォルクハルト。
「連れてゆけ! ハーズのように、貴様の国も我が物としてやろう!」
騎士たちに連行され、イルザとフォルクハルトは、城の牢へと繋がれた。
「さて……これからが肝心ですね」
イルザはフォルクハルトに微笑んだ。




