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  作者: 冬と珈琲
第1章
5/13

転機

第4話です。どーぞ。

「着いたわよ。、、、、ここで合ってるわよね?」


思っていたよりも家にはすぐに着いた。途中から、私の話ではなく井谷先生の昔話になり先生の一方的な会話になったからだろう。


「はい、合ってます。ありがとうございました。」

「ちょっと、待ちなさい。親御さんにちょっと聞きたいこともあるし私も行くわ。」


この時間帯にはまだ母は帰ってきていない。だから、玄関の扉を開けて母は居ないと伝えればいいので私も拒否はしなかった。


「わかりました。じゃあ、玄関の前で待ってて下さい。」


そう言って私は玄関の鍵を開ける。


「ただいま。」

「遅い!どこで油売ってたの?!」


開けると同時にそこには帰ってきていないはずの母がいた。驚いて反応できない私に向かって容赦なく平手打ちが振り下ろされ頭を靴箱に打ち付ける。


「仕事してたら学校から電話がかかってくるし、なのに貴方はいない。帰ってくるまで待とうと寝たらあんな夢も見るし最悪だわ。」

「がっ、学校から電話?」


学校からの電話という聞き逃せない単語を聞くが心当たりがない私は困惑する。しかし、そんな私を置いてけぼりにし状況はどんどん変わってゆく。


「大丈夫?!凄い音がしたけど!!」


頭を打ち付けた時の音に驚いた井谷先生が入ってくる。そして、この状況を見て息を呑む。


「貴方だれよ?!勝手に家に入ってこないで、警察呼ぶわよ!!」

「いきなり入ってすみません。私は、彼女の学校の保険医です。」

「な、学校の教師。」

「はい、今日お電話した通り彼女があまりにも酷い怪我をしていたため帰宅も大変だろうとここまで送りました。」

「そんな、学校側は怪我はしたけど歩いて帰宅できそうなので早退させるって。」

「そのことに関してはすいませんが嘘をつきました。貴方は、私達が来ると言うと仕事が忙しいと言って逃げると聞いたので。」


そこで話を切ると先生は、ポケットかスマホを取り出し電話をかけ始める。


「先生、彼女のお母さんに会えましたが話すまでもありませんでした。彼女は私が保護するので後は宜しくお願いします。」


電話が終わると井谷先生は、困惑する私の手を取り、顔を青くする母に向かって言った。


「今回の事で私達は彼女が虐待されていると判断し警察に連絡しました。すぐに、警察の方が来ると思います。」

「ちょっと────。」


返事は聞かずに私を引っ張り外に出る井谷先生。そこには、ちょうど今来たのであろう息を少し切らした担任の先生が立っていた。


「井谷先生お疲れ様です。後は、こっちで対処するので彼女を任せます。」

「はい、分かりました。でも、警察が来るまで彼女の母親が何かしてくるか分かりません。十分に気をつけて下さい。」

「分かりま、、、。どうやら、その心配は内容ですね。」


担任の先生が言い切る前にパトカーが1台家の前で止まる。そこから、2人の警察官が降り担任の先生と共に家の中に入っていった。私はそんな状況を未だ混乱する頭共に見ていた。



その後、私は井谷先生からこの状況の説明を聞いた。担任の先生が私の虐待を察していて何度か私の家を訪ねようとしたこと。毎回それを仕事が忙しいなど言われはぐらかされていたこと。そして、今日の私の怪我と井谷先生というまだ母に知られていない先生が来たことによって今回の嘘をついてでも虐待を止める事を決めたことを。


「よく、頑張ったね。もうこんな辛い目に合わなくていいんだよ。」


私は井谷先生のその言葉を聞きながら警察官に連行される母を見ていた。


「ねえ、娘に合わせて。あの子が本当の事を話してくれるから。私は虐待なんかしていない。あの子を愛して上げてたもの。ほら、合わせてよ。合わせろって!!」


どの口が愛していたと言うのだろう。自分が捕まりたくないだけだろうに。心では、そう理解しているのに何故だか目から雫が落ちる。きっと、そう。きっと、この地獄から解放されたからだろう。


────その日、私の14年間続いていた虐待生活が終わった。







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