私と悪夢
第3話です。どーぞ。
「その身体じゃあお風呂に入るのも難しいわよね。でも安心してね。お母さんが手伝ってあげる。」
醜く気持ち悪い笑みを浮かべた母は、そう言うと私の残り少なくなった髪の毛を鷲掴みにし風呂場まで引きづっていった。
「まずは、頭からね。」
剥がれ落ちた皮膚や垢、髪の毛などが沈殿し底が見えなくなっているお風呂などまるで気にする様子もなく母は、私の顔をお風呂の中に押し込んだ。
「ガボッ、ゴボッ、、、、ゴバッ!」
大量の水と共に、底に沈殿した汚れを思いっきり飲み込んでしまう。喉に絡みつく髪の毛、口の中の体温により溶けだした脂質成分が予想以上に不快で胃液が逆流し水中で吐いてしまう。
「せっかくお母さんがお風呂に入れてあげてんのに、なんで吐くのよ!」
水中から引き上げられやっと呼吸ができると金魚のようにパクパクと口を開け空気を取り込む私を見ながら母は怒鳴る。
「なにか、言いなさいよ!」
返事ができない私をもう一度吐瀉物が混ざり合う風呂の中に入れようとしたのだろうが、今までずっと私を押さえつけていた反動だろう。急に力が緩んだ。しかし、それは逃げるチャンスなどにはならなかった。
ゴンッ!!
緩んだ力のせいで的が外れ水面ではなく風呂の淵に顔面を強打する。前歯がかけ、鼻血がでる。
「だから、なんで汚すのよ!この阿呆が!」
完全にキレた母は、私を風呂の中に入れるとマドラーの様に使い始めた。私は、揺れる脳と様々な汚物と何かが混ざりあったお風呂と共に────。
☆
最悪な目覚めだ。起きた瞬間にそう思った。おまけに、夢のせいか汗で服がぐっしょりと濡れていた。
(今は何時なんだろう?)
これだけ汗をかいていたのだ結構な時間を寝ていたのだろうと思いベッドから起き、カーテンを開ける。
(嘘、こんなに寝てたの?!)
窓からはもう日に沈む太陽が見え、時計には
5時27分と表示されている。予想以上に寝ていたようだ。早く帰らなければと考えた時だった。
「やっと起きたのね。お寝坊さん。」
井谷先生が元気よく扉を開け部屋に入ってきた。
「井谷先生、もう学校終わってるじゃないですか。なんで、起こしてくれなかったんですか。」
「いや〜、ごめんね。お昼には起こして上げようと思ったんだけど5、6時間目の授業でいきなり倒れる子がいてね。そっちに付きっきりで忘れてたの。」
「そうだったんですか、、、、。」
保健室のベッドを貸してくれたのもあり、仕方ないかと無理矢理納得する。
「じゃあ、井谷先生私もうこんな時間なんで帰ります。ベッド貸してくれてありがとうございました。」
「待ちなさい。貴方その体じゃあ帰るのも大変でしょ。私も、もう仕事が終わって帰るところだからついでに送ってあげる。」
この時間だとまだ母は帰ってきていないし、早く帰れる。私はすぐにその返事を受け入れた。
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えて。」
「別にいいわよ。ついでだし。それに、貴方とお話したいもの。やっぱり先生になったら生徒と仲良くなりでしょ?」
そう言うと井谷先生は、自分のデスクから車の鍵を取ると、車を取りに出ていった。
「お話か、話せることなんか何も無いんだけどな。」
そう独り言を言いながら私は、帰り支度を済ますと井谷先生が待っているだろう駐車場までかけていった。