4,新たなスタートと挑戦状
これまでより少し長くなってしまいましたが、ご了承いただければ幸いです!
今回からここまでと変化する部分があるので、そこにも注目して頂ければと思います!
カチャ、カチャカチャと音を立てて、俺は『それ』を身に付ける。そしてニヤニヤしながら一言、
「ヤベェ、この装備カッケェ……」
そう、これから自分の使い魔になるのだからということで主人となる色翼十四将の『亡者の女王』ことメーレ様が宝物庫にあった防具一式をくれたのだ。
少し明るい紫色で、元の世界の歴史の教科書とかで見た侍の鎧だが、この世界の魔物などのツノや毛皮といった素材が使われている箇所がある。小さなツノがいくつも付いた『大袖』という両肩に付いている肩から肘下までを守る防具や、背中に彼女のマークが入っていて膝下まで伸びる少し暗めの白い『陣羽織』に、なんといっても兜だ、両脇に細めの『ねじれるツノ』が長く真っ直ぐそびえたち、正面には銀色で骸骨の凝った装飾が付いていた。
「フフッ、良くお似合いでありんす」
そう言って俺の姿を見る彼女。
「これを……ぬしに使って欲しい、そう思いんした」
そしてどこから出したのか、『それ』を差し出す。目に入りすぐにわかったが、それは『刀』によく酷似していて基本的な形は同じなようだ。戸惑いながらそれを受け取り、少し長めの柄を掴んで抜いてみる。すると黒い稲妻が走り、その姿を現わす。黒い刀身に脈打つように桃色の光が模様から溢れて不気味というより美しい。
「良いんですか? こんな凄そうな刀を俺が使っても……」
明らかに名刀クラスだろうその刀に萎縮して尋ねると、
「いいんでありんす、ぬしに初めて会って使い魔にしたいと思った時から、それを渡そうと決めていんしたから」
そう言われてしまうと言い返せず、有り難く使わせてもらうことにした。
その後、使い魔の契約をする為にこれから魔王様の元に行くそうだ。
(まさか使い魔の契約が魔王様の仕事の一つとは……てっきり主人と二人だけで出来るのかと思ってたなぁ)
まぁ、そんなことは置いておいて心機一転張り切っていこうと気合を入れて彼女に続き、部屋を出ようとした途端にゴンッと鈍い音を立てて頭が後ろに持っていかれ、そのまま仰け反り尻もちをつく。
「フフッ……大丈夫でありんすか?」
笑いを堪えながら心配する主人、何故笑われたのか一瞬わからなかったが頭を触ってようやく気付いた。兜の長い『ねじれるツノ』が襖の上の長押に当たったのだ。
(は、恥ずかしい……なんてカッコ悪いんだ)
頭に気をつけながら立ち上がり、行きましょうか。とジェスチャーして無かったことにしようとする俺、そして必ずもう少し短くしてもらおうと決意を固めたのだった。
彼女の後に続き、無駄に広くて長い廊下を歩いていくと悪魔の顔のような大きな模様が刻まれた巨大な大扉の前で止まる。
「ここでありんす、こなたにわっちらの王がおりますゆえ、ご無礼のないようにお願いしんすね」
そう言って大扉に向き直す。そして大扉が勝手にキィィと音を立てて開かれる。そこにはまさに玉座といった椅子があり、この『玉座の間』自体もとてつもなく禍々しくも豪華な作りだ。その玉座には灰色の長髪で、筋肉のついた胸板を見せるようにはだけさせたような服装で、尖ったように長い襟が立っているのが目につく、そして圧倒的な威圧感を放ってそこにいた。
「よく来たわねぇ」
少し高めの声でそう言って魔王は立ち上がる。
(わね? 女性じゃ……ないよな……)
そんなことを思っていると急にさっきまでの威圧感が消え、
「んもぉ、ようやくねぇ! メーレちゃんは使い魔の契約全然しないから心配してたのよぉ!」
そう言ってまるでランウェイを歩くモデルのような歩みでこちらに来る。よく見てみればズボンもパツパツでセクシーアピールがあり、靴もやけに高いヒールのようなものを履いている。
(ま、間違いない……この魔王様はオネエ系かっっ!)
出会って一分も経たずにオネエ系だと確信した俺、そんな俺に気付き、舐め回すように観察するオネエ魔王。
「このコがその使い魔ちゃんね、ふぅん……確かに面白いわねこのコ」
なにかを見抜いたように納得する素振りを見せる。なにが面白いのか聞きたかったが、さっきまでの威圧感で身がすくんで声が出せなかった。すると、
「お名前はなんていうのかしら?」
急に聞かれてオドオドしながら自身の名を名乗る。
「へぇ、ジャクオウちゃんね……じゃあジャクちゃんで良いわね」
はい決まり、といって手を叩く。どうやら魔王様なりの俺の呼び名が勝手に決まったようだ。
「あらいけない、まだワタシの名前言ってなかったわねぇ、ワタシは第五代魔王ディアリーヴ・アグラス・オヴネェ、気軽にディーヴって呼んでねぇ!」
ものすごく軽い自己紹介に戸惑いつつも、
「は、はい、ディーブ……様?」
そういうと、プクゥと頬を膨らませて、
「んもぉ、ディーブで良いって言ってるのにぃ、なんでみんなしてそう呼んでくれないのかしら」
普通に考えて自分らのトップである存在に対して呼び捨てなど出来るわけがないと思いつつも苦笑い。
そして自己紹介も終えて、本題へと戻る。魔王様からのかるーい説明を受けて早速契約の儀を始める。俺は彼女の前に跪き、魔王様がなにかを唱えると俺と彼女の足元にピンク色の線で魔法陣が現れて輝き始める、
『『汝メイフィーレ・シャーデルは、この者ジャクオウ・ススムを使い魔とし良き時も悪き時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、死が二人を分かつまで、愛を誓い、永遠の契約を結ぶことを誓いますか』』
魔王様のその言葉に彼女は少し顔を赤らめて誓いますと答える。
『『汝ジャクオウ・ススムはこの者メイフィーレ・シャーデルを主人と認め、その命を持って未来永劫守り、主人のみに添うこと、そして主人が死す時、共に死すと誓いますか』』
まるで結婚式の神父の言葉のような契約の儀にドキッとしたが、同じく誓いますと答えると足元の魔法陣の光が一瞬強くなり、消えてゆく。
「これで契約の儀は終わりよ、使い魔ちゃんが出来て本当によかったわねぇメーレちゃん!」
そう言って彼女にウィンクを送る。
その後、魔王様が他のことで忙しいとのことで魔王様に背中を押され玉座の間を後にし、彼女の魔性空間に戻ってきた。
「これでぬしはわっちの正式な使い魔になりんしたね」
口元に扇を当てていても嬉しそうなのがわかる。
「はい! これから精一杯使い魔やらせてもらうんで、よろしくお願いします!……姫!」
突然呼ばれ方が変わったことに驚き、
「姫……わっちがでありんすか?」
キョトンとした表情で首を傾げている。
「あっすみません! メーレ様って呼ぶより使い魔らしく他人と違う呼び方の方がいいと思って……嫌ですかね?」
そう言ったが、内心ではせっかくの異世界ならそんな呼び方をしてみたい。という個人的な欲だった。
「嫌では……ありんせん、ただそういった呼び方をされるとなんだかムズムズしんす」
そう言ってモゾモゾし始めるが、そう呼んでもいいとのこと。
「では、わっちもぬしのことをジャクとおよびしても?」
まるで恋人同士のようでとてつもなく動揺したが、こっちも同じようなことをお願いした手前、断れるわけもなく、了解した。
そして二人して恥ずかしがっていると、廊下の方でダダダッと騒音がし始める。自分達のいる部屋の近くまで来るとバッと襖を勢いよく開け放ち、
「メーレ姉様に使い魔が出来たって本当!?」
急に現れたその娘は黒い眼球に黄色い瞳、紫色の短髪に水色の肌で八重歯が少し長く、ゴスロリのような格好をしていて背中には肌と同じ色の小さな翼が生えていて小悪魔という言葉が一番当てはまるだろう。
「ええ、こなたの者がわっちの使い魔になった……ジャクでありんす」
少し照れながら俺の新しい呼名をいうと、少女は俺の周りをタタタッと走り回り、
「へぇ、コレがメーレ姉様の使い魔かぁ、なんか普通ぅ……落武者?」
微笑を浮かべながら姫が説明しているが、コレとか普通とか落武者とか散々な言われようだ。
「ぬしは初めて会うのでありんしたね、こなたの娘はリース・パルフィー、わっちと同じ色翼十四将の一人でありんす」
この小さい子が幹部なの!? と思いつつ軽く挨拶をすると、突拍子もなく
「メーレ姉様の使い魔って事は強いんだよね! 私の使い魔と戦っても勝てちゃうよね! そうじゃなかったらメーレ姉様の使い魔にふさわしくないもん!」
頬を膨らませていきなり挑戦状を叩きつけてきた少女。
(はぁ!? なんてことを言い始めるんだ! そんな無茶なこと無理に決まって……)
横にいた姫に救いの目を向けると、頑張ってという仕草をしている……主人公認である。口を開けて固まる俺。
そして場所は移り不気味な森の中に立っていた、ここは少女の魔性空間で霧の強い木々が生茂る場所で多数の魔獣が目を光らせている、俺は結局逃れられずに挑戦を受ける羽目になっていた。
「もぉぉぉ、誰かこの展開をおかしいと思うやつはいないのかよぉぉぉ!」
俺の訴えも儚くその叫びは森の中に消えていった……。
第四話を読んでいただきありがとうございます。
第五話では主人公が初めて本気で戦う初戦を書く予定ですので期待して頂ければ嬉しいです。




