鉄
「そうだったのですね。しかし、珍しいですね。この世界に来た日本人はだいたい一人で来るのに三人でとは珍しいのですね。三人で同時に死なれたのですか?」
死なれた…? どういうことだ。その発言が理解できない。
「死なれたとはどういうことだ?」
「どうもこうもこの村にいる日本人は皆、現世で自殺なり事故で死んだ者たちが女神さまに勇者候補として送られてきているのですがあなた方は違うのですか?」
死んだ人たちがいる…。ここは死後の世界なのか? まさか、僕たちも死んだのか…。僕はこの世界に来てしまった経緯を話す。それを聞いた彼も初めてのパターンだったのかとても驚いている。
「この世界にくる方法は“死”だけではなかったのですか。まだまだ分からないことばかりですね。僕は野球選手でドラフト二位のルーキーだったのですがボールが頭に当たりそのままぽっくりと。転生ができるとのことだったのでここに来ましたがなかなかこの世界もいいものですよ」
「あなたは現世…日本に戻ろうとは思わなかったのですか? 経歴からして、これから本番という気もしますが…」
「そりゃ戻れるなら戻りたかったですけど死んでしまったわけですし。この世界で記憶があるうちにもう一度、人生が全うできるのならいいのかなと」
彼はしんみりとした顔をしながらも前を向いて語っている。きっとこの世界での人生を楽しんでいるのだろう。
「色々お話をお聞きしたいのですが今はあまり時間がなくてですね。戻らなくてはならないので単刀直入にお聞きしますね。この村に“鉄”と似た物質はありますか」
彼の表情がこわばる。聞いては行けないことだったのだろうか。急いで話題を変えようとすると彼は口を開く。
「ありますよ。鉄に似ているというよりも鉄です…」
「本当ですか! よかった」
「ですが今のこの村に取れる技術もないですし、下の街まで運ぶ方法もありません」
「そうなのですか…。まあ、でもとりあえずあるってことだけで僕はホッとしています。よかった」
まあ、技術面はどうにかするしかない。今回のミッションは鉄の存在がある事を確認するのが一番だ。
「まだまだ話したいことはたくさんあるのですが一旦、下の街に戻ります。作戦を練ってまた来ます」
「分かりました。でも次、来るときも今と同じ方々で来てください。今はあまり多くの人を受け入れられないので」
「そうですか、なぜ少人数でなのですか」
「それは…、また今度話します。とりあえず次来るときも今と同じメンバーでお願いします。あと、今度はこの道を通って来て下さい。ダンジョンは大変でしょうし。またお待ちしておりますね」
僕たちは握手を交わし、村を出ていくのであった。




