第三十六話 脱走
脱走したアーネを見つけてしまった僕たちは王城へ行くのをやめ、部屋へと連れ戻り説教を始める。街中は金曜日の夜で仕事終わりに一杯ひっかけていこうとする職人目当てにどこの飲食店も匂いで引き付けようと精を出している。そんな匂いがお腹のすいている我々には少し、効くものがあった…が酔っぱらった十歳の問題児が目の前でフラフラしている。まずはこれをどうにかしないと始まらない。
「おい、何してたんだよ」
「え~? 佐藤さんたちとぉ~打ち上げするぅ~ためにぃ~座席をっ! とっておいたんですよ~」
いつもよりひどく悪酔いしているアーネ。まるで終電間際に駅で寝ている人達と同じ匂いを感じた。だいたいこういうタイプの人間とは話がつかないが、普通じゃありえない程の金額になるだけ飲み食いをしていたのでどうしても問いただしたかった。
「座席取っておいた割には出来上がりすぎじゃないか?」
「ハエー? ヒック。 んなことわたしゃ知りませんよ! ちょっと食べていただけで…」
「例えばどんなものを飲み食いしたんだよ。普通ならそんなに高くならねーだろ」
「えー今回だけ特別ですよ? 次からは教えませんからね?」
僕には何が特別なのか全く理解できないし、つぎもあるのかよ。という気持ちでいっぱいだったがとりあえず聞けるなら聞いてやろうじゃないか。
「例えば~テンボルバード産のワインとかエネルジコに届いたばかりの委棄のいい野菜とかですかね~!」
来てまだ日の浅い僕はこの世界の地理にはまだ詳しくないので全く理解ができない。この地域で作られたものは高いのだろうか…。
「あっ! それ聴いたことありますよ。ちょっと前に晩餐会あったじゃないですか。その時にどこかで金持ちっぽい人がテンボルバードのワインはないのかとキレていましたね。きっと高いんですよ! きっと」
「情報が適当すぎるが、もしこれが本当なら王城の晩餐会に出せない格安のワインか最高級過ぎて出せないかのどちらか」
「高いに決まってるじゃないですか~! お腹ならして街をフラフラしてたらこのワインあるの見つけて飛び込んだんですから!」
「おっと…今本音が出たな? ちなみにどのくらいするんだ? そのワインは」
「えーっ。ちょっといいホテルに泊まれるくらいですよ~。ケチだな~」
「ケチじゃないわ! えっ? 何? そんな高級ワイン一人で飲み干したの? しかもそんな悪酔いしてるってことは相当ひどい飲みしたんだろ。今そんなにお金持ってるわけじゃないんだからな? 何かあったら国から出るとは言え、どうやってこのワイン代の言い訳させるつもりなの? あー!魔法使いチェンジ!!」
「そ、それだけはだめですよ! いい感じに無理を言って、ハロワの人に国から仕事を斡旋させる…してもらえるようにしたのにまた、交通量調査の日雇いなんてしたくないんです! お願いです。黙っててください。そして、まだ首にしないでええ!」
え、これ本当に10歳の発言なの?!




