ここはどこ?
「出発進行~!!」
汽車の汽笛と共に列車は動き出す。この世界では、初めて走り出す鉄道。シャープ王国鉄道。この世界には鉄道なんてなかった。そこで僕たちは、自分の知識を生かして鉄道というものを教えた。え?なぜ僕たちだけ鉄道を知っているかって?それはね…
ある日の業務中。
「今日は佐藤さんと勤務なんですね。佐藤さんは安全な運転で安心して案内できますよ!」
「そこまで言われるほどでもないよー。僕はただ事故を起こさないようにしているだけだよ」
僕の名前は佐藤ひろき。25歳。鉄道会社で運転士をしている。電車に機関車と若いながらに基本何でもこなせるエリートである。
今話している相手は、今野すずか。最近は増えてきてはいるがそれでも珍しい女性の車掌だ。
「じゃあ、今日も安全運転お願いしますね! 佐藤さん!」
「おう! 任せておけって!」
僕らはこれから天ケ嶋駅までお客さんを乗せ運転をし、車庫まで電車を回送するという業務となっている。僕はこの運用が一番得意であったがいつも気は抜かずしっかりと確認をしてから行く。
「よし。確認も済んだし今野さんとも打ち合わせは終わったから列車に行こうかな」
僕は駅に止まっている電車へと向かった。
「今日も事故を起こさず走っておくれよー。故障はなさそうだな!」
佐藤は確認を終え、出発時間になったので電車を動かした。
「出発進行!」
そして、僕らは天ケ嶋駅まで何事もなく運転を終えた。
「佐藤ー!お疲れさーん」
車両の整備や線路の点検などの技術職の山田たいちが声をかけてきた。僕の同期だ。車庫までこいつも乗せていくことになっている。
「ありがと。早く乗って。おいてくぞ」
僕は笑いながら意地悪をするかのように言った。山田は急いで乗り込んで、タイミングよく信号が変わったので、電車を動かした。
車庫までほぼ同じ路線を戻るのだが、数十分しかたっていないのに異様な霧に包まれていた。
「今野さん? 妙に霧こくない?」
無線で車掌室にいる今野さんに聞いた。
「そうですよね。怖いので安全運転していってくださいね。」
と返事が来た。特に返事を返すこともないと思い安全に気を付けて運転していた。
得意な経路だけあっていつものとの違いにすぐに気づいた。いつもは、ないところでトンネルに入ったのだ。怖くなり引き返そうと思い、非常ブレーキを使った。しかし、電車は止まらない。というかどんどんと速くなっていく。車掌の今野が運転室に来た。
「どうしたんですか?! どんどん速くなっていますよ!! 早く戻りましょうよ」
「しかし、ブレーキも効かないし無線も届かないんだよ。だからどうしようもないんだ」
僕はうつむきながら言った。
「私死ぬんですかね?お嫁にも行けてないのに」
今そこを気にするのか。
「俺だって結婚してないぞ! どうしてくれるんだよ佐藤!!」
僕だって結婚してないよ。ってかお前ら結婚しか考えてないならちょうどいいだろ。お前らで結婚しろよ。そしたら夢かなうぞ。ってかこれは、僕は関係ねーよ。と心の中で突っ込みを入れていた。
「落ち着けって。きっと生きて帰れるって」
と、僕自身も死ぬなと思いつつ、気を落ち着かせるために適当に言った。そこから数時間、僕らは電車の中に閉じ込められていた。
「光が見えるよ!!」
今野さんが言った。
「本当だ! やっと出れそうだぞ!」
僕は急いで運転室に戻りマスコンを握った。ブレーキが効く。どこに着くのかもわからないので、速度を落とし慎重にトンネルを出た。そこには、運転している車両がちょうど入る分の線路とホームだけがあった。周りは見渡す限り草原であり困惑していた。
「え、ここはどこ?」三人そろって言った。