今度こそ…?
それは一瞬だった。僕と山田でアーネを抑えている間、とてつもない叫び声と共に彼女に大量の水がかかった。それは誰もが予想もしていなかった展開であり、僕らを見ていた周りの人間もまさかだという表情をしていた。
「いい加減目を覚ませオルァァァァ」
……
「あ・の・さ? 今の今野さんがやったの?」
「なんですか? ギャグでも言ったつもりですか」
「そういう意味じゃ…。 キャラぶれすぎじゃない?」
「まあ、でもあの場面私がやるしかなかったですよね」
「いやいや、そうなんだよ。でもさ、叫ぶ必要あった?」
「やんちゃしてた時の血が騒ぎまして」
「君にもそんな時があったのね。あえて聞かないでおくことにするよ」
「そうしていただけると嬉しいです」
「って水かけられた私にもなんか触れてよ!」
「あ、そうだった。目覚めた?」
「はいはい、覚めましたよ」
「じゃあ、正装に着替えてお偉いさまのところに行こうか」
びしょ濡れになっているアーネを引きずりながら街の入り口の方にある転移部屋へと戻って行った。街の人からは冷たい目線を浴びせられたが…。酒に酔っているやつなんだから許してほしいと声を大にして言いたかった。
「私はもう酔ってしまっているので明日の朝出直しませんか。疲れていますし、今さら行ったところでお昼も過ぎてますし受け付けてもらえなのではないのですか?」
「そうは言っても、もう一日あったところでまた夜な夜な酒を飲みに行くんだろう?」
「ソ、ソンナコトハナイデスヨ」
正座しながらも反省しているそぶりは全く見せずに僕とは目を合わせなようにきょろきょろしていた。やっぱりこいつはダメなやつだ。ここでの交渉が終わり次第後退してもらえるように王様に頼もう。
「どうしますか。このままでは遅れて日本に帰るのも遅くなってしまいますよ」
「しょうがないが、一日だけ遅らせよう。夜は交代でアーネの見張りをしよう」
夜になり、ご飯は適当な調理されたものを買ってきた。最初は今野が「料理をしたい」と言っていたのだが、この世界の食料は何が何だか分からなかった。何がマグロっていう野菜だよ。しかも、野菜と言っても赤身などがある。使い方が分かるわけがないので買ってきたのだった。
食事も終わり、交代で逃げないように監視を今野から順番に行った。僕は最後だったが寝る前に固定したはずの食卓にいなかった。慌てそうになったが月明りに照らされて影が出来ていた。見てくれはよく、何もしなければ美しいので見とれてしまった。
「どうしたの? 私に惚れっちゃったのなら見逃してくれない?」
「そんなわけないだろ。僕たちだって早く完成させたいから見逃さないぞ。お前にはいてもらわないと交渉すらできないからな」
「それは残念だわ。でも私を誰だかお忘れで? これでも一応大魔法使いなのよ?」
「それがどうしたって言うんだ」
彼女は窓際から食卓の椅子に座っている僕の元へ笑みを浮かべながら近づいてきた。そのまま耳元に近寄り小声で
「私をなめたらいけないわ。スリープ」
なんだか意識が遠くなってきた。アーネが外へ出ようとしている。止めなければ。でも、どんどん意識が…
魔法を駆使して出かけて行ってしまい翌朝騒ぎになった。そしてまた探し出し、泥酔しているアーネを見つけ今日行くこともあきらめることになった。
いつになったらいけるの?!
文の終わりではありますが、あけましておめでとうございます。
本年は昨年以上に投稿ペースを上げていきたいと思っております。
どうぞよろしくお願い致します。