可愛いネモ君
意味も無い喧嘩の仲裁をし、僕たちは街へと向かう。つい、先日も通った道なので少し慣れている感じもしてきた。というかソステヌートにいるとどうも異世界に来ていることを忘れてしまうのでここに来られるのは個人的にウキウキしている自分がいる。
「しかし、我としてはこの街には当分戻らないと決めていただけあって、こんな頻繁に出入りするようになるとは思っていなかったのですよ」
「そうなのか。じゃあ、外で待っていてもいいんだぞ?」
「そうですね。師匠は僕がいればなんとかなりますので安心して外で待っていていいですよ」
彼女は頬を膨らせ、顔を真っ赤にしながら
「この街で我はとっても偉いのですからね? 佐藤達が我を仲間はずれにしたと分かったら何をされるか分からないのですからね! いいのですか?!」
そうでした。彼女はこの街の跡取りであり、好戦的な部族の長の娘でした。
「本気にするなって。軽い冗談だって。な、ネモ君」
「え、僕は冗談じゃないですよ? このパーティーの子供枠は僕だけで充分ですから。というか、僕は師匠みたいになりたいだけなので!」
憧れてくれているのか。この僕みたいな人でも。とてもうれしい。だがな? ならアーネともう少し仲良くしてほしいのがお兄さんの願いなのだよ。ネモ君。
と、僕は心の中だけで唱える。いつか仲良くなってくれる日は来るのだろうか。
というなんてことない雑談をしながら街へと入る。
「あ、アーネ様、お帰りなさいませ。今回も帰ってくるのは早かったですね。なにかご用があるのですか?」
「ああ、ただいまなのです。今回もは、言い過ぎなのですが。また仕事があるのですよ。我も忙しいのです!!」
「も、申し訳ありませんでした。以後は発言に気をつけます」
ここに戻ってくると別人に見えてしまうのは僕だけなのかも知れない。いつもは足を引っ張ることしかしないアーネがここでは王女様だからなぁ。信じられない。
そんな風に人がどんどんと周りに増えていくのを遠目に見ながら思うのであった。
「師匠、これじゃあ当分動けなさそうですね」
「そうだな、先に宿に行っておくか? それともご飯でも食べるか?」
「師匠はどうしたいですか?」
「え、僕? お腹も別にすいていないしなあ。疲れたから宿に先に行っておこうか?」
「はい! 僕もそれが良いと思います!!」
少し目線をそらしながら同意したネモ君。しかし、
“ぐううう・・・”
「先に少しなにか食べてからにしよっか」
「いや! 良いんです! 先に」
“ぐううう・・・”
「すみません……」
「いいのいいの、僕なんかに気を遣わないで。まだ子供なんだから」
少し意地を張ってしまうネモ君。僕に合わせようとしてくれちゃって可愛いんだから。なんて思っていると子供扱いされたのが嫌だったのか少しムスッとしたネモ君がそこにはいた。
お久しぶりでs。4ヶ月くらい本編投稿していなかったんですね。あれ、ま。