さあ。始まりだ
この一週間は地獄だったと思う。あの説教をしてしまったばかりに信頼のかけらすらなくなってしまったので何とか取り戻そうと奔走した。
そんな一週間が経ち、王城へと呼び出しがあった。
「お久しぶりです。本日から鉄道計画の開始でしょうか」
「よくわかっておるな。しかし、どのような地形をどう通せばいいのか我らには分からんのだ。なのでまずは、現地調査から行ってもらいたい」
「ゲ、ゲンチチョウサ?」
「そうだ。計画としては決まっていることは二つの方向に鉄道を敷くことだ」
「フタツのホウコウ?!」
「そうだ。一つは君たちの来たアンダンテの街へ。もう一つは我が国最大の港町エネルジコヘ!」
僕たちは否定させてもらう間もなく了承をしてしまった。いわば強制だった。契約としては線路を敷き、走らせること…だけだったはずなのにおかしい。このままでは普通の冒険ファンタジーになってしまうかもしれない。確かに異世界に来てそれはそれでうれしいのだが。やはり、早く帰りたいのだ。どうやって断ろうと考えていると能天気な二人は
「やばい! ついに異世界らしいことできるぞ!」
「そうですね先輩!! ついに始まる私たちの冒険者としての異世界生活! この先にはどんな波乱が起きるのか!?」
「今野~いいね~雰囲気出てきたよ。今日は装備を買いに行くか!!」
なんですか。こいつら馬鹿なんですか。やっぱりこいつら捨ててくしか…
「お前ら、ちょっと待て。今回の任務はやらなくていいことのはずなんだ。だから断ろうかと…」
それを聞いた二人は語気を強めて息を合わせて
「断っちゃだめだから!!」
と言ってきた。やっぱりこいつらは結婚するべきだと思う。
「お前ら、冒険したいだけだろ?」
二人は “コクリ” とうなずいた。調査なんて行きたくはないのだがここまで二人がやる気なのを見るとたまには信用したくなることもある。
ということで前回の罪滅ぼしではないが今回は意見を聞いてやることにした。
「しょうがない。今回は言うとおりにしてやるよ。でも条件として勝手な行動だけはしないこと! いいか?」
ハイタッチをし、喜んだうえで元気に 「ハイ!!」 と返事をした。そうとううれしかったようでさっきまで見せていた神妙な面持ちはもうなかった。
やっぱり子供だなぁ、と僕は思ったんがけど。
国王には調査へ行く旨を伝え、戦いがうまい人を付けてほしいと頼んだ。彼はこの要求が分かってたかのように
「城下町の入り口の門の前に待たせてある」
というので装備をし、三人でそこへ向かった。