お兄さんのお散歩
僕はどのくらい寝たのだろうか。窓辺から差す光で目が覚める。周りには誰もおらず、僕一人であった。
しかし、アーネがここにいないということは熱が下がって元気になったと言うことなのだろうか。僕もすっかり昨日の夜の疲れは嘘のようにとれていたが不用意に動いてすれ違うのもいやなので部屋で待つことに。
しかし、いっこうに帰ってくる気配がない。多分出かけているだけなのだろう。だがなぜかそわそわしてしまう。アーネが心配とかではない。実はこの冒険でしていて、日を重ねるごとにあの騒がしい感じが身体に染みついてしまっていてそれを求めているのだ。なんて恐ろしいことなんだ。あの騒がしいのを寂しいと感じてしまうなんて。そんなものを感じるにはまだ早すぎる気がしないわけではないが。
そうだ、この一人でいる間に今までの自分に戻るためにも今日は一人でこの街を散策しよう。そうすれば落ち着けるだろう。
しかし、この街にいると本当に異世界に来ているのかと疑ってしまうような街の作りである。商業地はビルが乱立している。しかし、日本にいたときに働いていたのが山の中のせいだったのもあり、なぜかここにいる方が異世界なのかと思ってしまう。
しかし、どこに行くかも考えておらず、とりあえず街の中心部にある地図を見る。ぼーっと地図を見渡すと、どうやら街の外れに小高い丘があるみたいだ。軽くそこまで行って戻ってくれば、あいつらも帰ってくることだろう。この小高い丘はどうやらこの街の数少ない観光地のようであり、丘に近づくにつれて、よくわからないお土産屋さんが増えてくる。
「あ、お兄さん。こんなところに観光だなんて珍しいね! どうだい、ここの休憩所によっていかないかい?」
「何言ってんだい。このお兄さんはうちの土産屋によっていくんだよ!」
「そんなことないね、うちの温泉まんじゅうを食べていくんだよ!」
どれにもよるつもりは無いのだが……。機嫌を損ねてしまわないように、軽く愛想笑いだけを返して、先に進む。
お土産街を過ぎると人の気配がぱっと無くなる。まあ、この観光地に向かう人自体が少ないのではあるが……。
木々で暗くなっている細い道を進むと光が差し込んでくる。思わず、光に吸い込まれてしまうように走る。光に飛び込むとそこに広がっているのは街を一望できる景色であった。ギルドや商業街。僕の泊まっているホテルもしっかりと見える。そこまであるいたつもりではなかったのだが結構来ていたようだ。跳ね返ってくる山もないのに思わず僕は。
「ヤッホー!」
と叫んでしまった。
「おじさん……なにをしているの……??」
は、はずかしいいいい!!
前座