ゴシック好きのお二人
熱の出てしまったアーネをために宿に戻る。回復魔法でなんとかならないかと思い、ネモ君に看て貰うことに。その間、僕は彼女のことが心配ではあるもののいつもとは違うような疲労感を感じていたので休もうとすると……。
「あれ、あそこで疲れているのは真夜中に幼女を連れ出した成人男性じゃないですか。旦那」
「そうですわね。あそこにいるのは幼女を連れ出した上に熱があるのに気づかず、急いで戻ってきて、どんちゃんさわぎしている成人男性じゃないですか。奥様」
誰にでも聞こえるようなひそひそ話をしているのは、柱の陰に隠れている男女二人組であった。説明せずとも分かるだろう。山田と今野である。
「おい、聞こえているんだよ。出てこいよ」
僕は二人のことを軽蔑するような目線を送る。
「なんだよ、俺たちは“本当”のことしか言ってないんだが? なにか間違っているか?」
「そうですよ! 昼間っからアーネちゃん独占していると思ったら夜中に連れ出していたなんて。先輩ってそういう趣味だったんですか?」
二人も僕のことを軽蔑……。いや、面白い物を見つけたような顔をしている。このときの二人は絶対に面倒くさい。経験則で分かる。
「どうした。面白い物を見つけたような顔して。なんにも面白くないからな? というか昼間はずっと怒っていただけだからな。あと、夜中のは……本当だけど」
「「やっぱり連れ出していたんだ!」」
目をキラキラ輝かせながら僕のことを見つめてくる。まるで子供がクリスマスプレゼントを貰うときのように。
「おい、なにも無いからな? 夜中にラーメンを食べようとして……」
言葉に詰まる。勝手に勘違いしていたなんて絶対にこいつらには言えないし、死んでも教えることは出来ない。
しかし、二人は僕が何かあったのか感づいているのだろうか質問を続けてくる。
「え、ラーメンを食べようとして?」
「なにかあったんだろ? 言っちゃえよ。今野に話しづらかったら俺だけにでも……」
「え?! それは話が違うじゃないですか!! 聞いたらバレないように私にも共有してください!」
「わーってる、わーってる。今度な? 聞いたらちゃんと教えるから。安心してろって」
「ですよね!! よかったー」
彼女はほっとため息をついている。場合ではない。なんでこの二人はこういうネタについて嬉々として食いついてくるのだろうか。
「なにが分かっているだ? なにがバレないようにだ? バリバリ僕に聞こえているんですけどそれはどうやって言い訳するのか聞かせて貰ってもいいかな? というか何もないしなにかがあっても話すつもりは一ミリもないですから!」
「馬鹿、聞こえるように話すんじゃねーよ、あいつ、怒ってるじゃん」
「えー私のせいなんですか?! 先輩だって一緒に言い出したんですから同罪ですよ。なんならいじろうって提案したのは先輩なんですからこっちに責任を私に押しつけないでくださいよ」
見にくい押し付け合いが始まったので最初はぼーっと見ていたのだが、眠かったのもあり、二人を置いてあいているベッドで寝ることにしたのだった。
久しぶりにこのテンションでいせてつ書いた気がします。やっぱりこれかな笑
これからもよろしお願いします。