ねつ
「どうしたのですか……。早く、おしえて、ほしい、な。」
ラブコメ要素が一ミリもいや、今野とか山田がなんか結婚だかを騒いでいるだけだったこの僕たちの冒険についにラブコメ展開が来たのか。いや、しかし。彼女はまだ子供だ。この世界では大人と認められているらしいが僕としてはまだ容認はできない。だって、どう見てもまだ子供だぞ? そんな年下に恋心なんて抱けるわけが。そう固く誓い彼女の顔を見直す。
「はやく、教えて、くださいよ。」
いいや、彼女は子供、彼女は子供。というかなんでこいつなんかで気の迷いが起きているんだ。だめだ。そう、僕は彼女に箸の持ち方を教えるだけ。OK?
「これはな? こうやって……」
なぜかこいつの息遣いが荒いような気がする。顔を見ようと思い振り返るが体も接近しているうえに顔に至っては目の前にあるのだ。しかもその相手の顔はなぜか赤らめてもいる。どうしたんだよ。その顔は。そのうるんだ瞳は何なんだ。しかし、この瞳に僕は引き込まれてしまいそうでもあった。
至近距離で見つめてしまっていると彼女は小さな声で
「あつい……」
そう一言だけいうと僕の体にうなだれてしまう。
「おい、大丈夫か? おい!」
彼女は意識を失った。確かにおでこを触ってみるとあつい。あいつのことをしっかりと水もせずに、夜中にラーメンを食べに連れ出して勝手に勘違いしていたなんて馬鹿すぎる。なにがラブコメ展開だ。とりあえず宿に連れて戻らないと。
僕は彼女をおぶって戻ろうとする。
「お兄さん、ちょっと待ちや」
そうだ、このままでは食い逃げになってしまう。
「すまん、金はいくらだったけか」
「そうじゃない、なんなら金は要らない。だが、その彼女さんを助けてあげるには早く寝かせないとだろ? 宿まで遠いいのか」
”コクリ”
「じゃあ乗っていけ、人力で動かすような屋台ではないからな。助手席に乗れ。連れて行ってやる」
僕は軽く会釈だけをして、屋台についている運転席の助手席に乗せてもらう。移動中はなんども彼女がうなっていたがなだめつつ宿へと向かう。店主とは特に会話は交わさず。
宿に着くと軽くお礼だけを伝え、皆のいる部屋へと向かう。寝てしまっているかもしれないがやむをえない。ネモ君なら回復魔法が使えたはずだ。なんとかなるだろう。
「ネモ君はいるか?! アーネが!」
「し、師匠……。こんな夜中にさすがに大きい声を出しすぎなのですよ」
「そ、それはもうしわけない。でも、アーネが高熱でな。うなるぐらいで」
「それでこんなに焦ってきたんですね。少しくらいなら僕の回復魔法で何とかなると思いますが」
「思いますが……、ってなにかだめそうなところがあるのか?」
「いや、僕も同じようになったとき、師匠は心配してくれるのかな、と。」
こいつは意外とこういうところがある。まあ、それがまたかわいいのではあるのだが。って、いまはこんなことを考えている場合ではない。
「もちろん、考えてやるよ。とりあえず今は」
「わかっています。そうですね、ちょっと見てみますね。あ、今度僕は体調を崩してみようかな……なんて。」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでもありません」