宿屋
さあ、次の人こそ今回の真の黒幕と言っても過言ではないだろう。ここに黙ってくるわけがないと思うがどうやってくるのだろうか…。
山田が連れてくるのをおとなしく待っているとドア越しに徹底抗戦をしている様子がうかがえてくる。おとなしく来たくない理由が沢山あるのだろう。
「おい、山田! やめろおおあ! この部屋にはぜっっったいにはいらないのです! だか、、、、や、やめっろおおおおおお!!」
「俺だって怒られたんだからお前だけなしはずるいからな? だから抵抗はしないで…」
「も、もうこうなったらやるしかないのです。最強の魔法を…」
黙って聞いていたが成人男性と少女が同じ次元で怒られるって…。しかもそれを理由に連れてこようとしている山田の作戦もまたなんとも。って宿屋の中で魔法だけはっ!
間に合わなかった。話を聞くとこの一体が消えるほどの魔法を使ったらしいのだがなんとか最小限の被害で収まっていた。この近くにアーネと同等の魔法使いがいるのだろうか。日本人が多いこの街では魔法使いは少ない。街を一人で歩くものならすぐにちやほやされてしまうような街なのに誰も周りに囲いがいないとはうまく隠れているのだろうか。
とりあえず、壊してしまったことを報告し謝る。
「ほんっとうにすみませんでした。うちのアーネがつい魔法を打ってしまって」
「魔法使い様がこちらで魔法をお使いになったというのですか?」
彼は顔をゆがめ、少し考えた後。
「それは本当ですか! しかも国王陛下直属の魔法使い様で魔女っ子ではありませんか! これはこれは! ここはもう観光名所として史跡にするしか…そうすればいくらもうけが…」
なぜか許された。本当にこの街は魔法使いに弱いというか。しかし、彼は魔女っ子で喜んでいたのだが需要があるのか?
ともあれ許されたことなので新たに部屋を借りることにし、その部屋に彼女をしれっと連れて行く。最大級の魔法を打ってしまい、抵抗する力もあまり残っていなかったようで簡単に部屋へと連れて行くことはできたのだがこの状態で説教をするのはなにかとても良心に傷が付くような気がしてしまった。
「ったくお前はいっつもずるいよなぁ」
「なにがずるいというのですか。我は疲れているのですよ? もう少し気を遣ってくれてもいいのです」
「なんでこれから怒られようとしていたやつにそんなことしなくちゃいけないんだよ」
「そんなことを言いながら何も怒ってこないではないですか。佐藤のそういうところ好きなのですよ?」
彼女は少し、頬を赤らめながらそういった。照れているのだろうか、いや、ただ最大級の火力のある魔法をつかったからだろう。ったく。
「今回だけだよ」
佐藤、気づいてよ!