落ち着き。
前回、死刑直前で飛び入り参加をしてきた女性がいた。名前は寺田幹葉。忘れてしまっている方もいるかもしれないがここでやっている計画の班長である。初めて会ったときは、物静かでおとなしい人だと感じていた。しかし、本性は違ったのだ。その強気の性格で場の雰囲気を一転させ、山田の死刑を逃れることが出来たのであった。
「寺田班長…! ほんっとうにありがとうございました。来てくださらなかったら山田がどうなっていたことか」
「そ、そんなことないですよ。私は偶然来ただけですから…」
さっきまで放っていたオーラとは全く違い、まるで別人のようである。
「えっとさっきまでのは…」
すぐに余計なことを聞く、山田。命の恩人に対して何を言っているのだろうか。
「あ、いや、そんな。はい。たまに出ちゃうんですよ。でも、たまにですからね? たまに」
たまにだとしてもあれが素の性格なのだろう。周りにいた人たちが全員おびえるほどなのだから。彼女はあまり怒らせないようにしようと心の中で誓う。
「あれって素の性格っすよね? めっちゃやばかったっす! おかげで助かったけど殺されるかと思っちゃいましたよ」
はい、言っちゃった。言ってはいけないことを言った。すぐに禁忌を犯してしまう彼の性格はなんとかならないものだろうか。
「山田さん? もう一度あの台に立ちたいんですかね? いいんですよ。皆さん楽しんでくださると思いますし…」
彼女はそう言うとにっこりと笑う。しかし、その笑顔の中に感情は一つもこもっていなかった。というか殺意すら感じてくる…。
「え、あ、その…。」
「あ、幹葉さん! 我はとてもかっこよかったと思ったのですよ! あれこそ我の求めているかっこよさ! ぜひ、もっと見たいのです!」
「尊敬するような物じゃないですからね。でも、そう言われると照れますね。ありがとうございます。で、山田さんはどうされますか?」
「大変申し訳ありませんでした」
よし、アーネ。いいタイミングでナイスフォロー! 下手に命を消費しなくてすむ。しかし、本当に怒らせてはいけないな…。
「というか佐藤さん! こんなところで油を売っている場合じゃないですよ! せっかく作業準備が進んでいるのに本部長がいないと!」
「そういえばそうだったな。僕って本部長だったっけか。ここ数日誰かさんの件で頭がいっぱいだった物で」
「それもそうですね。では今日はゆっくりされてからでいいので明日の朝九時にギルドに来てください! そこで詳しい説明をしていきたいと思いますので!」
「おう、分かった。とりあえずちょっとだけ休ませて貰うよ。おのおの話したいこともあるしな。特にアーネちゃん」
「え?」
とりあえず一段落。