土下座
山田が処刑台へと上がる。彼が一歩ずつ進むたびに観客の熱気が増していく。
「罪をつぐなええええ!!」
「なめたことをしてるんじゃねー!」
やめてくれ。彼は確かにやらかしたかもしれないがそこまですることなのか…。誰か。だれか彼を…。
「お前ら…。なにしとんの?」
熱狂に包まれていた会場全体が一気に静かになる。何が起きたのだろうか。声が聞こえた先に視線を向けると。
「みなさん、すっごく楽しそうなことをしていますけど何しとるんですか? 誰か説明して貰っていいですかね」
彼女は…ここの女性班長の寺田幹葉だ。彼女と接したのは数回しかないのだがこんな子だったろうか。もっとなんかもじもじしているような記憶なのだが…。
しかし、周りはなぜかおびえているように見える。たしかに声を上げる女性は珍しいとは思うのだが…。
「おい、幹葉さんだぞ これは早くここから逃げた方がいいかもしれないぞ」
「そうだな、あの人に見つかったらどうなることやら…」
こっそりと席を離れていく観客たち。彼女はそんなに怖いのか?
「あ、寺田班長ではありませんか。どうされたのでしょうか」
この刑を企てていた男のリーダ格の男ですらヘコヘコし出している。さっきまでの威勢の良さはどこへやら…。
「あ、お前か。で、なにをしておるのだ? ノコノコと私の前に出てきたのだから説明が出来るのであろう。こんなに人も集まっていて、盛り上がっていたのだからさぞかし楽しいイベントをしていたのであろう?」
詰められている彼は、遠くからでも分かるほど体中から汗が出てきている。
「ほう、黙っておるがどうした? 楽しいイベントなのであろう? はよ、説明してほしいのだけども。それとも話せないというのか?」
彼の汗の出方は一層多くなっている。
「私は何も知らないんだけどな? そこに縛られている彼と同じ立場になれば楽しめるのだろう? それならお主もそうしてやろうかな」
「あ、いえ。えーっと。はい…」
「誰の許可を取ってやっていたのか?」
「だって、あいつはデータを消去したんですよ?! 出来の良かった。あのデータを! これは大罪に…」
「ほほう。では、私が持っているこのディスクはなんだと思う? バックアップを一つしか用意していなかったお主も同じく同罪よな? ということはだ。彼と同じ目に遭うべきだと思うのは私だけか? そうだよな? 観衆のものたちよ! それとも、お主らも同罪か?」
「「おおおおおおおおおおお!!!!!!」」
「佐藤っ! このおなご、我は好みなのです! こういうちょっと痛くてかっこいい話し方をするのは我の理想なのです!」
「自分で痛いって…ああ痛いから! 痛い、やめてくれ、ごめんって」
アーネの琴線にどうやら触れたようだ。こんなに沢山の観衆の前で堂々と出来るのはすごいと思う。
「さあ、周りの反応は見えたのだろう。お主もやるよな? やらない…いや、やれないというなら土下座して彼に謝ってもらおうか!!」
「い、いや。やれない…というわけでは…ないが…。今回は特別に許してやるっ…!! こいつを解放しろっ!」
「お主…。やり方が違うよな。お主が頭を下げるんだよなっ!!」
彼女は男の頭をつかみ、地面へとこすりつける。彼女のあの不敵な笑み、こんなにも怖い物だったのか。それを横でキラキラした目で見ているアーネ。君はこうなりたいのか?
「さあ、早く彼に謝ってもらおうかっ!!」
「す、す、すいませんでしたあああああ!!!」
話のテンション変わってきましたね!!笑
そろそろいつもに戻りますよ!