終わり。
「山田たいちさんで間違いないですね? ご同行お願いします」
やはり、来てしまったのか。この騒ぎがあったのでは警察が来てもしょうが無い。しっかりと包囲をされてしまっているので、逃げることも出来る状況にはない。
「おい、佐藤。囲まれちまったよ。どうすればいいんだ。ここで捕まったら殺されるんだろ?」
「やっと酔いが覚めたみたいだな。いまさら遅いんだけどね」
「遅くてごめんな」
彼は珍しく神妙そうな顔をする。さすがに自分の命がかかってくると少しは真面目になるのだろう。どうすればいい。ここで逃げる? しかし、しっかりと包囲されている時点で逃げられる可能性はない。だが捕まった場合は確実にこいつが殺される。もう無理なのか…。
山田を覗いた他のメンバーは特段、罪に問われていないので捕まらないが彼一人は着々と手錠をかけられ連行の準備をされていく。
「佐藤先輩…どうするんですか! 山田先輩捕まっちゃいますよ! 死刑ですよ!」
「分かっている…分かっているんだけども…」
悩んでいる間に彼は警察に連れて行かれてしまった。なにも思いつくことが出来なかった。
その後、部屋に戻った僕たちに会話は一言もない。それもそうだ。ここまで紆余曲折がありつつも僕たちの大切な仲間が一人連れて行かれてしまった上に殺されてしまうからだ。
そんな沈黙が続き、日が開ける。誰とも会話をすることはなく、そのまま皆で刑場へと向かう。せめて最後ぐらいは…。
この街では刑の執行は一つのイベントのようで沢山の人が集まっている。これでもこの街にいるのは日本にいた人たちばかりのはずなのに。異世界に来てしまうと倫理観が変わってしまうのだろうか…。
「さあ、皆様。ひっさしぶりにこの時がやって参りました!」
「うおおおおおおお!!」
会場は最大級の熱気に包まれている。
「皆様もこの日を楽しみにしていたのでしょう! 今日の主役は極悪非道、罪を犯した上に逃亡をしていた大罪人! こいつを処罰しない理由がないでしょう!」
「そうだそうだ!!」 「やっちまえ!!」 「犯罪者を許すな!!!!」
会場の熱気はさらに盛り上がりを見せる。
「では、登場していただきましょう!」
「うおおおおおおお!!!!」
もう救えない。ここまで来てしまったら救えない。ごめん。
鬱展開で終わるのはじめて?