裁判所
「お待たせしました!」
彼女は勢いよく扉を開き、大声で叫ぶ。周りからの厳しい視線が向けられる。彼女の天然が全力発揮をしてしまう。気づいたときにはもう遅く顔を必死に隠して僕の後ろに隠れる。
隠れるのはいいのだが僕とてここがどこで何をするのかすら分かっていないのだ。そう思いながらあたりを見渡すとそこはどこか裁判所のような雰囲気がある。そして部屋の真ん中には山田が一人ぽつんとたたずんでいる。
んんんちょっとまってくれ。ここが多分、裁判所のようなところだと言うことは理解した。そして多分僕は証人だがなんだかで呼ばれたのだろうと言うことも薄々感じてきてもいる。しかし、だ。なぜ彼が。いや、思い当たる節は沢山あるのだが。
「えーっと僕って何で呼ばれているんですかね…」
辺りがざわつきだす。それもそうだ。急に扉が開き、人が入ってきたと思ったら無神経女と何も知らない男が二人なのだから。そこに声が渋くて低い裁判官らしき男が
「知らないのでここに来たのですか?」
もちろん
「はい」
さらに辺りがざわつく。
「では、なぜあなたは何も知らないのにここに来たのですか」
「今野が…この女性が急いで来てほしいと頼んできたもので」
今野の襟をつかみ前に出す。さっきのがそうとう恥ずかしかったのか顔を未だに隠しつつ持ち上がっている状態で足も丸めている。
「そうかそうか…。では教えてやろう。お主はこの被告人の弁護士を務めて貰う。理由としては前任からの熱い推薦とだけ伝えておこう」
はいはい、しょうにn…え、弁護人?? いやいやいや無理でしょ。この街のルールなんてなにも知らないしできるわけがない。というか僕になんか押しつけてくる前任の弁護士とは一体…。
前任の人がここにまだ残っていないかとキョロキョロ探していると先ほどまで捕まれていた今野が床を這いながら出口の方へと向かっているではないか。逃げ出される前に再度捕まえる。
「今野君、どこに行こうとしているのかな」
僕と顔を合わせようとしない。
「もう一度聞くよ? どこに行こうとしたのだい?」
それでも顔を合わせない。さらに出口に向かって必死に手足をバタバタさせている。
「聞き方を変えよう。僕を指名したのは君かい?」
それでもこちらを向かない。
「よし、ちゃんと答えたら逃がしてもいいかも」
そう言うと僕の手から抜け出したがそれはそれはきれいな土下座をしながら
「私が推薦しました。なにも言わなくて大変、大変申し訳ありませんでした!」
裁判には一ミリも進まないという。。。いつも通りですねっ☆