モーニングコール
「佐藤せn…。佐藤先輩!」
その日の朝は荒々しい女性のモーニングコールで始まった。早朝に終わった地獄のような会議後、倒れるように眠ってしまった僕であったが疲れがとれるよりも先に起こされてしまった。
「誰だよ、僕は疲れているんだ。もう少し寝かせて…」
「起きてくださいっ! 山田先輩の裁判が始まりますよっ!」
「なにを寝言を言っているんだよ。あいつはまだ見つかっていないし、裁判って。さすがに信じられない嘘はつくものじゃないぞ?」
まさかそんなことがあるわけない。紙っ切れ一枚で、だよ。まさかそんなわけ。僕は無視をしてもう一度布団をかぶる。
「何してるんですか! 先輩は山田くんの弁護人に指定されているので行かなきゃだめですよ!」
彼女はそのまま僕のことを布団から引きずり出す。
「やめて! まだ寝るの! あんな意味もなく時間のかかる会議に出て疲れてるの!
勝手にして!」
「それだと佐藤先輩の真面目キャラが崩壊します。ただでさえ、ろくな人がいないのに…」
「それにお前は含まれているのか?」
「え、なにを馬鹿なことを言っているんですか。寝言は寝て言えです」
いつからこの子、こんなに口が悪くなってしまったのかしら。この世界に来てからというもの、山田といい、今野といい性格が変わってきているような気がする。まあ、今までは仕事でしか関わって来なかったから知らなかった一面を知っているのだろう。
「さすがに先輩にその言い方はないだろ。もういい、目が冷めた。どこに行けばいいんだ?」
「じゃあ、後輩の女子の前で眠いーとかわがままなこと言うのもないと思いますよ?」
「はいはいそうですね。気をつけますよー。で、どこに行くんだよ」
「えーっと…どこでしたっけ」
こいつはいつも大事なことを忘れてしまう。きっと、ここに来た理由すら忘れかけているのだろう。
「どこって…。とりあえず準備だけさせてくれ。弁護って言ったって僕はなにをしたのかすらあんまりわかっていないくらいなんだが…。さすがに今のこの格好のままでは流石に失礼だからね」
「早くしてくださいね。急いで連れてこいーって言われているので」
本当に急ぎなのだろうか、この案件。とりあえず、正装にだけ着替えて向かおう…って
「着替えるんですけど…くつろいでるのやめて出てもらってもいいですかね」
「あ、すいません。つい他の人がいないと気が楽で」
「一応先輩だからね? 僕。もう少しは気を張って…」
「いいじゃないですかー、もうこっちの世界に当分いるんでしょうし、日本にいた頃の先輩後輩とか関係ないですよー。この世界の滞在歴は同期ですからね」
「歴っていうほどいないからね」
で、この子はいつ出ていくのだろうか。本当に急ぎで行かなくては行けないのだろうか。本当にこの回は必要だったのか。色々考えさせられてしまう。
お久しぶり過ぎますね。
この回を執筆したのは九月のはじめという…。すみませんでした。