女性班長
山田を探しに行った三人を見送った僕はロープウェイ建設の本部のあるギルドへと向かう。本部を立てて、この街を出たわけではないのだが街の人たちが作ってくれていたようでギルドを指す看板がすり替わってしまっている。これでいいのか疑問ではあるが彼らでやったことだしいいのだろう。ということはあのギルド改修しても大丈夫なのかな。そんなことを考えながらギルドもとい、建設本部へと足を運ぶ。
「佐藤本部長が帰ってきましたよ!!」
知らないうちにこの現場責任者になっているようだ。本部長…、いい響き。しかし、よく丸出しは良くない。ここは抑えて。
「本部長って…なんですかそれって。僕がそんなのにつくなんていいんですかー?」
よし、我ながらうまくごまかせたと思う。
「私、初対面で言うのはどうかと思うのですが…。久しぶりにそこまで欲に忠実な人見ましたよ。まあ、それくらいあったほうがこんな無謀な計画の長にはピッタリですよ」
僕は顔を真っ赤にした。恥ずかしいから! 初対面でしかもこれから上司に当たるだろう人物にそんなこと言わないで! 恥ずかしいから!
「そ、そうかな…。そんなつもりはなかったんだけどな…」
声が上ずるのをなんとか抑えようとしながら反論をする。
「もういいんですよ。その代わり私以外の前では見せないでくださいね?」
彼女は不敵に笑いながら話を続ける。そんな彼女に僕は苦笑いでしか返答が出来なかった。
「そう言えば私の自己紹介をしていませんでしたね。私の名前は寺田幹葉と言います。新幹線の幹に葉っぱの葉で“みきは”です。決して “かんば” ではないですからね? 間違えないようにお願いします。一応、ここでの技術班長を務めていますので今後ともよろしくお願いします」
女性で技術班の班長か…。来たときはひょろっとした男や動いていないと死んでしまいそうな筋肉野郎な男ばかりだったので意外である。この街、日本にあったとしても相当進んでる街になるよ。
「女性で班長だなんてすごいね。この街を出る前に仕切っていた人がリーダー的存在になると思っていたから驚きだよ」
「あ、あの人ですか。いつも仕切りはするんですけどね。それで終わりなので。私が選ばれた理由は…」
最後の大事な理由が口ごもってしまい何を言っているか聞こえない。きっと能力評価なのだろうが彼女の口からしっかりと聞きたい。
「ごめんなさい、聞こえなかったのでもう一度言ってもらってもいいかな?」
「え…。だから選ばれた理由は…」
やはり聞こえない。
「もう一度…」
「なんなんですか! 聞こえないんですか! さっさと仕事に取り掛かりますよ!」
彼女を怒らせてしまったようだ。僕、なにか悪いことしたのかな。
みきは…かんば…。好きな歌手から名前を取ったうえでネタまで使ったなんてまさかね??