喧嘩
大方の計画は段取りどおりに行きそうになった。今度はアーネの父親でもあり、ビバーチェの領主である彼に話をつけに行かねばならない。
いまや、大規模プロジェクトの建設予定地となったトンネルを下っていく。今回は分担をすることにした。
「僕とアーネはビバーチェに交渉に行く。山田と今野、ネモくんはここに残っていてほしい。山田とかは協力できるだろうしな」
「なんでですか師匠!! 僕も一緒に連れて行ってほしいです!」
「私はここでいいですよ」
「今回はなるべく少ない人数で行きたいんだ。何なら僕一人で。でも、アーネの父親が相手だ。だからアーネだけ連れて行く」
決して全員で行くとろくなことが起きない気がするからとかそういう理由ではない。
「なんですか! 師匠は弟子の僕よりこのロリっ子を連れて行くんですか!!」
「ふふふ、我をロリっ子というなどまだまだ!」
ロリっ子も何も君たち子供でしょ。日本だったら知らない女の子と二人は警察案件ですから!
「僕も連れて行ってください!絶対に役に立ってみせますから!」
「役に立つって言われてもなぁ。今回のは城壁外のことだし、そんなに苦労しないと思っているんだよね。だから今回は…」
「ふふふ、佐藤はおぬしのことを我いかだと言いたそうにしているのですよ!」
「!!」
え、何言ってるのこの子。嘘はだめだって!!
「師匠、僕ってそんなにだめですかね…」
見るからに落ち込んでいる。
「そんなことないぞ?」
どうにか元気づけようと絞り出した答えがこれ。もっとなかったのか。しかも声が上ずってしまった。
「本当ですか…。でも声が変になっているじゃないですか。やっぱり…」
どうしようどうしよう。頭を抱えたいほど悩んでいる横では何故か勝ち誇ったかのように立っているアーネ。ぶっ飛ばした。勝てないけど。
「我とネモとの戦いに決着がついたのです! これからは…」
なぜ、彼女は日に油を注ぐようなことしか言わないのか。性格なのか、彼に対しての謎のライバル心から来るのだろうか。
「そ、そんなことは…!!」
「わかった。ネモ君。君も連れて行こう。これでいいね?」
地のそこまで落ちていた彼の笑顔は今の一言ですぐに蘇った。
「本当ですか!! いいんですか!!」
「佐藤っ! 我のみでなくていいのですか!」
「いいのよ、こんなところで喧嘩されてたら何も進まないし、でも一つだけ条件。絶対に喧嘩しないこと。いい?」
二人は顔を見合わせる。なぜこんなに気があっていそうなのにケンカばかりしてしまうのか。どうせだ、これを気に仲良くなってもらおう。二人はこれからも大切な僕のパーティーメンバーなんだから。
ということでついに百一話スタートです!!なんか百に一って漢数字だと見にくいですね。でもこれもここまで続けてきたこだわりなので変えません!
どうぞよろしくおねがいします。