真実(後編)
「佐藤さんや、誰の命令でやっているのかは知らないが命が惜しけりゃこの計画…、そして日本人としてとして生きることはやめときな」
この人の言っていることはもっともだ。過去にこのようなことがあったのに僕たちが生きて帰れる保証はない。確かに戻れるなら戻りたい。しかし、この世界がそんなに嫌な世界か? なんならここに籠ってしまえば電子機器もあるし、日本にいたころとほぼ同じ水準で生活をすることができるだろう。というかなぜ僕は日本に戻りたいんだ。仕事か、それだけのためなら…
「我が口をはさむのは良くないかもしれないがちょっといいか」
黙ってはなしを聞いていたアーネが口をはさむ。
「我はそこそこ名の知れた魔法使いとして生きている。だが、昔の人の気持ちが分からないのだ。魔法は魔法。おぬしらの技術は技術。それぞれ生き方が違う。せっかくいい技術であるのだ。しかも、今回の計画は国王様のおしるしだってある。昔の人をぎゃふんと言わせてやればいいのではないのか」
「姉ちゃん。そうはいっても」
「しかもその騒動があったのは遠い昔の事であろう? なにせ、我とてその話は初めて聞いた。自分たちが見たこともない世界に籠っているだけではなく、開いてみるのもいいかもしれないぞ」
「だがもし…。また、同じことが…」
「今の国王なら大丈夫だだ。内容もよくわかっていないのに佐藤たちの提案を丸呑みしているくらいだ。あと、新しいものが好きだからな」
「分かった。協力しよう」
きっと彼はこの人たちの中のリーダー的存在なのだろう。今の発言で安心したのだろうか。後ろで黙って聞いてきた他の技術者が僕が僕がと協力を申し出てきた。
「あ、初めまして。僕は鬼瓦武人と言います。大学では設計を主にやっていたので僕なんかでよければ。日本にいた時は知識だけはあったのですが仕事をもらえるほどではなくて…」
「私は…」「わたくせは…!」「俺様は…」
よし、この人数がいれば計画は成功に近づく!!
しかし、さっき聞いた過去の話…。城に戻ったら国王に聞いてみるべきだろう。何かを知っているかもしれないしな。
「悪魔の使いか…。冷静に考えると悪魔も魔法を使うだろうし、化学は悪魔こそ反するものじゃないのかな…」
山田にしては冷静な分析だな
「我はこの街のものを見ていて思ったが興味深いものばかりだと思うのだが」
「まあ、これが発展しすぎたら魔法が滅びてしまうと思ったのだろうな。しょうがないだろう」
「しかし、隣の国ってそんなに血の気が多いんですね。今のところ、隣の世界に触れることがないのでよくわからないですけど」
「隣の国か…。あそこは魔法で発展しているからな。我もあまり得意ではないのですよ」
「この国で有力な魔法使いのアーネですら苦手とは…気難しいのか?」
「そう言うわけではないのだが…。まあ、いい。佐藤は早く説明でもしてくるのですよ」
僕はアーネにせかされるように技術者のところへ向かう。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
しっかり後編来ましたね。安心しました。単純な能天気なコメディでは終わらせたくないですしね。隣の国…。名前は出てくるのか! その正体は!!