その4 荒川区 斉藤湯さん(2018.1.30)
さて、今回私が選んだのは、スタンプラリーに合わせまして、またまた故郷であります荒川区でそぞろ歩きであります。
社会人一年目を過ごしたのは、実は荒川区と台東区の境目なのであります。
今でこそ、谷根千(谷中・根岸・千駄木)とか愛称がついてぶらぶら街歩きの名所化しておりますが、くっそ生意気な若造だった私が通勤していた頃は単なる下町でありました。
いずれ書きますが、私は典型的な劣等生で、いつも赤点ギリギリ。
出欠が厳しい授業だけ顔を出し、サボりまくり。
その時間、何をしていやがったかというと、バイトと部活だったんでありますよ。
とはいえ、理系の大学。
実習があったり、先輩や指導教授のデータ収集(顕微鏡で菌の繁殖を観察とかの地味な作業)がありますから、バイトは夜が中心。
粗暴犯が多い物騒な地域の夜間のコンビニバイト(番犬か)をメインに、いろんなバイトを掛け持ちしておりました。
いやほんと、いつ寝ていたのかと思わせる生活でありましたが、幸いなことに浪人も留年もせず、平凡な成績ではありますが無事卒業できたわけです。
で、就職したのが、ここ日暮里駅が最寄りの会社。
私が就職した当時は、日暮里舎人ライナーなんざぁございませんで、ビル群もなく、吹曝しの殺風景な駅でありましたよ。
なぜが、いつもジメジメ湿っていやがる苔くせぇ細い道を出て、住宅とお寺さんを抜けると、そこは谷中墓地。今じゃ、小洒落た看板なんぞが立っておりますが、当時はそんなものありゃしません。
そうです、谷根千の「谷」の一部なのでありますね。
ここは、桜並木になっておりまして、季節には桜のアーチがかかります。
物騒な地域で用心棒みたいな夜間バイト(当時はコンビニ強盗が多かった。採用条件が「喧嘩強そう」って……)を4年も続けて、すっかり荒んじまった、くっそ生意気な若造だった私は、実習中もくっそ生意気で、「叩き直したるわ」という感じで一番過酷な支部に飛ばされたわけでありまして、私の最初の任務は、花見の席の確保でありました。
有名人が多く眠っている谷中墓地。墓地の真ん中には駐在所があります。その駐在所の隣が公園になっておりまして、例年そこで花見の宴が開かれるのが、伝統行事だったのです。
噂によりますと、有名人の墓前で一部の熱狂的なファンが命を絶つ事例があるそうでありますよ。それを防ぐという理由で、この駐在所あるとか。交番じゃなくて、駐在所ですからね。
まぁ、昼から夕闇にかけて、花冷えの墓地に留まる新人を怖がらせるためのデマかもしれませんがね。
『鬼』だの『氣』だののお話を書いているくせに、そっち方面は全く信じておりませんから、効果はいまいちでありますが、寒さには参りました。
しんしんと冷える「花冷え」の中、コートを体に巻きつけ、マフラーを頬かぶりして、虚空を睨んでいたことを思い出します。
新人からベテランまで、もれなく怖がられる名物部長さんが、この支部におりまして、今ならパワハラ事案になりそうなことも、罷り通っておりました時代、平気で拳が飛んだものです。怒鳴られるなど、日常茶飯事でありましたよ。
なぜが、この部長さん、私の事がお気に入りで、よく鞄持ちの随行員に私が選ばれました。
で、手土産を持っていくのに、老舗の和菓子屋さんを使っていたんですが、相方へのお土産にと思い、記憶をたよりに、向かってみます。
場所は思い出せたのですが、取壊されておりました。
ツブれたのではなく、改装中ということで、どうもビルになるらしいです。
あの、味のある外観が見れないのは、少し寂しい気がいたしますが、健在であったのは良いニュース。
改装が終わったころ、お邪魔します。
仕事が終わった頃の、我々のたまり場だったのが、日暮里駅前の安酒場群。
今は、再開発ですっかり撤去されておりまして、「よいのすけ」という酒場を探したのですが、見つからず。煮込みの旨さの目覚めたお店でありました。
金がない時は、代金を誤魔化したりしておりましたので、その罪滅ぼしに飲食して、「お釣りはけっこうです」とやりたかったのですが、残念。
健在だったのは、手打ち麺で有名な『馬賊』さん。
落ち込んだ時など、一心に麺を打つ職人さんを見て癒されていたのを思い出します。
そぞろ歩きで、体も冷えました。
向かったのは、日暮里駅に近い、リノベーション系銭湯の雄『斉藤湯』さんであります。
歴史は古く、創業80年。
私が日暮里界隈をウロウロしていた頃は、渋い外観だったのでしょうが、当時は銭湯に興味がなかったので、存在を知らず。
先日の雪の名残。小さなカマクラが店の外に。
ホテルのロビーみたいな、フロント。
人見知りな私が世間話をする程度には、場に慣れてきたでしょうか。今日は大旦那さんがフロントにいました。多分、ご高齢のはずですが、若い! 声も張っています。
ゆっポくんが当選したことを自慢いたしました。としぞーさんのハンコ展の感想とかも。
会場の「ゆいの森」は行った事がないそうで、今度、お孫さんと行ってみるそうです。
二人して「ゆいの森」の単語が出てこないのはご愛嬌。
「ほら、町屋駅の近くのアレ」
「そうそう、新しくなったアレ」
なんて会話を致しました。
更衣室はきれいで、手荷物を置くタイル張りの棚が更衣室中央にあったりして、本当に使いやすい空間です。
百円玉をお忘れなく。ここは、コインロッカー方式で、百円玉が必要です(この百円は返却されます。回収もお忘れなく)。
天井から降るタイプのシャワー。
半露天の円形の風呂は、マイクロバブルで白濁しています。
カリッカリリと、ガイガーカウンターみたいな音がしますが、これがバブル発生装置の噴出孔なのでありましょう。
高濃度炭酸泉は化粧水なみの軟水仕様。ゆったりと浸かれるややぬるい温度で、皆さんカピバラ化しておりました。
ジェットあり、高温風呂あり、水風呂ありで、温熱交互浴愛好家の私も大満足。
下町名物の「背中に絵」のおっちゃんもおりました。
見た記憶がある図柄なので、前回訪問した際にもおられた方でしょう。
更衣室で、ぶらぶらさせたまま、モップで床を自主的に磨いておりまして、斉藤湯さんを愛しているのだなぁとしみじみ。
すっかり長湯しまして、外はもう陽がとっぷり。
着替えの途中「ああ、『ゆいの森』だ!」と思い出しましたが、フロントはイケメン若旦那に変わっておりました。
若旦那にも、ゆっポくん当選を自慢して、そぞろ鷹樹は日暮里の町に消えて行ったのでした。
今回の画像データは 鷹樹烏介ツイッター https://twitter.com/takagi_asuke
を参照ください。