連載10回記念作品 富士総合火力演習予行(2018.08.23)
苦手克服のため、書き始めたエッセイですが、回を重ねること10回となりました。
読むのは好きなのです、エッセイ。ですが、書くのがダメ。もともと警戒心の強いノラ猫みたいな性格なので、自分をさらけ出すのが怖いのでありますな。
でもまぁ、未だに怖いのでありますが、モノカキはもともとがっちょりぱっくりと己を晒す稼業。
「かっぶりつきの~♪ わっかいお兄さん~♪ ゆっくり見てね~♪ ハイどうぞ~♪」ってな具合でありますよ(モトネタ、若い人にはわからんだろうなぁ)。
ほんでもって、10回目は節目として、何か特別な事をと考えていたんでありますが、ご縁がありまして普通じゃ手に入らないレア・チケットが手に入ったので、大人気『富士総合火力演習』の予行に行ってきた体験を書いちゃおうかと。
何でも2018.8.25の本番は、応募総数15万! 会場は5千ちょいで満員ですから、約30倍の倍率という。しかも、本番と同じ「予行」は更にレアだそうで、本来は
「鷹樹さん、行く?」
「うん行く~」
なんどと気楽に受けてはいけない感じでした。
知らなかったんで、気楽に受けちゃいましたけどね。
「つつしんでお受けいたします」
……と、拝受せんとバチが当たるチケットなのでありました。
「一名、確保したよ~」
という連絡を頂きました。そこに参加の手順が書いてあります。
集合場所は、グランドヒル市ヶ谷。今は東館が工事中ですが、相方と結婚式場の見学に行った場所であります。
ここは、もともと防衛庁(今は『省』)の敷地だったこともありまして、自衛隊関係者は割引利用できるのであります。
当時の鷹樹は、危機管理担当の教育セクションにおりまして、防衛庁防衛研究所主任研究員の方と一緒に某プロジェクトに参加しておりました。その方に
「僕の名前を使えば、結婚式場割引になるよ」
と、お教えくださったのであります。生憎、日程が合わずに断念いたしましたが、壁に礼装の自衛官の写真とドレス姿の花嫁さんのパネルが例示されていたりして、「制服二割増し理論」はガチだなぁと思った次第。みんな、かっこよかったですぜ。
そんなこと、思い出しながら集合時間を見たら朝の6時30分集合! 早い!
私は最低20分前に集合場所に居ないと情緒不安定になるので、6時10分にが現地におらんといけん。
で、電車調べたら、始発から5時台は、全部『御茶ノ水駅』止まりでした。市ヶ谷まで行く始発電車は6時04分。
間に合うけど、時間の余裕がない。行ける所まで行って、そこからタクシーという手段も考えましたが、早朝でタクシー拾えない可能性があります。
それで、前泊を決意したんでありますね。
まずは、グランドヒル市ヶ谷に連絡。移動時間ゼロ、楽ちんだねと思ったのですが、満室でありました。
次に連絡したのは、アルカディア市ヶ谷。
ここは、私が結婚式を挙げた場所なのであります。
ついでに申し上げますと、両親が結婚式を挙げたのもここ。
実は、母の親友の旦那さんが、当時ここの結婚式場のマネージャーでありまして、貧しかった(……っていうか、当時の日本は全員貧しかったんです)私の両親のために色々便宜を図って下さったんですね。
その方、某大手ホテルグループに引き抜かれまして、銀座店の総支配人まで勤められました。
子供が女の子ばかりで男の子が欲しかったらしく「うちの子になれ」と、遊びに来たり行ったりするたびにそう私におっしゃっていました。
私の元の職場にも近いので、土地勘はあります。
市ヶ谷駅前には文教堂書店さんがありまして、よく会社帰りに寄りました。
懐かしくて立ち寄りましたが、まだ『ガーディアン~』置いてくださっていました。
かつて、通っていた本屋さんに自分の書いた本が並んでいるというのは、なんだか嬉しいような、申し訳ないような、不思議な気分であります。
ぶらぶら歩いて、グランドヒル市ヶ谷を下見。東館が改装工事中とあったので、出入り口がどうなっているか、偵察です。西館がそのまま通常営業だったので、このあたりが集合場所と確認。
その帰りは、近くにある自衛隊アンテナショップに寄ってみました。
徽章やミリメシなんかも売っていて、面白いお店ですよ。お近くにお寄りの際はぜひ。
夕食は、勝手知ったる市ヶ谷の居酒屋で。
昔からある老舗のチェーン店で、謎味のドリンクが有名です。
名前はラーク。それを注文しました。当時は、へべれけになるまで飲んでいましたが、今は二杯程度でやめておきます。
昔はもっと甘みが強かったような気がしました。飲みながら薄いなぁと感じました。当時は味わって飲むなどしなかったので、記憶など曖昧なものですから、所感はアテになりませんが。
朝早いので、早めに就寝。台風が接近しているのと、何もない原野ということも考慮して、埃をかぶっていた山用の装備を持ってきています。
小物は、全部コンビニ袋かジップロックに収納。
財布は、防水タバコ入れに変えておきました。タバコやめたので、これも埃かぶって倉庫に眠っていました。財布の中身をこちらに移しておいてあります。
カメラは、水中撮影も出来る仕様のもの。性能はいまいちですが、防水はばっちりです。
TVで、気象情報を見て
「台風、直撃かぁ」
と、唸りながら、眠りに落ちました。
日改まって、8月23日。朝5時に起床。ホテルの食堂はまだオープンしていないので、近所のコンビニで朝食を仕入れます。
缶詰とウズラの卵とおにぎりで朝食。
ザックのパッキングを確認して、いざ進発。
天気晴朗、なれども風強し。
早朝にもかかわらず、人がいっぱい歩いています。
迷彩柄のカバンや、ジャケットの方々もチラホラ。
みなさん「総火演」に参加される方々のようです。
私をお誘い下さった方々の他、いろんなグループが観光バスを仕立てて、グランドヒル市ヶ谷から出発するらしいです。
野戦服姿の自衛官さんが『広報』の腕章をつけて、受付とかしています。
これは、自衛隊に直接申し込みをされた方々の受付らしいです。
『制服二割増し理論』かもしれませんが、肌の露出も化粧もないのに、女性自衛官さんは美人揃いで、気おくれしましたが、親切に「~の受付は、あちらです」とか、テキパキと来客をさばいておりました。
男性自衛官も精悍な感じで、こりゃあモテるだろうなぁと思いました。
「いや、そうでもないっす」
と、はにかみながら答えるとか、最高かよ。
観光バスに乗って、山梨県へ。
世話人の方に『ガーディアン~』のサイン本を献本させて頂きました。
お弁当が配られましたが、朝食は摂ってきて空腹ではなかったんですが、むりやり詰め込みます。
現地は何もないそうで、食べられるときに食べておくという原則に従ったわけでありますよ。
途中SAでトイレ休憩。
現地は仮設トイレしかないそうなので、絞り出します(何を?)
晴天だった東京を過ぎると、曇天模様になり、さぁっと雨が降り始めました。
富士演習場に着くまでに何度か土砂降りになりましたが、自衛官さんが路上で誘導している演習場に入ると、晴れ渡っています。ゆえに、すごい湿気。
第六駐車場という一番遠い駐車場で降りた我々。ペナントを高々を掲げて、森の中を進んでいきます。
一応、足回りはトレッキングシューズで固めておきましたが、正解。
これ、プチハイキングです。
誘導の自衛官さんに混じって、衛生兵さんが走り回っています。
歩いているうちに気分が悪くなる人も出るんですね。
大八車みたいな、車輪付き担架とかありましたよ。
10分以上あるいて、やっと現場に到着。
色んな種類のチケットがあるんですが、我々は『紫チケット』。
このチケットだけ、入口が別になっていまして、アメリカのアーミーや警察関係者や報道関係者と一緒でした。
地面にシートが敷いてあるシート席と、簡易型の観覧席が組み立てられたスタンド席があり、我々はスタンド席でした。
A~Fまでエリア分けされていますが、我々は『A』。
現職の自衛隊幹部や、防衛相のお役人らと同じ席でありました。VIP席ですね。
演習のメインステージの真正面。本当に、いいお席でありました。
儀仗兵に守られて、お役人が臨席。
SP役の女性自衛官さんが、目が覚めるような長身美人でした。姫様かよ。
あたらめて席を見渡せば、スタンド席も、シート席も超満員。
人ごみ嫌いな私が、この一夏にコミケに続いて、二度目の混雑遭遇です。
演習は『前段』『後段』の二部構成で、前段は兵器の紹介と実弾演習。後段は「島嶼部を不法占拠されたのを奪還する」というシナリオでの実戦に近い演習……と、なっています。
10:00 前段が開始されます。
まずは、演習場の説明から。発煙筒があがって、「ここが『二段山』ここが『三段山』、ここが『2の台』『紫の台』です」など、射撃や砲撃の目標になる地形の説明があります。
このあたりから、曇天模様が雨になりはじめ、傘の使用が禁止であることから、皆さん雨合羽を着始めます。
私も、山用の上下セパレートの雨具を着用しました。
特科(昔の砲兵)の99式自走砲の155ミリ榴弾砲と、FH70砲の陣地からの155ミリ榴弾砲の実弾演習から、始まります。
陣地は、遠く離れたところからなので、硝煙しか見えなかったんですが、自走砲(装甲車の上に砲が固定されている戦闘車両、通称SPG)は、泥を履帯で巻き上げ、横陣展開。号令一下、射撃をします。
思ったより、音は大きくないなぁという感じ。
面白いのは、指揮官の号令でした。
「だ~んちゃ~~~く……今!」
その直後に、着弾してドドドンという爆発音がします。わざと、こんなノンビリした言い方しているんだなぁと感心しました。生で聞いてみないとわからんものです。
ヘリのダウンバーストの凄さ。こりゃ、ズラ飛ぶぜという感じです。
土砂降りの雨の中、普通科(昔の歩兵)さんが、泥まみれで匍匐前進とか、「がんばれ!」と思わず手に汗握ります。
圧巻は、やはり90式戦車と最新鋭10式戦車の演習でしょう。
音が違います。土砂降りの雨の中だからこそ、空中の雨粒を跳ね飛ばして、衝撃波が球形に走るのが見れました。
座席から跳び上がるほどの爆音で、実際、私の斜め前の女子中学生は、文字通り跳び上がっておりました。
世話人役の方は、元・機甲部隊だそうで、
「戦闘室は、この音で大丈夫なんですか?」
とお聞きしましたところ、音の発生源より周囲の方がすごい振動と音なのだそうです。
この方、土砂降りに中で弁当を広げておりまして、どっかで見たシーンだなぁと思いましたらガンダムの第08MS小隊のオープニングでありました。
悪天候により、空挺部隊によるヘリからのロープ一本での懸垂下降は中止。無念なり。
休憩をはさんで後段は、シナリオを進行。
敵の揚陸艦とその護衛艦に守られた島嶼部を不法占拠した部隊を排除するというものです。
まず、始まるのが、通信網のジャミングというのが、近代戦の常識らしいです。
通信を分断し、遠距離誘導弾で艦船を叩き、島嶼部の部隊を孤立させて、水陸両用装甲車(通称AAV)により橋頭堡を確保。バイク偵察隊を送り込んで観測して、特科に遠距離間接砲撃を敵を分断。
対空陣地を潰して、ヘリによる部隊増強。
橋頭堡を確保、拡充して、戦闘車両を輸送船で移送。
丘陵部に立てこもる敵部隊を、一斉砲撃で排除……という、陸海空統合作戦によるシナリオでありました。
かつて、AAV必要か? という議論がありましたが、やっぱり必要ですね。
不要論者は、AAVや海兵隊が日本にあると都合が悪い国からゼニ貰っているのかもしれません。
雨でずぶ濡れでありましたが、あっという間の2時間でした。
あとね、雨で冷えちゃったので、トイレ行きたくなったんですが、すごい人でしたよ。
危うく『素敵な宇宙船鷹樹号』統合作戦本部が立ち上がるところでしたが、なんとか間に合いました。
余裕をもって行動した方がいいです。
それに、土砂降りの雨に打たれ続けると、なんだかハイになりますね。
砲撃音に叩かれ、バラバラ鳴る雨具のフードの音や、蒸し暑さや、染みこんでくる雨、水たまりにつかりっぱなし足とか、すげぇ非日常で童心にかえりました。
演習は、この後、自衛隊音楽隊などの演奏に続きますが、我々は省略して北富士駐屯地に移動。
そこで、座学であります。
北富士駐屯地は教導隊の本拠地でありまして、これは、演習する際に敵役を専門にやる部隊なんですね。
従って、迷彩柄も、自衛隊に採用されていない柄を使って、区別しているそうで、装甲騎兵ボトムズでいえば、レッド・ショルダーみたいなものでしょうか。
演習の回数は、勿論日本一でありまして、副隊長さん(名前は伏せます)が講師を務めて下さったんですが、
「間違いなく、我々は日本最強の部隊です」
と、胸を張っておられました。かっこいい。
演習は、高精度のセンサーを全身につけて行うそうで、何処の部位がどのくらい損傷したかも瞬時に判定するそうです。演習の様子を映した資料映像ありましたが、「損耗!」判定された自衛官さんの悔しそうな顔が印象的でありました。スナイパーに狙撃されたらしいのですが、きっと
「くそっ、イモ堀やがって!」
と、心の中で罵っていたかもしれません。
写真撮影はご遠慮くださいとのことで、ここでは許可を頂いて看板と模型と中庭だけ撮影させて頂きました。
顔が映らないよう、ロングショットで昼休み中の自衛官さんを撮影しましたが、普通に仲間とキャッチボールとかしてて、軍服着ている以外は、普通の若者でした。
一部の特定の方々は殺人マシーン呼ばわりしていますが、あたりまえですが、彼等も人間です。
いざという時の覚悟を加味すれば、私なんぞより、よっぽど立派な人間なのでありますよ。
小さな厚生会もあり、ここでは自衛隊グッズも買えます。
私は迷彩柄は興味ないので買いませんでしたが、サバゲーとかやる人にはいいかも。
フェイスペイントがあったので、ちょっと食指が動きましたが、相方に怒られるので、やめました。
ハロウィンとかで。シュワちゃんのコマンドーコスプレにどうぞ。
「来いよ!ベネット!」ごっこが出来ます。
一時晴れたのですが、また土砂降りの雨となり、駐屯地の広報の方に見送られて、帰路に。
このあたりから、雨に叩かれ続けてハイになった状態から、クールダウン。
くしゃみと鼻水が止まらなくなりました。
こりゃあ、倒れるなぁと思っていましたら、案の定でした。
貧弱な私じゃ、自衛官は無理だいねぇと思いながら、あったかくして床についたのでした。
へっくしょい!
あ、銭湯いってないや。
まぁいいか。
適当だと生きるのが楽でありますよ。
これにて、第10回記念作品を終わります。
名前は出せませんが、関係各位に感謝申し上げまして、筆をおきます。
ずびっ(鼻水を啜る音)
※今回の画像は 鷹樹烏介ツイッター
https://twitter.com/takagi_asuke
をご参照ください。