その1 荒川区 竹の湯さん(2017.12.18)
今回は、初回スペシャルということでロングバージョンでお送りします。
サブタイトルは、行ったエリア+銭湯の名前+行った日付にします。
色々とアレかもしれんので、フェイクは入れますが、概ねドキュメントで行こうかと考える次第。
ああ……ついに、始めてしまった。
エッセイは、苦手というより「怖い」のであります。
自分の考察や感じ方を書き記すというのは、頭の中の地図を公開するみたいで、なんだか無防備になった気分にさせられてしまうのでありますよ。
でもまぁ始めたからには、がっちょりとおっ広げていきますぜ。
さて今回、私が「そぞろ歩き」に選んだのは、私の故郷、都内二路線しかない路面電車が走る荒川区であります。(あと一つは東急世田谷線)
正式には『都電荒川線』と申しまして、昔は『チンチン電車』、今は『さくらトラム』という可愛らしい愛称がついております。
『チンチン電車』は、何も紳士諸賢がポロンとしているわけではございませんで、発車の際に二度ベルが『チンチン』と、鳴るからなんでありますね。
『さくらトラム』は、東京下町の桜の名所『飛鳥山公園』の脇を通るからという理屈でありましょう。
まぁ、『チンチン』より『さくら』がよろしかろうという、お上のご意向もあったのかもしれませんが、私は慣れ親しんだ『チンチン』でいいんじゃねぇか? と、考える懐古野郎でございます。
この都電の終点『三ノ輪橋』から、地下鉄千代田線が通っております『町屋駅』までの七分間が今回の旅であります。先日まで、高熱で寝込んでおりまして、短いのはご容赦のほどを。
三ノ輪橋駅周辺は、ちと有名な商店街「ジョイフル三ノ輪商店街」が沿っておりまして、切らしていたコーヒー豆を、ここの老舗コーヒー屋さんで買います。買ったのは「都電ブレンド」。深煎りで油テリテリ。香り高く、苦みが深いですが、すっと口から苦みが抜ける、旨いコーヒーでございます。探すのも散策の楽しみですから、名前は出しませんので、お立ち寄りの際は探索してくださいな。
都電三ノ輪橋駅は終点でありますので、電車が折り返します。
降車ホームと乗車ホームが別れておりますので、いわゆる『平地型スイッチバック』を目の前で見ることが出来るのでありますよ!
いや……私、鉄道マニアではございませんで、素っ頓狂な事を言っておるかもしれません。年季の入った『鉄人』の皆様、鼻でお笑い下さい。
案外混んでいる都電。区民の足として、利用されていますね。
左右に狭い路線。線路端のプランターに植木があったりして、懐かしい下町の路地みたいで、この辺り出身の私は、胸がキューンとなります。
あ、数年前に心臓で倒れたので、その発作じゃないよな? うん、大丈夫。
三河島水再生センターの脇を通ります。
大正十一年に作られたこの施設、さすがに当時の設備は引退しましたが、まだ稼働しています。
旧施設は、煉瓦造りの大正モダン建築で、かっこいいっす。東京のコレラと戦う公衆衛生の最前線基地だったのでありますよ。凛とした古武士の佇まい。重要文化財にもなっています。
短い都電旅を終えて、町屋駅へ。以前は、都電町屋駅は、バラック小屋がひっついていて、演歌専門のカセットテープ屋、人気のラーメン店『王々亭』なんかがゴチャゴチャと軒を連ねておりましたが、全部なくなってしまって、綺麗になっていました。
『王々亭』の娘さん(名前忘れた、すまぬ。眼鏡っ娘だった)と塾で同じクラスでして、塾帰りにラーメンをゴチになっていました。むちゃくちゃ美味だった記憶があります。味噌とバターと何か中華っぽいスパイスを加えて炒めたもやしがどっさり乗っていた記憶があります。
そこから、大好きだった爺さんを送った「町屋斎場」を通り過ぎます。
某古典芸能の家元だった爺さんの葬式は、百人以上の参列者があって、ビビりました。明らかにあの筋の方も何人かいました。
お金にだらしない明治男の遊び人だったので、うちの親父は違う意味でヒヤヒヤしていたらしいですけどね。現金で数百万用意していたそうです。結局、借金取りは来ませんでいたが。
色んな思い出を蘇らせながら歩いていると、見えてきました『竹の湯』さん。
薪で沸かしているので、この住宅地ににょっきり煙突。
煙突には誇らしげに『サウナ』の文字。
「いや、ここは屋号でしょう」
と、突っ込みかけましたが、本格的なサウナが珍しかった時に導入したのだろうなぁと思いしみじみ。
拷問具みたいな、首だけ出す箱型簡易サウナとか、若い人は知らんでありましょうね。
木の下足板の靴箱に、我ドタ靴を収納。木製の板が珍しくて盗む輩がいるそうですが、やめてあげてね。私が見かけたら、ぶん殴っちゃう。ぐーで。
番台ではなくフロント形式。恥ずかしがり屋さんでも安心。見られると興奮する紳士諸賢には残念。
チャキチャキしたいかにも下町風のおかみさんに、
「江戸川区のスタンプラリーの台紙ありますか?」
と聞く。昨日で江戸川区巡りを一区切りさせたのに、まだ脳が切り替わっていないのであります。
年々処理能力が落ちてきているんだけど、アプデはいつですか(涙)
「ああ、あっちにおいてあるよ」
私のアホな間違いをスルー&忖度して、親切に教えてくれるおかみさん、マジ天使。
無事、荒川区銭湯スタンプラリーを開始できました。竹の湯さんのスタンプは、屋号とナンバーだけのスタンプではなく、竹のイラスト入りの可愛い図柄でした。
四カ所の荒川区内銭湯を巡ってスタンプを貰うと、景品として手拭いが貰えるという仕組みであります。手拭いは八種類あり、銭湯によって渡す手拭いが決まっているのが、ミソでありますな。
四カ所目のスタンプを押した銭湯で景品Getとなりますが、この四カ所目をダブらせないように、行く順番を組み立てるのに戦略性が必要であります。
各銭湯に景品は五十個までというタイムリミットも絶妙。後半になると、人気の銭湯だと品切れだったりして、穴場がどこか? とか探る必要がありそう。
そんな事を考えながら、脱衣して浴場へ。
高い天井の典型的下町銭湯。
本日は別府温泉を模した薬湯、座風呂、赤外線風呂という構成。
ペンキ絵は、正調『富士山』。
熱い湯に慣れた私ですが、腰まで入って我慢できずに飛び出る熱さでした、薬湯。
白濁の薬湯でしたので「豚骨か!」と突っ込みました。「白湯か!」でもよかったかな。どっちでもいいか。とにかく、熱かった!
キリっと熱い座風呂で体を慣らし、再挑戦。
今度は肩まで行けましたが、一分が限度でありました。
出たり入ったり(いやらしい意味ではなく)を繰り返して、熱い湯を楽しんで、たっぷり汗をかき、荒川区攻略の第一歩は無事終了。
期待していた、コンビニでは見かけない謎のドリンク(命名:謎ドリ)は、ありませんでした。
元気がハツラツするらしい、小さなビタミンC飲料で喉を潤して、そぞろ鷹樹はまた都電に乗って三ノ輪橋に帰って行ったのでした。