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恋の嵐に巻き込まれたオレはレベルUP  作者: 嵐の天邪鬼
始まりの日常編
3/3

2話 夫婦だってさ

 一組の夫婦の登場で陽輝は苦労が絶えない事に。

【世界の中心でアナタは 1人はやだよと泣いていた

 その傍らで私も泣いたらアナタは 嬉しそうに悲しそうにまた泣いた

 私も1人だよ


 1人だった時は気付けなかったこの感覚

 アナタが隣に居るだけで冷めた心 こんなにも温かい

 この熱を知らない私は戸惑い その澄み渡る瞳を見詰めた


 アナタは良くはにかんだように笑う人 そんなアナタが大好き

 君は良く照れたように笑う人 そんな君が大好き


 いずれ別れがくると分かっていても

 アナタを 君を

 大好きになった事嬉しく思うよ


 アナタの良いところ悪いところ 全て知りたい

 良いところにキュンとして 悪いところにモヤモヤして

 全てに包まれたい

 アナタに包まれたい


 アナタは良くはにかんだように笑う人 そんなアナタが愛おしい

 君は良く照れたように笑う人 そんな君が愛おしい


 星の数だけ傍に居たい

 それ以上に大好きだと伝えたい

 もっとそれ以上に アナタの一人ぼっちだった時を癒してあげたい


 手を繋いで世界を共に見よう

 そしたらきっとアナタは またはにかんだように笑うだろう

 そしたら私は 満開の花(笑顔)を咲かせよう】


 テレビに映る弥枝が歌い終わると、観客席から盛大な拍手喝采。会場は一気に熱が高まり、次の曲に移行を始めた弥枝も笑顔でリズムを刻み出した。


 やっぱ良い歌だなぁ。歌詞は勿論だけど、歌ってる小鳥谷さんの声が綺麗だもんなぁ。

 デビュー曲の【世界で1人だった】は今でも小鳥谷さんの曲で、オレの中で上位に入る名曲。勿論他のも素晴らしいけど! オレ、ストーリー性のある歌好きなんだよなぁ。


 弥枝の出す曲はどれもストーリー性重視の曲ばかり。大半が恋愛物で、女性にも男性にも人気が高い。弥枝自身も飾っているところが無く、天然でたまに大胆な言動をする人故に、タレントの中でも評価は高い。


 林檎と弥枝との初対面を果たしてから1週間。2人と連絡先を交換して次の日に林檎から意味不明な電話が来た。


【りんごぉおおおおおっ!!!】


 ブチッ。


 ……その一言だけ言って切られた。え、何? リンゴちゃんが林檎を食べたいって? ある意味の林檎病? 禁断症状的なのが出ちゃったの!?

 とか何とかその時思い、かけ直したら……。


【わぁ、悪いのぅ。まちが……ま、まま間違ってかけてししまったわぃ。ん、んー?……り、りり林檎を……を……見ると…………潰したくなってしまうんじゃぁ】


 間とハッキリと言われた最後の言葉にちょっとだけビビった。リンゴちゃん、名前林檎なのに林檎を見ると食べたくなるどころか潰したくなる衝動があったなんてな。その時の様子を想像してみるとシュールだった。


 まぁ、そんな事がありながらも今日は休みだ。水の都の探索をしようと思う。最近の休日の使い方は殆ど探索だ。

 

 その時オレはまだ予想出来ていなかった。まさか、まさか……。


「くち…………果てろぉおおおおおっ!!!」


「ぶっ……!!」


 まさか、自分より大きい美女を全力で殴っている少年が居るなんて。


 美女は数m吹っ飛び、顔面から地面に着地した。少年は息を少し切らせながらも、ズンズンと美女に近付いて行った。先程まで美女と一緒に居た男性は怯えたように逃げていった。それを横目に少年は美女を見下ろす。


「おい……朽葉。今週で何回目だよ。誰彼構わず色目使ってんな。殴るよ?」


 もう殴ってますやん尋ちゃん。


 コイツは折澤おりさわひろ。年齢は結構あっちの方が上だが幼馴染みだ。昔っから小さくて可愛い顔してんのにキレると直ぐに手やら足やら出て来る。オレが2歳の時からの付き合いで、15歳の時に水の都に引っ越しちまった。

 今日会えるなんてなぁ。いやぁ、驚きだ…………いや、ホントに驚いた。


「いたたた……痛いじゃないの、オチビちゃん。因みにもう魔力込みの拳で殴ってるわよ。重い愛ね。嬉しいわ」


 意外と平気そうに立ち上がった美女は、顔に残っている拳の跡を治癒能力で消した。跡が無くなるとやはり美女であり、陽輝は尚更何故こんな美女を殴ったのか分からない。


 ショートの赤毛と同じく赤くクリッとしたリスを連想させるような瞳を鋭くさせると、不意に陽輝に気付いた尋。


「あれ? 陽輝久し振りだね。お前も水の都にしたのか」


「は、はい…………この人は……?」


 凄く気になるので聞いてみた。


「嫁」


「……え?」


「だから嫁だよ」


「…………嘘だろぉおぉおお……っ」


 衝撃的な言葉に信じられず、絞り出すような声が出てしまった。陽輝の様子に尋は構わず紹介し出した。


「コイツは朽葉くちは莉李りり。顔は良い浮気性の最悪女だが、正真正銘俺の嫁だよ」


「どうも。尋から話は聞いてるわ。確かに目付きは悪いけど、良い男じゃない」


 そう言った莉李はスッと陽輝に近寄り、ズイッと顔を近付けた。莉李のハーフアップにされたスーパーロングの黒髪が風に舞い、サラリと陽輝に触れる。何処か良い匂いがする気がする。ズイズイ近付かれ思わず身を引いてしまう。


「おい。陽輝はお前みたいな押しの強い女苦手なんだよ。あんまり近付くな」


「あら、そうなの? ……面白いからもっと近付いちゃおうかしら」


 意地悪く笑みを浮かべて縮こまっている陽輝の肩にソッと触れると、その肩は更に縮こまった。


「やっ、やめて下さい……」


「フフフッ……かぁわいい」


「ひっ」


 サワサワと腰辺りを触られ短い悲鳴が上がる。


「おい。セクハラやめろ。真面目にやめろ。軽く引く」


「助けて尋ぉおっ」


「お姉さんと良い所行きましょう?」


「ヒィイイイッ……!」


 可哀想な程にか細い悲鳴が聞こえる。尋は溜息を吐くと、拳に魔力を込め、莉李の腹目掛けて放った。

 それは腹に命中し、莉李は腹を押さえ蹲った。


「うぅっ……腹はキツイわ……」


「溝打ちじゃなかっただけマシでしょ」


「愛の鞭、的な?」


「よーし。だったらもう一発いっとこうか? 愛の鞭」


「遠慮するわ」


 流石に3発目はキツいのか、右手を前に突き出しストップをかける。もう痛みが消えたのか、スッと立ち上がると陽輝を見詰めた。

 先程の事もあり陽輝はビクッと体を震わせると、尋の後ろに縮こまって隠れた。そんな陽輝に莉李はクスクス笑う。


「あら、失礼な子。そんなに美女よりオチビちゃんが良いのかしら」


 チビと言う言葉に眉間に皺を寄せると、常にキュッと不機嫌そうになっている口をわざとらしく大きく開いて言った。


「そりゃそうだろうよ。自分の事をやらしい目で見てくる自意識過剰女よりも、小さい時から一緒だった幼馴染みの方が良いでしょ」


 そりゃそうだよ。こんな押しの強い女より尋の方がよっぽど良い!小さい時からこんな事があればオレはいっつも尋の後ろに隠れて助けて貰ってた。小さいのに頼りになる大きな背中だったぜ。

 今はオレの方が大きいのに、やっぱり頼りになる幼馴染みであり兄貴だぜ。よっ。カッコイイぜ兄貴!


 そんな事を陽輝が思っていると、2人の言い合いはヒートアップしていった。


「大体! お前の夫は俺でしょ。他の男と親密になったり色目使ったりすんな」


「これが私の性分だって知っているでしょう? 勿論あなたを1番愛しているわ」


「1番じゃ無かったらもう一発マジでいってたところだよ」


「体の関係もってる訳じゃぁないんだし……良いわよね?」


「駄目だって言ってんでしょうが。俺の嫁だって事を自覚しろ」


「してるわぁ。してるから尋の前でわざと浮気してるんじゃない」


「性悪女! やっぱりもう一発決めないと気が済まない……!」


 怒りの魔力を拳に込める尋。莉李はクスクス笑いながらシールドを展開させた。


 おいおいおいおいっ! こりゃマズいんじゃねぇのか!? 2人してそんな魔力解放したら……!


「お前が言う愛の鞭、全力でぶつけてやる……!」


「じゃあいつも通り、全力で受けるのが彼女の役目ね……!」


 凄まじい魔力を右拳に集中させた尋は助走をつけると、目をカッと見開き言葉通り全力で放った。莉李も防御率を極限にまで高め真っ向から迎え撃った。

 ドッーー!!と辺りに衝撃波が波のように伝わり、遠巻きで見ていた住民や建物が揺れた。近くで戦いの気配を察知していた物売りの店は、実は数分前からシールドを展開させていた。


 水の都では良くある光景なので、対応力が凄い。初めて見た陽輝は吹き飛ばされそうになりながらも踏ん張り、こう叫んだ。


「……魔力全力でぶつけ合う夫婦が居てたまるかぁ!!オレは蚊帳の外かぁああああああっ!!!」

 これから良くストーリーに関わっていきます!

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