戦闘訓練
無事に学校生活1日目を終え、アリスとともに寮へ戻っている最中、背後から声をかけた。
「おい凸凹コンビ!てめーら戦闘訓練見ていかねえのか?」
「・・・アリスあれ誰?」
「忘れちゃった」
「バカにしやがって・・俺はレン・クローウェル。魔王になる男だ!覚えたか?」
あまり背丈が大きくないので、迫力に欠けるのだが、面倒くさいので覚えといてやることにした。
「はいはい、じゃ部屋に帰るから」
「けっ、張り合いがねーな。今年のM組はヘタレが多いな。訓練所来たら俺が直々に鍛えてやってもいいぞ」
そんな捨て台詞を吐いてどこかえ歩いて行った。なんなの?彼、ひょっとして友達になりたいのかな?あのギザギザ君。
「アリスあの人嫌」
「俺もアイツ嫌だな。」
そんな事を言いながら寮の部屋へと戻って行く。なんか友達っぽいな!これ、ところでアリスも明日戦闘訓練に参加するのかな?
「なーアリスも明日の戦闘訓練参加するの?」
「うん!」
「戦えるの?」
「ううん」
「ダメじゃん!」
「教えて!」
って事でアリスに戦い方を教える事にした。でもアリスには魔法が効かないアドバンテージがあるからな。問題は物理攻撃だ。空中浮遊で間合いをとる作戦もあるが、戦うフィールドって高さ制限あるのかな?・・・戦闘訓練見といたほうが良かったな。レンとか言う奴に絡まれそうでダルいけど仕方ない、アリスのためだ!
「よし!アリス!戦闘訓練見に行って作戦を立てよう!」
「分かった!」
~~戦闘訓練施設~~
対物理、魔法結界に覆われた訓練施設だ。かなり頑丈な結界が張られている。でもこの程度すぐに壊れるだろ。どーでもいいか!
辺りを見回すと、案の定レンが訓練してた。測定が終了した生徒達もココで自主的に訓練しているそうだ。すると、寮長さんが後ろから歩いてきた。挨拶しとくか
「お~寮長さん!測定終わったんですか?」
「こんにちは、ルーシー」
アリスもお行儀よく挨拶をする。俺はちょっと適当すぎたかな。
「こんにちは、アリスさん、ディルさん。自主訓練ですか?」
「そー!」「そうです」
すると一瞬笑顔になったのだが、すぐにハッとしよそよそしく、「私はこれで失礼しますわ」と言い去って行ってしまった。すると後からリリーとレベッカがやってきて、リリーはこちらに会釈して、さっさとルーシーの方へ向かって行ってしまった。
レベッカはというとこちらに見向きもせずルーシーの方へと歩を進めていた。
「さて、アリス訓練所に行くか」
「うん!」
訓練施設は地下一階から2階まであり、一回はワンフロアに一つの大きな戦闘訓練所となっており、この学校のトーナメント戦なんかで使うらしい。
地下と2階はいくつかの訓練場がある。その中は異空間となっていて、外から見た感じだと小さな部屋のようだが、中に入ると結構な広さになっており、運動会ができそうな程だ。
アリスと開いている部屋に入ると、魔法陣があり、その上に立つといろいろな設定ができるようになっている。何人対何人の戦闘か、戦闘者か観戦者か、観戦者を許可するかなどが指定できる。基本的に10人以上か貸し切り許可証を所持する場合のみ、入室制限が設けられるらしい、つまり俺らは貸し切れないので入室した時点で異空間へとワープした。今のところ俺たち以外には誰もいない。
「なるほどね」
入室してから魔眼をつかって魔法を解析する。異空間の構成方法と、その設計、耐久地などいろいろ分かる。広さは半径500メートルの球体だ。肉眼で見ると、かなり広く感じる。岩や、木なども存在しており、魔法で作られた空間というのは信じがたいレベルだ。
これ作った人すげーなー。でも改善の余地はあるように思う。この異空間では死ぬことは無いが痛みはある。魔素の濃度も外の世界と同じだな。一定以上のダメージを受けると敗北で戦闘終了になるようだ。 そんな事はさておき目的は達成してしまった。アリスはというと、空中浮遊を楽しんでいる。せっかくだしアリスに攻撃魔法教えるか。
「なーアリス、攻撃魔法教えてあげる」
「うん!」
アリスに教える魔法は決まっている。俺オリジナル魔法!名前はまだない!を教える。地面に魔法式を書いて説明する。5分で理解したようだ。さすが俺の友達!魔王時代にいた直轄兵より覚えがいいな。
「よし、アリス俺に撃ってみろ!ガードするから。」
「分かった!フッフッフ。」
ん?なんか悪い笑みだけど大丈夫かな?そんな嫌な予感は的中した。相変わらずの詠唱、刻印破棄の超高速魔法発動。突如空中に魔法陣が浮かび上がる。ん?俺が教えたのと違うな・・・これは!
魔法陣から黒いウサギのぬいぐるみが出てきて、宙を舞い俺へ向かってくる。速度は時速90kmくらいかな。それが次々魔法陣から現れ襲ってくる。試しに一体の人形を風魔法で破壊すると爆発した。何この凶悪な魔法!更に優秀なのが、ウサギの爆発で誘爆が起こらない事だ。
ま、避けきれそうだな。そう思ったのも束の間、アリスがもう一つ魔法を発動する。すると、ハットをかぶった黒ウサギが、一匹出現した。爆発が巻き起こす風と熱の猛威を避けつつ、確認するとその帽子のウサギは、弾丸のような速度で俺へと向かって来た。
・・・うん、訓練いらないね。しかし、ここで何もできずに負けてはアリスの友達としてダメな気がする!と言う訳で、ハッキング!これは今思いついた魔法だが、アリス自体に魔法は効かないが、アリスの発動した魔法になら魔法が効く事が分かった。そこで、オート追尾式の黒ウサギの目標をアリスに変更。
すると、黒ウサギがアリスへと向かっていった。ま、効かないんだけどね。よし、これで一矢報いただろう。
「こうさ~ん」
「えぇ~~!」
アリスはご不満のようだが、攻撃をやめてくれた。よし、明日の戦闘訓練だが、アリスは問題なさそうだな。アリスはまだ遊びたそうだが、ここで知らない人が異空間に入ってきてしまったので退出する事にした。
「ねーねー、さっきのディルの魔法教えて!ドロボー魔法!」
「なにその格好悪い名前!マジックハックって名前なんだけど!アリスも人形の魔法教えて!」
「人形の魔法じゃないもん!クロウサギさんだもん!」
「部屋に帰ったら教えてやるよ。黒兎か~。かっけーな」
そんな会話をしつつ部屋へともどった。マジックハックを教えたが、これは相手の魔法を完璧に理解し、相手の魔力と全く同じ量と出力で干渉し、奪い取る物なのでアリスには使えなかった。ま、アリスなら魔法陣によって発動する結界なんかを壊せると教えてあげると、機嫌を直してくれた。
それからは、アリスが魔法を教えろとうるさかったので、どんな魔法がいいか紙に書かせ、二人で魔法を作って過ごした。ヒントを少しずつ与えてアリスが魔法を組んでいく。楽しい時間だ。
気づくとすっかり日が落ちていたので、明日へ向けて寝る事にした。・・・降参とかあるといいな。