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不思議なルームメイトのアリス②

 

 俺は魔法学校に通うために、寮に住まう事にした。俺の入学希望の中央魔法大学には、今から通う中央魔法学校を卒業するのが近道なのだそうだ。にしても3年間、こんなレベル低そうな学校に通うのはつまらなそう。とか思っていたが、アリスというオモシロ生物に出会い、考えを改めた。



 アリスは魔法式を扱う天才と思っていたが、やはり子供みたいだ。せっかく魔力を抑えるリミッター機能付きリボンをプレゼントしたのに、魔法を使うことなく、しきりに最近あった事を話してきたり、きいてくる。


「ねーねー、お名前教えて?私アリス。」


「ん?あぁ、俺はディルよろしくな」


「何歳なの?アリスね、10歳になったの!」


「えぇ・・っとね、俺は他の皆と一緒くらい?かな」


「え~、それじゃ分かんない!」


 え~と、魔法大学は18からだろ、その準備期間は三年前だから15って設定でいくか。


「15歳!」


「えー、もっと小さく見えるよ?」


「うそ!マジで?え、じゃあいくつに見えてんの?俺」


「えっとね~、アリスより少しお姉さん!」


「アリス、そこはお兄ちゃんな?ちょっとじゃねーだろ、こんなに俺のが背が高いのに」


「そんなに変わらないもん!」



 そんなやり取りをしていると、部屋の扉をノックされた。「う~い」とだるそうに返事をして、客に出迎えようとすると、アリスが一生懸命俺の後ろにかくれている。どしたんだ?

 ドアを開けると、寮長さんのルーシーが立っていた。


「学園長がお呼びですわ。ついて来なさい」


 そう言って歩き出した。なんつーか、この人と会話すると反抗したくなるんだよな~。他の人には信頼されてるみたいだし、俺だけなんだろうな。てか、アリスもついて来てるけど大丈夫なのかな?


「あの、寮長さん?」


「私はルーシーです」


「・・・ルーシーさん、アリスもついて来てるけどいいの?」


「仕方ありませんわ。」


 怒ってる?ルーシー怒ってるの?これ、俺何かしたっけ・・・それより、アリスがどことなく警戒と緊張と恐怖という感情が混ざった感じの表情をしている。何がそんなに嫌なんだろ。その後は変な緊張感が漂う中、無言で歩いていく。

 なんだか立派な扉の前まで連れられ「それでは」と去って行ってしまった。あれ、デジャブ。ここには一言言ってさっさと立ち去る文化でもあるのか?


 とりあえず扉をノックする。中から入室を許可する言葉が聞こえてきた。扉を開けて中に入ると、そこにいるのは恐らく学園長なのだろうが・・・若すぎる気がする。魔法学校の学園長って、長い髭が特徴的なおじいさんじゃないのか?


「わざわざ呼びつけてごめんなさいね、ディルくん。話はアリスの事なんだけど。」


 そう言い学園長は俺との間に風魔法を応用した、空気の幕を作った。これは音を遮断する魔法だな。さすが学園長、手練れだな。風魔法で音を隠すのは高い技術を要する。

 

「さて、話なのだけど。アリスちゃんは、幼い頃に両親を亡くして孤児になっていたところを私が引き取ったのだけど。呪われた子なんて言われてイジメられていたの、正確には保護ね。

 魔法が使えないっていう呪いなんだけど。怪我をしても治せないし、凄く不憫なのよ。

実はある方からディル君に任せるように言われてるの。あなたの部屋が魔力爆発を起こしたのに無傷なんだから凄いわよねー!凄く頑丈って本当なのね!

 アリスちゃんはいい子だからよろしく頼むわね!はい結界解くわね!疲れるのよこれ」


 一気に話して結界を解かれてしまった。会って1分くらいなんだろうけど、俺この人ダメだ。


「じゃあ、アリスちゃんを頼んだわね、ディル君」


「・・・はぁ。」


 我ながら頼りない返事をしてしまった。しかし、この人本当に学園長なのか?ココに呼ばれた理由は本当にアリスを頼むって言いたかっただけなのかな?でもね~、順番逆だよね?俺一回爆発してるわけだし。

 それにある方、って誰だ?俺が頑丈って知ってるのは、かつて俺が魔王だって知ってる人だけだしな。となるとフワ神の奴かな?


「俺たちを呼んだのはそれだけですか?学園長」


「そうよ?あー、あとね、寮長さん達とはいろいろあると思うけど頑張ってねー!」


 結局は頑張れって事が言いたかったらしく、また別の話が長くなってはかなわないので急ぎ足で学園長室を後にした。するとアリスの緊張は少し和らいでいるようだ。にしても、魔法に嫌われた呪われた子ね。人間は随分的外れな事を言うのだな。俺からすると魔法の申し子みたいなイメージなんだけどな。


「アリスお前、大丈夫か?」


「うん」


 その割には服をがっちり掴んで離さない。これは・・・歩きにくい。しかし引き剥がす必要ないし、我慢することにした。なんせ、友達候補なのだから!大切に扱わねば。

 そう決意し部屋へと帰る。


 部屋に入るなり、アリスが元気になった。「ディル!魔法教えて!」の一点張りだ。これじゃー、師弟関係じゃね?まぁ、弟子のが友達にしやすいはずだ。このままでいこう!

 

「よし、飛ぶ魔法使ってみろよ、たぶん飛べるぞ。天井に頭ぶつけないようにな!」


「分かった!」


 そう言って魔法を使うアリスは、相変わらずの魔法構築速度だ。2,3年後には抜かれそうだな。まぁ俺の忠告虚しく、飛べた嬉しさから調子に乗って天井に頭をぶつけ、泣くアリスを必死になだめるはめになったのだから、俺が魔法で負けるのはもう少し先かなと、評価を変更した。


「もう痛くないだろ?」


「うん・・・でも、どうして?」


「治癒魔法だよ、俺は魔法が上手だからアリスにも魔法がかけられるの。」


「そっかぁ!ディルは凄いね!」


 人間の子供ってのは、こんなにも表情豊かなのか?なんて思っていると、ジーっと俺の顔を見つめだした。また顔が変わった。何パターンあるんだろ・・・


「ねーディル、なんで髪の毛がボサボサなの?」


「ん~特に理由はない」


「アリスがやってあげる!」


 そう言ってテトテト走って女子寮の方に行ってしまった。少しするとアリスが知らない女子生徒を連れて来た。栗色のロングヘア―を揺らし走ってくる。胸元の大きなソレも揺れている。まぁ、性欲の無い俺からすると、邪魔そうだな~という印象しか受けないのだが。


「ちょっと~、アリス何事なの?」


 おっとりした印象の話し方の女性は、アリスが連れて来た様子だ。でも何のため?


「マリア!これがディル、切ってあげて!」


「あなたがディルさん?はじめまして~、マリア・エルフィオールです。よろしくお願いしますね~。」


「え、あぁ、ディル・ロザーストだ。よろしく」


 アリスの奴何て言ってこの人連れてきたの?斬ってとか言ってなかったあの子。問答無用!とか言ってくるのかな?


「あらあら~、随分と伸び放題な髪の毛ですね~」


「あ、切るって髪の毛か!」


「そう!マリア上手なんだよ!アリスもやってもらってるもん」


 得意げに小さい胸を張るアリス。


「これは腕がなりますね~。」


 マリアは実家が美容院を営んでいるようだ。母の手伝いなんかをしているうちに、髪の切り方を覚えてしまったらしい。やる気スイッチが入ったらしく、腕まくりをしている。正直怖ぇ、あれは雑草を見る婆ちゃんの目だ。それにしても、魔王から学生と、転生前の身分に近づいたせいか、前世の記憶が思い出しやすくなったな。

 そんなどうでもいい事を思っていると、切った髪の毛が服につかないようにする布をかぶせられ、櫛で髪をとかされていく。されるがままだな俺。


「長さはどれくらいにしますか~?」


「ん~、短くした事無いからな、あんまり短くしないで」


「はいは~い」


 そう返事すると、チャキチャキ手際よくハサミを動かしていく。なんつーか、今どうなってるのかがかなり気になる。変な髪型になってたらどうしよー。あぁ、引きこもればいっか。


「マリア、アリスがディルのお世話するからね!坊主しちゃダメだよ」


 えぇー!!坊主って選択肢あったのぉぉ!?


「アリスちゃんは面倒見いいのね~・・・あっ!」


「えっ?・・今あっ!って言った!?今あっ!って言ったよね?しかも何かミスった時のあっ!だったよね今の!」


「ふふふ、冗談ですよ~、安心してください。」


 ・・・本当かなぁ?もしかしてアリスが坊主にして人って、ミスを隠蔽するために刈ったのかな?ネガティブな想像が膨らむのをよそに、アリスとマリアは仲が良さげだ。なんだ、アリスって別に怖がられてる訳じゃないんだ。と少し安心した。

 安心もつかの間、完成~!とマリアが鏡を手渡してきた。確認すると、長さは変わらないのだが、バランスがよく、サラサラになっていた。腕を疑ってすまなかったアリス!と心の中で謝罪した。


「これで、明日からの学園生活がきっと良いものになりますよ!アリスちゃん、ディルくんのお世話頑張ってね。」



 そういや、明日から学校生活が始まるのか~・・・あれ?入学式・・クラス分け試験




「あ!明日!・・クラス分け試験あるじゃねーかー!」

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