プロローグ
「勇者」それは魔王を滅ぼすための存在。魔王を倒し、人間達に平穏をもたらす者の称号。
「魔王」それは人間を脅かすための存在。圧倒的な力を持つが、勇者に葬られる者の称号。
これは10代目魔王、転生者ディザストロの話。最強、最悪の大魔王として異例の1000年以上もの間、魔王として世界に君臨し続けた。魔王の任期は100年~300年、長くとも400年程度だ。なぜ10代目がこんなに長く魔王として君臨し続けたか・・・それは強すぎたのだ。
魔王を倒そうと向かってくる勇者達を一人で葬ってきたために、こんなに長く王の座についているのだ。
そんな魔王を倒すべく人間界にも最強の勇者が生まれた。金色の髪に金色の瞳。龍に友と認められ、神に溺愛された完全無欠の加護を持つ。と言われている勇者。1000年に1度の逸材。今後彼のような勇者は現れないとまで言われた伝説の勇者。
其の物の名は、勇者クロウ・ドラグーン。たった一人で魔族領に乗り込んできた。
「魔王様!勇者が攻めてまいりました!単騎で我が軍を圧倒しています!!」
「なに?勇者?またー?・・・魔王は留守ですって言って」
部下の命がけの伝令に対して非道な対応をするのは、魔王ディザストロ。漆黒の長髪に瞳は血のように紅く。2本の角を持つ。実は端整な顔立ちだが部下にイジられたせいで髑髏の仮面を付けている。そんな、変にデリケートな魔王である。
「いや魔王様!?今回の勇者は我々の手に負えません!!我が領地の民が!」
ソコまで言うと魔王の雰囲気が一変する。先ほどまでの緩み切った表情は引き締まり、黒いオーラを全身に纏う。すると魔王の肌に刻まれた呪印が魔力を帯び、赤黒く光る。
「俺一人で挑むから、全員下がれ。」
「お気を付けください」
堅苦しく挨拶をする部下を他所に勇者を探知し、出向く。
勇者の前に魔王が現れた。もちろん勇者は臨戦態勢に入る。
「魔王!!貴様が魔王か!何と禍々しい・・・僕が貴様を倒す!!」
激しい戦いが繰り広げられた。地形が変わりるほど激しい戦いが。戦いの末に立っていたのが魔王だった。
「勇者クロウかー、強かったなー。まさか俺が本気出す事になるとは・・・勇者ってのは迷惑だ」
変わり果てた魔王城を見て思わずボヤいてしまった。俺のスイートホーム・・・。そんな事を思っていると辺り一面が真っ白になった。転移させられたのか?
「魔王ディザストロよ」
気だるろうな声の主は、くせ毛なのかフワフワした印象のある金髪を腰まで伸ばし、金色の瞳は気だるげに半開きだ。美しい。その一言に限る容姿・・・だが男だ。
「君ね~、魔王クビ!」
「・・・・・え?」
我が名はディザストロ、魔族の頂点から底辺へと身を落とした。