一章 ヒーローやってます Ⅵ
その悲報が届いたのは翌日のことだった。
「高浦さんが死んだ……?」
『はい……』
"メモリア"にホログラフィックで構築されているのは制服に身を包む恋夏の姿だ。
テレビまで這い寄り電源を付ける。通話先の恋夏にまで届かない程度に音量を調整し、テレビの奥から流れるニュースキャスターの声に耳を傾ける。
内容をまとめるとこうだ。
高浦は昨日の仕事帰りに人気のない公園近くで殺害された。現場に証拠はなく、鞄から財布からカード類が抜かれお札が一枚もないところから強盗目的での殺人と片付けられ、犯人はなおも逃走中とのこと。
『先輩、どうしましょう』
「一度本部に問い合わせてみる」
その後でもう一度掛け直すと恋夏に伝え、通話相手を機関へと切り替える。
すぐに機関上部に位置する飯原尚輝へと繋がる。
『殺害された魔族の件だな?』
「わかってるなら話が早い。率直に聞くがどうなってるんだ」
『世間一般には強盗の殺人だと公表されている。だが……』
息を吸いなおし、飯原がその後を紡ぐ。すぐに悠生に衝撃が走ることとなった。
『魔族の仕業だ』
「……っ! ホントなのか!?」
『……死因の絞殺に使われた凶器は恐らく魔力でできた縄状の物だ』
凶器が魔力の類だった場合、その判別は警察には不可能だ。"ヒーロー"の中には戦闘以外にも、観察や補助に優れた能力を持つ者も存在する。その一人が調べた結果がそれなのだろう。
「犯人の目星は?」
『まだ機関に登録されている魔族と照合している途中だ』
焦る気持ちを押し込め、唇を噛み締める。
だがそんな悠生の様子を見透かしたかのように、
『焦ってもどうしようもないぞ』
「くっ……」
『なにかわかったらこちらから連絡する』
「……頼む」
結局頼れるのは機関で自分では何もできない。渇いた咥内に鉄の味が広がった。