ゼロ
「この事件はどの班が担当するのですか」
合田がそう聞くと、月影は沈黙した。助け舟を出すように千間刑事部長がノートパソコンを持って入室した。
「それは難問です。ここには警部が四人いて全員違う係に属しています。身内に捜査させる訳にはいかないので担当出来るのは捜査一課十二係中八係。単純に半年前に中野が転落死した事件を担当した四係にさせたいのですが、四係は西野が所属していました。つまり半年前の事件と今回の事件が同一犯だとしたら、四係と七係にも捜査をさせるわけにはいかない。これで残るはあと六係」
「だから残りの六係の内どこかの係がこの事件を担当する」
しかし千間は首を横に振り、パソコンを起動させた。
「私は警視庁内の捜査一課全十二係が今どの事件を担当しているかを把握している。ではこのスケジュールを見てくれ」
千間はパソコンをプロジェクターに接続して画面に大きくスケジュールを映した。
「見ての通り頼みの六係全て別の事件を担当している。答えはゼロ。担当できる係ない。所轄に担当させるという手段もあるが、劇場型犯罪に発展する可能性も否定できない。ただの所轄の捜査力で犯人を逮捕できるかが不安だ」
千間がゼロという答えを出したことによりあたりにシリアスな空気が流れた。