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W4号室
合田は最後にW4号室を訪れた。中からは売れない小説家のような男が出てきた。
「晩餐会の参加者です。少し話を聞いてもいいですか」
「ちょうどよかった。現実逃避がしたかった所だ」
「貴方の名前は何でしょう。国枝さんには北村としか聞きませんでしたか」
「北村聡です」
合田はメモに書き込んだ。
「この晩餐会の主宰者は誰ですか。聞く話によると主宰者は二人いるそうです。それでどちらが本当の主催者かを調べています」
「田村薫さんですよ。面識のないはずだから驚いているよ。田舎町で羽を伸ばすことができるから別にいいけどね」
合田はもう少し質問した。
「現実逃避が好きなのですか」
「はい。一つの部屋に籠って十時間以上に及ぶ執筆活動を十年以上続けていたら現実逃避がしたくなりますよ」




