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陰雷館に集まる者たち 2
合田が仲居さんをよく見ると見覚えのある人だった。
「伊東さんですか。七年前コンビニ店の店長だった」
「はい。三年前この旅館を買い取るチャンスが来てから店長を辞めました。小さな旅館で仲居さんとして生活することが夢でした」
「それで晩餐会に招待されたのだが依頼人には会いましたか」
「会いませんよ。予約は手紙とメールでしたから。これで予約された九人が揃いました」
「九人ですか。十人ではないのですか」
「一週間前一人キャンセルすると依頼人からメールが届きましたから」
「それならもう一人予約してもいいですか。料金は私が払います」
「はい。ではそこにある電話を使用してください。ここは携帯が繋がりづらいですから」
合田は早速電話で月影を呼び出した。
「俺だ。部屋に空きが出た。すぐに来ませんか。料金は払いましたから」
『それは本当か』
「はい。喜田参事官をマークした方がいいでしょう。彼は満室だと言ったが依頼人は一週間前一人キャンセルするということは言っていなかった」
『確かに矛盾している。喜田参事官も容疑者ということか。分かった。部下にも伝える』