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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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97/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 97

「…絶対、許せない!…」


 私は、繰り返した…


 もはや、周囲の目など、どうでも、よかった…


 米倉正造を、許せなかった…


 米倉正造、憎し!


 この思いだけだった…


 私が、この松嶋に、リストラを迫られ、悩んでいたにも、かかわらず、最初から、正造は、その事実を知っていた…


 この松嶋が、私をリストラしようとするのを、知っていた…


 そして、知っているにも、かかわらず、まるで、後から知ったように、


 「…大丈夫ですか?…」


 と、聞いて来た…


 電話を、かけてきた…


 ぬけぬけと、電話をかけてきた…


 まさに、盗人猛々(たけだけ)しいというか…


 最初から、知っていて、電話をかけてきた…


 それを、思うと、文字通り、はらわたが煮えくり返った…


 怒りで、煮えくり返った…


 …米倉正造、許すまじ!…


 その言葉だけが、脳裏に、浮かんだ…


 絶対、許すまじ!


 その言葉だけが、脳裏の大半を占めた…


 そして、それが、わかると、


 「…ありがとうございます…」


 と、松嶋に、頭を下げた…


 これまで、松嶋相手に、怒っていた私が、


 「…ありがとうございます…」


 と、真逆に、松嶋に頭を下げるから、


 「…エッ?…」


 と、松嶋が、戸惑った…


 「…米倉正造のことを、教えて、くれて、ありがとうございます…」


 と、言うやいなや、私は、歩き出した…


 もはや、松嶋に、用はない…


 米倉正造、許すまじ!


 一刻も早く、家に帰って、この後、どうするか、考えよう…


 そう、思った…


 米倉正造の顔を、思い出すと、むかっ腹がたって、仕方がなかった…


 ひとが、人生最大のピンチに、陥ったときに、実は、最初から、私が、ピンチに陥ることが、わかっていたなんて!


 そんな、ひどいヤツだとは、思わなかった…


 これまで、米倉正造に、憧れていた気持ちが、見事に吹き飛んだ…


 木っ端みじんに吹き飛んだ…


 あんなに、憧れていたにも、かかわらず、その気持ちが、木っ端みじんに、吹き飛んだ…


 なまじ、憧れていたからだろう…


 余計に、頭に来た…


 余計に、米倉正造が、許せなかった…


 私が、頭に血が上ったまま、速足で、歩き出すと、


 「…ちょっ…ちょっと…高見さん…」


 と、松嶋が、背後から、声をかけてきた…


 が、


 私は、振り向かなかった…


 あまりにも、頭に血が上っていた…


 一刻も早く、家に帰り、この後、どうするか?


 考えるのが、先だと、思っていたからだ…


 「…待って…待って下さい…」


 松嶋が、駆け足で、走って来て、私の前に立ち塞がった…


 「…話は、最後まで、聞いて…」


 「…いいえ、聞く必要はありません…」


 私は、怒鳴った…


 「…今の話だけで、もう十分です…」


 大声で、怒鳴った…


 「…十分って?…」


 「…米倉正造の正体が、わかりました…」


 「…正体?…」


 「…そうです…私が、リストラされる姿を、最初から、知っていて、私が、悩む姿を見て、きっと、笑っていたんです…」


 「…そんな…」


 「…そんなも、こんなも、ありません…それが、真実です…」


 「…真実…」


 「…真実じゃなければ、真相です…」


 そう、断言して、松嶋の脇を歩こうとした…


 が、


 あろうことか、松嶋が、私の前に立ち塞がった…


 「…高見さん…落ち着いて…」


 松嶋が、私に頼み込むように、言った…


 「…これが、落ち着いていられますか?…」


 私は、もう何度目か、わからないが、怒鳴った…


 「…私が、こんな目に遭うのを、事前に知っていて、知らんふりするなんて…」


 「…」


 「…人間じゃない! 男の風上にもおけない…卑怯者です…」


 「…卑怯者?…」


 「…だって、そうでしょ? …男なら、堂々と、私に言うべきです…最初から、教えるべきです…」


 「…それは…」


 「…それはも、これはも、ありません…」


 私は、怒鳴って、松嶋の脇をすり抜けて、歩き出した…


 もはや、松嶋は、私を追って来なかった…


 私が、あまりにも、怒っているので、なにを言っても、無駄だと、思ったに違いない…


 あるいは、ここで、これ以上、騒動を起こしたくなかったのかも、しれない…


 私が、頭に来て、何度も、大声で、怒鳴るものだから、これ以上、ここで、私と言い争いを続けたくなかったのかも、しれない…


 誰かが、本気で、怒り出したら、それを止めるのは、誰もが、至難の業だからだ…


 

 家に帰った私は、まだ、頭にきたままだった…


 腹が立ったままだった…


 なまじ、あの米倉正造に、淡い恋心を抱いていたから、余計にタチが悪かった…


 自分が、好きだった男が、まさか、自分を笑っていた…


 最初から、罠にかけて、笑っていた…


 それが、許せなかった…


 可愛さ余って、憎さ百倍ではないが、余計に、許せなかった…


 …一体、どうして、やろう!


 …一体、どうして、復讐してやろう!…


 それだけが、頭の中にあった…


 とにかく、米倉正造が、許せなかった…


 許せなかったのだ…


 私は、家に着くと、真っ先に、お風呂に入った…


 当たり前だが、素っ裸になって、お風呂に入る…


 たっぷりと、お湯が入った浴槽に浸かると、気分が、落ち着けた…


 元々、155㎝とカラダが、ちっちゃいから、浴槽にすっぽりと、浸かることができる…


 そうして、全身浸かりながら、考えた…


 米倉正造のことを、考えた…


 あの憎き、正造のことを、考えた…


 考え続けた…


 思えば、米倉正造…


 なにを、考えているか、わからない男だった…


 そして、なにを、考えているか、わからないのが、実に魅力的に、映った…


 何度も、繰り返すが、なにを、考えているか、わかる人間には、魅力はない…


 どんなに美男美女でも、それは、同じ…


 誰もが、どこか、ミステリアスな部分があるから、いい…


 なにか、秘密があるから、いい…


 それが、その人間の魅力に映るからだ…


 私の場合は、それだった…


 だから、今、こうして、お風呂に漬かりながら、冷静になって、考えれば、あの米倉正造が、私を笑っていても、おかしくはない…


 なにを、考えているか、わからない男…


 ならば、私を、からかっていても、おかしくはない…


 私をバカにしていても、おかしくはない…


 あらためて、そう思った…


 きっと、あの米倉正造にとって、私は、おもちゃ…


 大人のおもちゃ…


 大人のおもちゃ=性玩具ではないが、きっと、私が、右往左往するのを、見て、陰で、笑っていたに違いない…


 それを、考えると、カラダが、カーッと、熱くなった…


 さっき、あの松嶋と、会ったとき同様、カラダが、カーッと、熱くなった…


 もちろん、その原因は、怒り…


 米倉正造に、対する怒り…


 そして、自分自身に対する怒りだった…


 米倉正造が、ホントは、私をバカにしていたことに、気付かなかった、バカな自分に対する怒りだった…


 バカな、私…


 もしかしたら、私は、米倉正造と結婚できるかも、しれないと、心のどこかで、思っていたのかも、しれない…


 自分では、気付かなかったが、心のどこかで、思っていたのかも、しれない…


 だから、今、心の底から、頭に来た…


 もしや、自分を好きだと、思っていた米倉正造が、実は、自分をからかっていた…


 その現実に、気付いていたからだ…


 これは、同じ…


 金崎実業を、あの松嶋から、リストラ宣告されたときと、同じだ…


 ふと、気付いた…


 金崎実業をリストラ宣告されたときも、今と同じく、随分な衝撃を受けた…


 自分では、あの松嶋から、リストラ宣告されるまで、この歳ゆえに、リストラ宣告されても、仕方がないと、思っていた…


 営業所の女子の中では、古参メンバー…


 最年長だ…


 もはや、女のコとは、お世辞にも、いえない年齢…


 つい先日、元のAKBメンバーが、自分を35歳の女のコと、呼んで、世間から、失笑を買った…


 どこの世界に、35歳の女のコが、いるんだ?


 と、ネットで、失笑を買った…


 それと、同じ…


 いくらなんでも、私も、まもなく34歳になるが、自分を女のコとは、思っていない…


 それほど、愚かではない…


 が、


 私も、そこまで、愚かではないが、調子に乗っていた部分はある…


 それが、あの松嶋のリストラ宣告…


 まもなく34歳になるのだから、もしかしたら、リストラ宣告を受けるかも、しれない…


 そんな予感は、ここ数年、いつも、頭の隅にあった…


 が、


 実際に、リストラ宣告されたら、違った…


 物凄いショックだった!…


 ホントは、自分でも、認めたくないが、自分は、特別…


 特別な存在だと、思っていたのかも、しれない…


 自分は、美人だから、まもなく34歳になっても、別格…


 リストラされることは、ありえないと、どこかで、高をくくって、いたのかも、しれない…


 だから、自分は、絶対、リストラされない…


 そう、心のどこかで、高をくくっていたのかも、しれない…


 つまりは、調子に乗っていた…


 そして、それは、今も同じだった…


 米倉正造と、自分は、身分違い…


 お金持ちの正造と、自分は、身分違い…


 だから、どう背伸びしたって、自分が、正造と、結婚できるわけがない…


 そう思っていたが、これも、リストラ同様、どこかで、高をくくっていたと、いうか…


 きっと、心の奥底で、もしかしたら、正造と結婚できるかも、しれないと、夢見ていたのかも、しれない…


 今さらながら、気付いた…


 それが、違った…


 それが、夢物語だと、気付いた…


 だから、余計に、頭に来た…


 米倉正造に、頭に来た…


 それが、真相かも、しれない…


 そして、そのことに、気付くと、途端に、自分自身の、米倉正造に対する、怒りが、トーンダウンした…


 つまりは、自分が、勝手に米倉正造に、憧れ、勝手に、もしかしたら、自分は、正造と、結婚できるかも、しれない…


 そう、思っていたことに、気付いたからだ…


 相手の、気持ちなど、関係ない…


 自分は、平凡の家庭の出身と、いつも、言いながら、実は、もしかしたら、自分は、美人だから、正造と、結婚できるかも、しれない…


 自分でも、気付かなかったが、心の奥底では、そう、思っていた…


 その現実に、今さらながら、気付いたからだ…


 つまりは、完全に、自分の独り相撲…


 自分が、勝手に、米倉正造に憧れ、それが、夢破れたから、米倉正造を恨んでいる…


 そう、気付いたからだ…


 つまりは、悪いのは、自分…


 自分自身のうぬぼれにほかならないと、気付いたからだ…


 そして、そう、思うと、今さら、米倉正造を恨むことも、できなかった…


 悪いのは、自分…


 自分に他ならない…


 そう思うと、湯船に浸かりながら、ただただ、落ち込んだ…


 涙が溢れ出た…


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