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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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66/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 66

電話が切れた…


 私は、その電話を見つめながら、なんだか、気落ちしたというか…


 実に、呆気ないと、思った…


 つい、この間まで、


 「…どうして、私が、休職しなくちゃ、いけないんだ…」


 と、憤慨したのが、ウソのようだ…


 あの松嶋から、退職を強要され、必死になって、抵抗した…


 その結果、休職に、落ち着いた…


 が、


 内心は、その措置に不満だった…


 不満たらたらだった…


 それが、真実だった…


 それが、一転、復職とは?


 なんだか、誰かに弄ばれているような…


 しいて言えば、神様に弄ばれているような…


 そんな感覚があった…


 同時に、人間というものは、実に、不思議というか…


 自分勝手なものだな…


 と、実感した…


 私は、もうすぐ34歳になる…


 お世辞にも、若くはない…


 会社で、言えば、中堅…


 そして、この年齢で、バリバリと、活躍している女は、私の会社では、いない…


 もちろん、働いている女性は、いる…


 が、


 普通に、大学を出て、上を目指すような女は、いないというのが、正しいというか…


 なにが、言いたいかと、言えば、私の勤務する会社では、まだまだ男中心の昔ながらの会社で、女で、出世を目指す者は、皆無…


 少なくとも、私の周辺では、見たことが、なかった…


 女は、昔の会社さながらに、ある年齢に達すると、自然に辞めていったというか…


 どうにも、会社に居づらい雰囲気があった…


 だから、この私も、そろそろ、お役御免というか…


 退職する年齢だと、思っていた…


 それが、あの松嶋に、実際に、退職を強要されたら、必死になって、抵抗した…


 自分でも、自分の行動に、驚いた…


 まさか、自分が、あんなに抵抗するとは、思わなかった…


 あの松嶋に、退職を強要されたとき、


 …ついに、来るべきものが、来た…


 という思いと、


 …どうして、私が、辞めなきゃ、いけないのか?…


 という、ある種の怒りというか…


 納得のできない自分がいた…


 これは、自分でも、驚きだった…


 もうすぐ、34歳にもなる女だ…


 私の勤務する金崎実業では、その程度の年齢になると、退職するのが、慣例と言うか…


 なんとなく、そういう雰囲気があった…


 だから、松嶋に、退職を強要されても、驚かなかった…


 が、


 その退職に対して、必死になって、抵抗する自分に、驚いた…


 なぜ?


 どうして、自分は、こんなにも、抵抗するのだろう?


 自分でも、自分の行動が、謎だった…


 正直、わけのわからない行動だった…


 そして、あらためて、自分の行動を振り返ってみると、それは、私の根底に、


 …自分は、美人だから、特別…


 という優越感というか…


 選民意識があることに、気付いた…


 ハッキリ言えば、私は、美人だから、退職勧奨されるわけがないと、どこかで、高をくくっている自分が、いたわけだ…


 ちょうど、それは、会社で、言えば、自他ともに、出世コースに乗っていた男と、似ている…


 自分の勤務する会社で、いかに、リストラの嵐が、吹き荒れようと、自分は、例外だと、考える…


 自分は、安全圏にいると、高をくくっている…


 それが、人事から、呼び出しを受け、自分も、リストラ対象に、入っていると、聞かされ、気が動転する…


 それと、似ている…


 要するに、自分は、特別…


 なにがあっても、関係がないと、高をくくっているわけだ…


 自分でも、自分の感情は、冷静に、分析できたが、とりわけ、その感情も、あの寿さんに、出会ってから、一層、よくわかったというか…


 自分程度の美人で、なんと傲慢な…


 と、考えざるを得なかった…


 上には、上がある…


 当たり前のことに、気付いた…


 すると、どうだ?


 一転して、謙虚になった…


 自分でも、自分の感情に、驚きだった…


 あの寿綾乃という美人を見て、自分の立ち位置がわかったというか…


 私程度の美人が、調子に乗って、どうするんだ?


 と、気付いた…


 だから、おおげさに、言えば、恩人というか…


 おそらく、向こうは、なにも、していないのに、勝手に私が、感謝している…


 そんな意味不明な状態だった(爆笑)…


 

 数日後、あらためて、人事部の田上から、連絡があった…


 復職に関する、手続きの話だった…


 これまで、勤務していた営業所に、本社から、書類を送るから、それに、サインして、社内便で、本社に送れば、いいと、いう回答だった…


 私は、それを、聞いて、


 「…ありがとうございます…」


 と、心の底から、言った…


 なにしろ、本社は、遠すぎる…


 行くのも、億劫だった…


 それに、同じ会社とはいえ、知っている人間も、皆無…


 誰も、いない…


 そんな場所に行くのは、誰しも、嫌なはずだ…


 「…ただし…」


 と、田上は、私に言った…


 それまでとは、一転して、厳しい口調だった…


 そして、間を置いた…


 「…ただし、なんでしょうか?…」


 「…言うまでも、ないことですが、高見さんの復職に、ついて、内山社長が、手を貸したことは、内密に願います…」


 「…内密に? …ですか?…」


 「…あえて、注意をするのも、なんですが、内山社長も、男です…女子社員の復職に、力を貸したとあっては、根も葉もない噂話でも、社内に流れては、困る…」


 …そういうことか?…


 …言われてみれば、当たり前だった…


 父子ほど、歳が、違っても、男と女だ…


 周囲が、どんな目で、見るか、わからない…


 下手をすれば、内山社長の去就に関わるかも、しれない…


 火のない所に煙は立たぬではないが、本当は、私の復職に手を貸すのも、嫌だったに違いない…


 が、


 誰かに、頼まれたから、仕方なく、動いた…


 それが、事実だろう…


 その誰かは、まだ、誰だかは、わからない…


 「…わかりました…お約束します…」


 「…そうですか…わかってくれたら、それで、結構です…」


 そう言って、電話が切れた…


 まさに、青天のへきれきというか…


 突然、運命の歯車が、動き出した気がした…



 翌週の月曜日から、私は、出社した…


 私は、いささか、緊張した…


 いや、


 それまでは、たいして緊張など、していなかった…


 それまで、いつも、勤務していた営業所に、顔を出して、


 「…おはようございます…」


 と、言ったときに、営業所の面々の対応が、違ったから、緊張したというか…


 ハッキリ言えば、そこにいた営業所の面々が、


 …なんだ? …コイツ?…


 と、言った感じで、私を見た…


 下手をすれば、幽霊か、なにかを、見る感じだった…


 …コイツ、まだ、いたんだ?…


 とでも、言えば、いいのだろうか?


 要するに、いないはずの、人間がいた…


 そんな驚きの対応だった…


 あるいは、


 …コイツ、本当に、復職したんだ?…


 とでも、言えば、いいのだろうか?


 とにかく、私を見て、驚いたのが、ありありだった…


 だから、緊張した…


 それまでは、たかだか、一か月か、そこら前まで、勤務していた、営業所に帰ってきたつもりだった…


 だから、緊張など、まるで、しなかった…


 が、


 今の対応で、緊張のスイッチが入ったというか…


 明らかに、周囲の対応が、以前と違うことに、気付いた…


 私は、営業所の所長の原田の席の前に、行き、


 「…色々、ご迷惑をおかけしました…本日より、復職します…」


 と、丁寧に、腰を折って、挨拶した…


 が、


 原田は、ウンともスンとも、言わなかった…


 明らかに、私を無視した…


 明らかに、私を煙たがった…


 これは、驚きだった…


 だから、


 「…今日から、この営業所に、復職することは、本社の人事部の田上部長から、聞いているはずですが…」


 と、言った…


 嫌みだった…


 まさか、本社の人事部からの通達を聞いていないはずは、ないからだ…


 原田は、それを、聞いて、


 「…ウン…聞いている…」


 と、だけ、答えた…


 ハッキリ、言えば、面倒臭そう…


 返事も、したくない感じだった…


 私は、頭に来た…


 一体、私が、なにをしたと、いうんだ?…


 休職を撤回して、会社に復職しただけじゃないか?


 私は、これ以上、原田の前にいるのは、嫌だったので、いつもの、自分の席に、戻ろうと、思った…


 原田に、


 「…失礼します…」


 と、頭を下げて、自分の席に行こうとした…


 が、


 一月前まで、いた、自分の席の前に行って、愕然とした…


 まるで、物置というか…


 私の机の上には、色々な、資料というか、様々な荷物が置いてあった…


 「…これは?…」


 唖然として、叫んだ…


 すると、その声を聞いた原田が、


 「…ゴメン…整理するのを、忘れていた…まさか、戻って来るとは、思わなかったから…」


 と、ニヤニヤと、意地の悪い笑いを浮かべなら、言った…


 私は、唖然とした…


 私は、呆然とした…


 …どうして、私が、こんな目に遭わなきゃ、いけないのか?…


 驚きだった…


 …一体、私が、なにをしたというんだ?…


 …一か月、休職して、復職しただけじゃないか?…


 思わず、そう、叫びたかった…


 それほど、頭に来た…


 が、


 まさか、そんなことを、口にすることは、できない…


 小学生や中学生のお子様ではないのだ…


 私は、頭に来たが、それを、態度に出すことなく、自分の席に座った…


 まるで、おおげさに言えば、荷物置き場と化した、自分の席に座った…


 憤懣やるかたなかった…


 なんで、自分が、こんな目に遭わなくちゃ、ならないんだ?…


 内心、むかついた私は、それでも、気になって、周囲を見た…


 隣の席は、内山さん…


 あの内山社長の娘だった…


 私を復職してくれた、内山社長の娘だった…


 だから、


 「…お久しぶり…また、今日から、よろしくね…」


 と、挨拶した…


 が、


 内山さんからの挨拶は、なかった…


 むしろ、怯えていたというか…


 相手にしたくない感じだった…


 私と、関わりたくない感じが、ありありだった…


 隣の席の内山さんの顔が、明らかに、緊張していた…


 私は、驚いた…


 どうして、内山さんまで、そんな表情をするのか、わからなかった…


 内山さんと、いえば、私が、休職する一か月前まで、ただひとり、この営業所で、仲良くしていた同僚だった…


 それが、一体、なぜ?


 それが、一体、どうして?


 こんな態度を私に取るのか?


 疑問だった…


 正直、わけが、わからなかった…


 なんで、私が、こんな目にあわなきゃ、いけないのか?


 私の頭の中をさまざまな思いが、よぎった…


 まるで、嫌がらせ…


 まがうことなき、大人のイジメだった…


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