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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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39/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 39

しかし、


 しかし、だ…


 今さらながら、思った…


 今、この場で、米倉正造と会ったのは、偶然?


 いや、


 偶然のはずは、なかった…


 おそらくは…


 が、


 その結論を出す前に、米倉正造に、


 「…この出会いは、偶然?…」


 と、聞いた…


 わざと、聞いた…


 すると、だ…


 当然のことながら、目の前の米倉正造が、目を白黒した…


 私は、そんな正造の姿が、面白かった…


 ハッキリ言えば、爆笑寸前だった…


 そして、そんな正造の姿を見ながら、


 「…どうなんですか?…」


 と、わざと、強く言った…


 すると、正造が、小さな声で、


 「…いえ…」


 と、答えた…


 「…必然です…」


 「…必然って?…」


 「…あの娘を、追っかけているところに、偶然、高見さんが…」


 言いづらそうに、正造が、答えた…


 思った通りだった…


 きっと、どこかで、この正造が、偶然、あの娘を見かけたか?


 それとも…


 それとも、興信所かなにかに、頼んで、事前に、彼女の動向を掴んだ上で、彼女を追っていたか?


 そのどちらかだろうと、思った…


 だから、あえて、それ以上は、聞かなかった…


 あえて、それ以上、聞いても、正造が、ホントのことを、言うか、どうかは、わからないからだ…


 それよりも、気になることがあった…


 あの半年前に、この正造と、あの娘が、腕を組んで歩いていた…


 あのときは、すでに、好子さんと、透(とおる)の結婚が、決まった後だった…


 そして、その結婚を契機に、米倉と水野の提携が、決まった直後だった…


 いわば、好子さんと透(とおる)の結婚は、政略結婚…


 米倉と水野が、提携する儀式というか…


 米倉と水野が、提携するために、欠かせないものだった…


 米倉も、水野も、近年、珍しい昔ながらの財閥色が、残っている稀有の例…


 互いに、一族が、会社に君臨している…


 昔ながらの同族会社…


 だから、そのトップ同士が、縁戚になるのが、一番の近道というか…


 会社が、合併や提携するのに、実に都合がいい…


 トップ同士が、親戚になる…


 これが、一番…


 一番、わかりやすい(笑)…


 が、


 もしかしたら、それを、よく思わないものも、いたのかも、しれない…


 ふと、気付いた…


 なぜなら、あの娘が、この米倉正造に近付いたのは、ちょうど、米倉と水野の提携が決まった直後…


 そのタイミングで、あの娘が、この正造に、近付いたのは、実に意味深いというか…


 意味深というか(苦笑)…


 やはりというか、彼女の背後関係が、気になるところだ…


 なにより、あの娘が、澄子さんの娘ということが、気になる…


 すでに、何度も言うように、澄子さんは、好子さんを嫌っていた…


 好子さんをイジメていた…


 その好子さんが、いくら、米倉を救うためとはいえ、透(とおる)と、結婚する…


 水野財閥総帥の一人息子と結婚する…


 すると、どうだ?


 当然、澄子さんが、面白いはずがない…


 なぜなら、好子さんは、透(とおる)と、結婚することで、文字通り、米倉の絶対君主となる…


 米倉の救世主となる…


 破綻寸前にまで、追い詰められた米倉が、水野と、提携することで、蘇る…


 だから、米倉の救世主となる…


 が、


 当たり前だが、それが、あの澄子さんが、面白いはずもない…


 好子さんが、米倉の救世主となれば、もはや、澄子さんは、好子さんに手が出せない…


 これまでのように、好子さんをイジメることが、できない…


 それが、嫌なのではないか?


 そう思った…


 自分が、好子さんをイジメることが、できなくなるから、嫌だと、いうのは、あまりにも、理不尽というか…


 自分勝手と言うか…


 周囲の者から、すれば、失笑ものというより、正直、わけがわからない(笑)…


 が、


 本人の思いは、その通りだろう…


 もっと、ハッキリ言えば、あの澄子さんは、好子さんの下になるのが、嫌…


 死んでも、嫌に、違いない…


 だから、


 娘を呼んだ…


 ふと、気付いた…


 娘を使って、好子さんから、透(とおる)を奪い取る…


 そうすれば、結果は、同じ…


 好子さんに代わって、米倉を代表して、水野と、提携する象徴になる…


 そういうことだろう…


 私は、あらためて、思った…


 私は、あらためて、気付いた…


 が、


 ということは、すでにあの時点で、あの澄子さんは、動いていた…


 そういうことだろうか?


 あの半年前に、この米倉正造に、近付いていた…


 いや、


 それは、おかしい…


 あの秋穂という娘が、この正造に近付いていたというのは、おかしい…


 この正造が、あの娘に近付いたというのが、真相ではないのか?


 この正造が、どうやって、あの秋穂という娘の素性に、気付いたのか、わからないが、あの娘に近付いたのが、真相ではないのか?


 あらためて、気付いた…


 そして、そう考えれば、辻褄が合う…


 この正造は、なにより、あの好子さんの幸せを願っていた…


 態度には、表さないが、きっと、この正造は、好子さんが、透(とおる)と、結婚したことを、誰よりも、祝福したはずだ…


 と、なると、どうだ?


 この正造の方が、どこかで、あの娘の素性に気付いて、自分から、あの娘に近付いたのが、本当のところではないのか?


 ふと、気付いた…


 あの秋穂という娘に、この正造が、散々貢がされたというのは、ウソではない…


 事実の可能性が高い…


 が、


 それも、これも、あの秋穂という娘に近付くためでは、なかったのか?


 そして、もしかしたら、彼女の背後関係を、探っていた可能性もある…


 もしかしたら、彼女の背後には、あの澄子さんだけではない、別の誰かが、いる可能性もあるからだ…


 私は、思った…


 そして、そう思うと、今さらというか…


 この米倉正造という男は、今さらながら、あの好子さんを好きなんだなと、思った…


 あの好子さんを愛しているんだなと、今さらながら、気付いた…


 そう考えると、一途というか…


 すでに、結婚している好子さんを、そうまでして、守ろうとする、この米倉正造に、好感を、持てたというか…


 なんだか、微笑ましくなった…


 女好きの一方で、必死になって、自分の妹は、守ろうとする…


 矛盾するが、それが、この米倉正造という男なんだろうと、思った…


 だから、なんだか、楽しくなったというか…


 自然と頬が緩んだ…


 すると、


 「…なんだか、高見さん…楽しそうですね…」


 と、不思議そうに、正造が、聞いた…


 「…ボクが、なにか、しましたか?…」


 「…いえ…」


 とっさに、言った…


 「…そうですか?…」


 正造が落胆する…


 「…ボクは、てっきり…」


 と、そこで、話を止めた…


 だから、


 「…てっきり、なんですか?…」


 と、聞いた…


 「…ボクを好きになってくれたのかな? と…」


 「…正造さんを、好きに?…」


 目が点になった…


 たしかに、この米倉正造は、嫌いではない…


 半年前は、好きだった…


 この米倉正造に生まれて初めて、恋をしたと、思った…


 が、


 以前も言ったように、今回、半年振りに再会したにも、かかわらず、以前のような高揚感は、ない…


 だから、錯覚だと、思った…


 例えて、言えば、風邪を引いたようなものだと、思った…


 その風邪が、治った…


 だから、この米倉正造に抱いた恋心は、消えたと、思った…


 そういうことだ…


 同時に、それとは、別に、この米倉正造の妹の好子さんを、思う気持ちに、微笑ましくなったのも、また事実だった…


 以前は、父親の平造から…


 いや、


 好子さんを、狙う数多くの男たちから、好子さんを守ろうとしていた…


 そして、それは、今も続いている…


 それを、考えれば、この米倉正造という男を、あらためて、好きになったと、言いたいところだが、どうだろうか?


 そこまでは、好きになれない(笑)…


 恋は、盲目というが、たしかに、あのときは、盲目だった…


 ちょうど、明るい場所から、いきなり、暗い場所に、移ったようなもの…


 途端に、目が見えなくなった…


 それと、同じだ(笑)…


 時間が経てば、やがて、暗闇に目が慣れて来る…


 すると、どうだ?


 うっすらと、暗闇の中でも、それなりに、周囲が、見えるようになる…


 それと同じだ…


 だから、あのときは、見えなかった欠点が、見えてくる…


 だから、恋も冷める…


 そういうことだ(笑)…


 だから、今さらというか…


 そして、真剣に、そんなことを、考えながら、目の前の正造を、見ると、ニヤリと笑っていることに、気付いた…


 それを、見て、正造が、冗談を、言っていることに、気付いた…


 だから、私は、頭に来た…


 まさか、こんな場面で、正造が、冗談を言うとは、思わなかったからだ…


 なにより、そんな冗談に、惑わされた自分が、恥ずかしかった…


 だから、


 「…正造さん…」


 と、強く言った…


 「…ハイ…」


 「…冗談も言っていいときと、悪いときが、あります…」


 「…」


 「…場をわきまえて下さい…」


 私が、強く言うと、正造は、


 「…」


 と、黙った…


 「…」


 と、なにも、言わなかった…


 が、


 代わりにというか、


 「…以前、松嶋の話を高見さんに、しましたね…」


 と、突然、真剣な表情で、語り出した…


 「…松嶋?…」


 誰だろう?


 いきなり、この米倉正造が、言ったが、正直、誰のことか、わからなかった…


 …松嶋なんて、いただろうか?…


 そう思った…


 だから、


 「…松嶋って…」


 と、呟いた…


 すると、目の前の正造が、呆気に取られた…


 「…高見さん、お忘れですか?…」


 「…エッ?…」


 「…金崎実業の人事の松嶋ですよ…」


 「…エッ!…」


 呆気に取られた…


 すっかり、忘れていた!…


 あの松嶋…


 私を、金崎実業から、なにがなんでも、追い出したがっていた!…


 あの松嶋だ!…


 私が、現在、休職中になった張本人…


 その張本人だ…


 あのときは、頭に血が上って、松嶋が、憎くて、仕方がなかった…


 私、高見ちづるも、もうすぐ34歳になる…


 だから、リストラされても、仕方がないと、思った…


 が、


 それにしても、やり方がある…


 やれ、


「…結婚しろ…」…


 だの…


 「…結婚しないのは、理想が高すぎる…」


 のだの…


 散々、言われた…


 34年近く生きてきて、面と向かって、男のひとに、あれほど、言われたことは、これまで、一度もない…


 自分で、言うのも、なんだが、私は、美人に生まれた…


 だからだろうが、面と向かって、男から、罵られた経験はない…


 33年、生きてきて、一度もなかった…


 だから、頭に来た…


 余計に、頭に来た…


 考えてみれば、忘れられない人物だった…


 が、


 どうして、いきなり、この場で、松嶋の名前が出たのか?


 謎だった…


 「…あの松嶋…秋穂の顧客の一人ですよ…」


 正造が、ポツリと、呟いた…


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