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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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37/106

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 37

私は、思う…


 私は、考える…


 心のありかを、考える…


 恋愛のありかを、考える…


 あのとき、私は、たしかに、恋をしていた…


 米倉正造に恋をしていた…


 が、


 今は、その感情はない…


 だとすれば、やはりというか…


 アレは、一刻の感情…


 気の迷いに過ぎないのだろうか?


 私は、思った…


 あの澄子さんの娘と名乗った彼女と、別れた後に、一人で、銀座をブラブラ歩きながら、考えた…


 もはや、なんのために、銀座に来たのか、よくわからなかった(苦笑)…


 会社を休職中の私が、暇つぶしで、たまに、銀座にやって来たにも、かかわらず、頭の中は、あの澄子さんの娘のことで、いっぱいになった…


 いわゆる、気分転換のために、この銀座にやって来たにも、かかわらず、これでは、まるで、気分転換になっていなかった(苦笑)…


 なにより、たった今、別れた彼女のことで、頭が、いっぱいになったのだ…


 これでは、暇つぶしどころではない…


 私は、思った…


 が、


 思いながらも、どこか、嬉しかった…


 なぜなら、退屈でなくなったからだ…


 一昔、二昔前に、会社で、窓際に追いやられたオジサンが、


 「…会社で、どうやって、一日を過ごせば、いいか? 考えるだけで、退屈で、死にそうだ…」


 と、嘆いた話を、テレビか、雑誌で、見たことがある…


 たしかに、そうだろう…


 一日中、なにもしないで、いることは、結構、苦痛だ…


 今の時代なら、会社のパソコンで、ネットサーフィンをしているか?


 あるいは、パソコンで、オンラインゲームをしているか?


 の、どちらかだろう…


 そして、もっと昔なら、新聞を読んだりして、一日中、時間を潰すしかない…


 そういうことだろう…


 いずれにしろ、暇というのは、困る…


 思いのほか、厄介だ…


 私も、これまで、金崎実業に、十年以上、勤めていた…


 だから、それが、今回、休職で、ハッキリとわかったというか…


 いきなり、暇を与えられても、どうしていいか、わからない…


 どう時間を、潰していいか、わからない…


 それが、本音だった…


 そして、それを、思えば、ふと、昔、母が、言った言葉を思い出した…


 母もまた、三十年以上前は、会社に勤めていた…


 そして、当時、会社の同僚の愚痴を聞いていて、驚いたのが、今の私といっしょだった…


 要するに、会社に出社しても、仕事がないのだ…


 いわゆる、嫌がらせでも、なんでもなく、会社に出社しても、大した仕事がない…


 例えば、二時間もあれば、終わる仕事…


 会社は、基本、八時間が、通常…


 となると、残りの六時間を、どう過ごせば、いいか、わからなくなる…


 そして、それが、苦痛だったと、その同僚が、言っていたと…


 思い切って、会社を辞めようかとも、思ったが、思いがけず、他部署に移動になり、普通に、忙しくなったと、言っていた…


 そして、これは、今の時代でも、結構あることだと思う…


 大きな会社なら、普通に、あり得る話だろう…


 ある部署では、忙しく、隣の部署では、暇…


 普通に考えれば、だったら、隣の部署に、ひとを派遣すれば、いいのでは?


 と、考えるが、それが、できない…


 部署の壁があり、なにより、している仕事が、異なる…


 だから、仕事をするにしても、一から教えなければ、ならない…


 だから、できない…


 私は、思った…


 だから、極端なことを、言えば、暇は罪というか…


 罪悪に他ならない…


 そして、そんなことを、漠然と考えながら、銀座を歩いていると、いきなり、誰かに、ポンと肩を叩かれた…


 私は、驚いた…


 まさか、この銀座で、誰かに、肩を叩かれるとは、思っても、みなかったからだ…


 私は、一瞬、さっきの澄子さんの娘が、再び、私の背後に現れたのだと、思った…


 この銀座で、知り合いに会う可能性など、皆無だからだ…


 だから、


 「…まだ、なにか、私に用事?…」


 と、つい、怒りながら、背後を振り返った…


 が、


 そこにいたのは、さっきの娘では、なかった…


 そこにいたのは、あの正造…


 米倉正造だった…


 私が、初めて、恋をしたと思っていた米倉正造だった…


 私は、驚いた…


 同時に、たった今、怒鳴ったことが、恥ずかしくなった…


 まさか、そこにいたのが、米倉正造だとは、思わなかったからだ…


 私は、カッコ悪く、どう、正造に、言い訳して、いいか、わからなかった…


 が、


 正造は、笑っていた…


 意味深に笑っていた…


 「…もしかして、誰かと、間違いました?…」


 正造は、意味深に笑いながら、聞いた…


 が、


 私は、答えることが、できなかった…


 どう、答えていいか、わからなかった…


 だから、


 「…」


 と、黙った…


 すると、


 「…もしかして、澄子の娘と名乗る女と、勘違いした?…」


 と、正造が、いたずらっぽく笑った…


 その瞬間、


 …知っている!…


 …見抜いている!…


 と、思った…


 この眼前の米倉正造は、すべてを、見抜いていると、思った…


 そして、当然のことながら、私が、驚いた表情をしていたのだろう…


 「…高見さんが、そんなに、驚いた顔をするのは、見たのは、初めてです…」


 と、正造が、言った…


 それから、


 「…でも、高見さんのような美人は、驚いた顔も素敵です…」


 と、歯が浮くようなお世辞を言う…


 私は、思わず、


 「…そんなお世辞…真に受けませんよ…」


 と、言ってやりたかったが、言えなかった…


 この米倉正造という男は、ちょうど、若き日の三浦友和に似ている…


 イケメンだが、爽やか…


 だから、このセリフが、あった…


 違和感なく、あった…


 そして、ドラマやお芝居ではなく、こんなキザなセリフが、臆面もなく、言えるのが、この米倉正造という男だった…


 要するに、雰囲気のある、イケメンというか…


 優しげで、それでいて、どこか、陰のあるイケメンだった…


 そして、そんな正造に、惹かれたというか…


 自分でも、いけないと、思っても、つい惹かれてしまう…


 磁石ではないが、強烈な磁力があった…


 磁力=魅力があった…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…どうしました?…」


 と、眼前の正造が、聞いた…


 「…いえ、なにも…」


 反射的に、言った…


 「…もしかして、ボクに恋をした?…」


 「…エッ?…」


 驚いた…


 まさか、米倉正造が、こんなセリフを言うとは、思わなかった…


 だから、マジマジと、正造を見た…


 すると、正造が、いたずらっぽく、笑っていた…


 だから、当たり前だが、正造が、冗談を言っていることに、気付いた…


 と、同時に、そんな正造の冗談に、気付かない自分に、驚いた…


 きっと、たった今、別れた、あの澄子さんの娘と名乗る女のコの出現に、思いのほか、動揺しているに、違いなかった…


 そう、自分自身を分析した…


 きっと、自分が、思っている以上に、動揺しているに、違いなかった…


 それが、わかった…


 そして、そんな自分自身の感情が、わかったからこそ、


 「…そうですね…やはり、私には、正造さんが、必要というか…」


 と、告げた…


 「…必要?…」


 今度は、目の前の正造が、当惑した…


 「…だって、正造さんは、お金持ちですから…」


 と、言って、笑った…


 すると、


 「…たしかに…」


 と、正造も、笑った…


 「…ボクの取り柄といえば、それくらいです…」


 と、続けた…


 ホントは、正造の取り柄は、その爽やかな印象のイケメンにあるのだが、あえて、言わなかった…


 また、私も当然、それは、わかっているが、あえて、その点に触れなかった…


 今さらというやつだからだ…


 「…きっと、この場所で、正造さんに、会ったのは、運命ですよ…」


 「…運命? …どういう運命ですか?…」


 「…この銀座で、私に貢ぐ…」


 私が、冗談っぽく言うと、正造は、


 「…これは、大変な場所で会ったな…」


 と、言って、笑った…


 そして、そのやりとりで、互いが、平常運転というか…


 互いが、いつもの通りだと、思った…


 ハッキリ言えば、あの澄子の娘の登場に、動揺していないことが、わかった…


 「…だったら、これから、大判振る舞いです…」


 と、正造が、言った…


 「…大判振る舞い? …ティファニーで、婚約指輪でも、買ってくれるんですか?…」


 「…ハイ…高見さんが、それをお望みなら…」


 正造が、真顔で、答える…


 私は、ちょっぴり、ドキドキした…


 互いに、冗談を、言い合っているのは、わかっていたが、正造が、真顔で、そんなふうに、言うと、ビックリするというか…


 つい、本当なのか?


 と、期待してしまう…


 我ながら、バカげているというか…


 冗談も、本気も、わからなくなる、自分が、そこにいた(笑)…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…さあ、参りましょう…」


 と、正造が、言って、私の手を取って、歩き出した…


 私は、ドキドキした…


 正造が、冗談を、言っているのは、わかっていたが、


 …もしや?…


 と、いう期待もあった…


 …もしかして?…


 と、いう淡い期待もあった…


 そして、その期待が、現実化したというか…


 正造に手を握られながら、ティファニーの前に立った…


 私は、おおげさに、いえば、天にも昇らん気持ちだった…


 まさに、


…まさか?…


だった…


「…では…」


正造が、言った…


私は、ビビった…


「…正造さん、ホントに、入るんですか?…」


「…ええ…高見さんさえ、よければ?…」


正造が、真顔で言う…


私は、つい、


「…今度にしませんか?…」


 と、言ってしまった…


 「…どうしました? …今日では、都合が悪い?…」


 「…ハイ…」


 私は、答えた…


 それを、見て、正造が、


 「…でしたら、日を変えて…」


 と、言った…


 私は、その顔を見た…


 いかにも、楽しげだった…


 ゲームに、勝った顔だった…


 私とした、たわいもない、ゲームに勝って、満足した表情だった…


 これは、チキンゲーム…


 バイクでいえば、私と正造が、二人で、壁に向かって、アクセルをフルスロットルで、全力疾走…


 どっちが、先に、ブレーキを踏むか?


 競争している…


 そんな感じだった…


 そして、私の方が、正造よりも、先にビビッて、ブレーキを踏んだ…


 それが、現実だった…


 悔しいが、現実だった…


 私の負け…


 それが、現実だった…


 米倉正造とティファニーの店に入り、いっしょに、指輪を選ぶ…


 が、


 その先は、ない…


 婚約指輪を買うはずもないからだ…


 だから、さすがに、そこまではできないと、思って、


 「…今度にしませんか?…」


 と、言ってしまった…


 いや、


 言わされてしまったというか…


 悔しいが、まんまと、正造の策謀に載ってしまったというか…


 それを、思えば、さっきのあの、澄子さんも娘との勝負で、負け…そして、今また、この米倉正造との勝負で、負けた…


 二連敗…


 私の人生で、あり得なかった連敗だった(苦笑)…


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