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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部  作者: トモサン


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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第2部 14

そして、そんな思いが、表情に出たのだろう…


 「…高見さん、どうしました?…」


 水野良平が、心配そうに、聞いた…


 「…やはり、妻の春子に会うのは、気が進みませんか?…」


 「…いえ…」


 私は、遠慮がちに言った…


 「…では、一体?…」


 「…以前の透(とおる)さんの行動を考えていたんです…」


 「…透(とおる)の行動?…」


 「…ハイ…」


 「…それは、一体?…」


 「…米倉の赤字が、世間に知られ、大騒ぎになった後、私が、米倉の家に伺いました…」


 「…」


 「…そのときに、透(とおる)さんが、私か、好子さんのどちらかが、ボクと結婚すれば、水野は、米倉に融資をする…米倉を救済する…と、断言しました…」


 「…」


 「…あのとき、私は、自分の結婚は、自分で、決めます…と、言い、対照的に、好子さんは、透(とおる)さんと、結婚する…だから、米倉を救ってと、言いました…」


 「…」


 「…ですが、アレは、お芝居というと、言い過ぎですが、事前に、決まっていたんじゃないか? と、今になっては、思います…」


 「…どういうことですか?…」


 「…まず、あの宣言をするにあたって、事前に、会長の了承を得ていたということです…」


 「…」


 「…そして、好子さん…」


 「…好子さんが、どうかしましたか?…」


 「…あのとき、透(とおる)さんの真意と言うか…私でも、好子さんでも、どちらかが、ボクと結婚すれば、水野は、米倉に融資すると、言いました…本来、米倉となんの関係もない私と結婚しても、水野は、米倉を救済すると、言いました…つまり、透(とおる)さんの真意は、なにがあっても、米倉を救済する…好子さんを、守るということでは、なかったのでは、ないでしょうか? …そして、それに、気付いた好子さんが、透(とおる)さんとの結婚を了承した…それが、真相だったのでは、ないでしょうか?…」


 私が、言うと、水野良平は、考え込んだ…


 考え込んで、


 「…」


 と、黙り込んだ…


 私は、ジッと待った…


 水野良平を見守った…


 それから、ゆっくりと、


 「…よく、気付きましたね…」


 と、良平が、口を開いた…


 「…いえ、私も気付いたのは、今です…」


 「…今?…」


 「…そうです…会長のお話を聞き、今、気付きました…要するに、私は、当て馬というか…本当は、透(とおる)さんは、ただ好子さんを守りたい…だけど、それをストレートに言っても、好子さんには、届かない…だから、私を結婚しても、米倉を救う…つまり、選択肢を広げたわけです…」


 「…」


 「…そして、好子さんは、そんな透(とおる)さんの意図に、気付いた…だから、結婚を受け入れた…」


 私が、言った…


 それを、聞くと、隣の水野良平は、


 「…」


 と、黙り込んだ…


 

 それから、しばらく、してから、


「…たしかに、透(とおる)は、なんとしても、米倉を救いたかった…」


 と、振り絞るように、言った…


 「…」


 「…そして、その根底には、透(とおる)の好子さんに対する思いがある…だから、私も受け入れたというか…」


 水野良平の歯切れが、悪くなった…


 「…ですが…」


 と、言ってから、言い淀んだ…


 言葉が、出て来なかった…


 私は、


 「…ですが…なんでしょうか?…」


 と、言おうとしたが、言えなかった…


 水野良平の顔を見ると、苦悶していたというか…


 なんと表現していいいか、わからないが、実に、苦しそうな表情をしていたからだ…


 だから、止めた…


 あえて、なにも、言わなかった…


 いや、


 言えなかった…


 すると、


 「…ひとは、変わります…」


 と、短く、呟いた…


 「…変わる?…」


 「…そうです…良い方にも、悪い方にも…」


 「…」


 「…そして、そんな変化は、事前には、誰も予想できないということです…」


 水野良平が、ため息をついて、言った…


 それを、見て、私は、驚いたというか…


 あらためて、この水野良平が、いかに、悩んでいるか、わかった…


 そして、それっきり、後は、なにも、言わなかった…


 互いに、黙ったままだった…


 そして、互いに、無言のまま、私と水野良平を乗せた黒いベンツは、走った…


 そして、いつしか、目的地である、水野良平の屋敷に、入った…



 そこは、昔ながらの日本庭園だった…


 まるで、江戸時代にタイムスリップしたかのようだった…


 よく、中学生や高校生が、修学旅行で、訪れる京都の古いお寺ではないが、そんな感じだった…


 昔ながらの日本庭園があり、そばには、やはり、昔ながらの日本式家屋があった…


 家屋は、一階建て…


 二階はない…


 そして、それゆえ、余計に、豪華に見えた…


 本来、ありあまるぐらい広い土地があれば、家屋を二階建てにする必要は、ないからだ…


 土地が狭いから、家屋を二階建てにして、居住空間を、広くする…


 本来は、そんな目的で、家屋を二階建てにするからだ…


 が、


 この水野のお屋敷は、広く、そんな必要は、まるでなかった…


 だから、建物が、一階建てなのだ…


 建物が、平屋なのだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 だから、私と水野良平が乗るベンツが、このお屋敷について、ベンツから降りたとき、


 「…凄いお屋敷ですね…」


 と、つい、言ってしまった…


 言わずには、いられなかった…


 文字通り、驚嘆した…


 あの米倉のお屋敷も、凄かったが、この、水野のお屋敷と比べると、やはりというか…


 正直、格が、違うというか…


 ハッキリ言って、レベルが、違う…


 米倉は、格下…


 水野の足元にも及ばない…


 それが、わかった…


 そして、それは、企業グループの差というか…


 米倉と水野の企業の大きさの差とリンクして、見えた…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…たしかに、凄いお屋敷です…」


 と、まるで、他人事のように、水野良平が、言った…


 私は、驚いた…


 自分の家なのに、まるで、他人の家のように、言う…


 だから、


 「…会長…ご自分の家なのに…そんな…」


 と、言った…


 すると、


 「…たしかに、今は…」


 と、水野良平が、言った…


 「…今は…」


 「…この家は、妻の春子の実家…代々、水野本家の持つお屋敷です…」


 と、水野良平が、言った…


 そして、その言い方は、他人というか…


 この水野良平が、水野一族の末端の人間であることを、あらためて、教えてくれた…


 なぜなら、この水野良平の発言は、この水野本家に対する敬意に溢れていた…


 水野本家に対する尊敬に溢れていた…


 私は、そう、見た…


 私は、そう、睨んだ…


 「…たしかに、凄いお屋敷です…」


 しみじみと、水野良平が、言った…


 「…私も、若い時分には、このお屋敷に住み、お嬢様と結婚することなど、想像もできなかった…」


 「…」


 「…すべては、天のいたずらというと、言い過ぎかも、しれませんが…ときに、神様は、とんでないことを、するものです…」


 そう言って、水野良平は、苦笑した…


 そして、その笑いは、自嘲と言うか…


 決して、このお屋敷に住む自分を自慢しているわけでは、なかった…


 むしろ、末端の分家の出身の自分が、このお屋敷に住むようになった、運命の皮肉というか…


 その運命の皮肉を、からかっているというか…


 そんな感じだった…


 なにより、この水野良平は、他人事というか…


 自分が、今、このお屋敷の主であるにも、かかわらず、他人事のようだった…


 そして、そんな水野良平を不思議に感じた私だったが、それも、その妻、春子に会って、その謎が解けた気がした…


 なぜなら、春子は、お嬢様…


 生粋のお嬢様だった…


 六十歳は、優に超えているにも、かかわらず、どこか、少女っぽさの残る女性だった…


 言葉は悪いが、オバサン少女とでも、言えば、いいのだろうか?


 少女が、そのまま、歳を取った…


 そんな感じがした…


 芸能人でいえば、吉永小百合に近いと言えば、いいのだろうか?


 さすがに、あれほどの美貌の持ち主ではないが、同じ雰囲気の持ち主というか…


 どこか、神秘めいているといえば、言い過ぎだが、まさに、深窓のご令嬢が、歳を重ねれば、こうなるであろうという見本だった…


 そして、この歳を取ったお嬢様の春子を見れば、この水野良平が、何度も、妻の名を呼ぶことなく、


 「…お嬢様…お嬢様…」


 と、連呼する理由が、わかった気がする…


 結婚しても、良平の中で、ずっと、本家のお嬢様なのだろう…


 事実、その雰囲気をまとっていた…


 「…ずっと、お会いしたかった…」


 開口一番、私の姿を見るなり、彼女は、言った…


 「…高見ちづるさんね…私が、水野春子です…」


 そう言って、私に呼びかけた…


 私は、なんと言っていいか、わからなかった…


 正直、これまで、こんなご婦人に会ったことが、なかった…


 米倉の家に招かれたときは、驚いたが、この水野のお屋敷に訪れたときと、比べれば、驚きが、少なかったというか…


 衝撃が、少なかった…


 なにより、目の前のご婦人…


 水野春子の存在が、大きかった…


 まるで、この場にいるのが、場違いというか…


 なんだか、現実離れしているというか…


 浮世離れしているというか…


 つまりは、現実離れしている、お嬢様の雰囲気なのだ…


 皇室の方々を直接拝見しても、おそらく、これほど、浮世離れしている感じは、しないかもしれない…


 なんだか、この令和の時代ではなく、明治時代か、なにかの、お金持ちのご婦人が、目の前に現れた感じだった…


 私は、そんなことを、考えながら、


 「…高見ちづるです…本日は、お招き頂き、ありがとうございます…」


 と、急いで、言った…


 我ながら、舌を噛むかと思うほど、緊張した…


 そして、そんな私を見て、一言、


 「…おきれいね…」


 と、春子が言った…


 「…ありがとうございます…」


 と、これも、機械的に、言った…


 「…好子さんに、そっくり…」


 と、春子が、続けた…


 私は、この言葉に、文字通り、どう言っていいか、わからなかった…


 どう、返答していいか、わからなかった…


 だから、とっさに、水野良平を見た…


 助け舟を求めたと言うか…


 水野良平にアドバイスを求める気はないが、つい、見た…


 すると、水野良平もまた、戸惑っているというか、困惑しているのが、わかった…


 だから、


 「…」


 と、黙った…


 なんと、返答していいか、わからなかったからだ…


 「…でも、似ているのは、他人の空似なんか、じゃない…高見さんと、好子さんは、ひいおじい様か、なにかが、ご兄弟ですってね…」


 春子が、突然、言った…


 私は、固まった…


 文字通り、カラダが、固まった…


 …知っていた…


 …そんなことまで、知っていた…


 驚きだった…


 それから、


 「…透(とおる)さんが、結婚するのは、好子さんでなく、高見さんでも、良かった…そうでなくて?…」


 と、私に語り掛けた…


 私は、仰天した…

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