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星の瞳を持つ少女

―――――――――アリア目線―――――――――


あの力は、間違いない。

彼女は闘技場の最上段から、仮面の青年が消えた屋根を見つめていた。

誰にも理解できなかっただろう。

だが彼女には分かる。

あれは剣ではない。

魔法でもない。


“王の権能”。


結果そのものを断ち切る力。この世界にあってはならない力。

三年前、黒い城が落ちたあの日。

彼女は見た。

空を覆う星の王が、同じ光で世界を削るのを。


「……追って」


短く命じる。背後の神殿騎士が即座に動いた。

星喰らいの残滓は処刑対象。

即刻、断罪。

だが王の器ならば捕獲。

判断を誤れば、世界が傾くことになる。

だが――

胸の奥で、何かが引っかかる。


……違う。


S級試験のあの力。

あの青年は、器にしては強すぎる。


あれは“可能性”ではない。

“完成”に近い。


「まさか……()()()()()()()?」


―――――――――ルーク目線――――――――


その頃。

王都の屋根を渡りながら、ルークはため息をついた。


「派手にやりすぎたか」


『毎回そう言うな』


右手の剣が呆れた声を出す。


『あの娘は気づいた』


「つまり半分こっち側、ってやつか?」


『ああ。器候補だ』


ルークの足が一瞬止まる。


「……冗談だろ」


『残念ながら本気だ』


器候補――

それは王になり得る“可能性”を宿した存在。

王性因子はある。だが未完成だ。

力は不安定で、未来はまだ分岐している。

王を受け止めるには、形が足りない。


対して、王の器。


それは完成した受け皿。王を迎えるために構造が整った存在。

王性因子は安定し、力は収束している。

未来は一本に絞られ始めている。


候補は「なれるかもしれない者」。

器は「なれる準備が整った者」。


似ているようで、決定的に違う。

しかし、世界は常に“代替”を用意する。だからもし一人王の器が死んでもかえが効くように器候補は存在する。


それが仕組み。


「つまり俺が失敗したら、あの子が王の器にになる可能性があるのか?」


『その通り』


ルークは舌打ちした。


「最悪だな」


その瞬間。

空気が震えた。

四方の屋根に、白い鎧の騎士たちが着地する。

神殿騎士団。

速い。統率も完璧。


「仮面の男。動くな」


包囲。

逃げ道は三方向。

だが上空には結界の光。


「本気で来てるな」


『王の匂いを感じ取ったのだろう』


騎士の一人が槍を向ける。


「星喰らいの残滓よ。抵抗すれば斬る」


ルークは肩をすくめた。


「物騒だな」


槍が突き出される。

同時に三方向から魔法陣。

殺す気満々だ。


『使うな』


剣が低く言う。


『ここで因果を斬れば、完全に目をつけられる』


「じゃあどうする」


『殴れ』


「は?」


次の瞬間、ルークは地面を蹴った。

速い。

騎士の視界から消える。

一人騎士のの腹に拳を叩き込み、鎧ごと吹き飛ばす。

魔法陣の発動前に足場を崩す。

槍を掴み、逆に叩き落とす。

力は使っていない。

ただ、異様に洗練された体術。


十秒。


騎士は全員、屋根に倒れていた。

息はある。

殺してはいない。


「……俺、優しくない?」


『甘いだけだ』


ルークが背を向けた瞬間。

背後の空気が凍った。

少女が立っている。

白銀の鎧。

星色の瞳。

距離は十歩。彼女は静かに言う。


「お前」


ルークの心拍がわずかに上がる。


「なんのようだ」


「質問は2つあります。一つ目はあなたは王の器なのか、二つ目はその力はどこで手に入れたのかです。答えていただけますか?」


直球。

ごまかせない問い。

沈黙が落ちる。


『本当のことを言うな』


剣が囁く。

ルークは肩をすくめ、アリアの問いに答える。


「王の器?知らないな」


アリアの瞳が、淡く光る。


「嘘です」


その瞬間。

彼女の背後に、巨大な星の紋章が浮かび上がる。

空気が軋む。

王の気配。

未完成だが、確かに“同質”。


『まずい』


剣の声が低くなる。

例外。


『あの娘、目覚め始めている』


アリアが一歩踏み出す。


「あなたは、災厄ですか?」


ルークは答えない。

答えれば、終わる。

沈黙のまま、仮面の奥で目を細める。


「だったら?」


アリアの瞳が揺れた。

その一瞬。ルークは動く。

屋根を蹴り、夜へ跳ぶ。

星の光が追う。

だが届かない。

いつの間にかアリアの目は元に戻っていた。


「逃げられましたか⋯」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(……気づかれた)


アリアの視線が脳裏をよぎる。

あの一瞬。

確信には至らない。

だが、疑いは持った目。


(器候補、か)


剣の言葉がよみがえる。

世界は常に“代替”を用意する。

仕組み。


「最悪だな……」


小さく呟く。


もし自分が失敗すれば、

王の器になる可能性が高いのはあの少女だ。

その事実が、妙に胸に引っかかる。

守りたいわけじゃない。

情があるわけでもない。


ただ――


“選ばされる”のが気に食わない。


右手が脈打つ。

鼓動とは違う、もう一つの拍動。


――還れ。


言葉ではない衝動。

懐かしさにも似た圧力。


「……うるせぇ」


仮面を押さえる。


(俺は王にはならない…)


否定するたび、

声は近づく。

王都は静かだ。

だがルークの内側では、

確実に何かが目覚めつつあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして屋根の上。

アリアは一人、夜空を見上げる。


「……やっと見つけました」


星がまた一つ、瞬いた。


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